イヤホンをしまって、渋谷を歩こう(脚本)
〇占いの館
渋谷にある
占いの館
マリエ「ようこそ」
ユウタ「僕の運勢とかを知りたいわけではないんです」
マリエ「かなり混乱してる様子ね。 何でも話してみなさい」
マリエ「時系列など、どうでもいいから」
ユウタ「僕は20代大学生です」
ユウタ「若者らしく人生を謳歌できないのです。 彼女もこれまでいたことありません」
マリエ「恋人がいる人が幸せとは限らないけど」
ユウタ「昔、渋谷で行われた、あるミュージシャンのコンサートに行ったことがあります」
マリエ「唐突ね」
〇コンサート会場
ユウタ「曲の合間のトークで、そのミュージシャンが僕にこう言いました」
ユウタ「「渋谷は怖い街だからね。足立区?気を付けて帰ってね」って」
ユウタ「渋谷は僕が来る所ではないのかな」
〇占いの館
マリエ「そのミュージシャンが、あなたに語りかけたって証明できるの?」
ユウタ「あれは絶対俺に言ったんだ!!」
マリエ「じゃあ良かったじゃない」
ユウタ「それは嬉しかったんですけど」
ユウタ「ところで話は変わりますが・・・」
ユウタ「ちょっと前、渋谷のクラブで知人の起業家が主催したパーティに出席したことが有り」
ユウタ「その場に馴染めず会場から逃げ出してしまいました」
ユウタ「どうせ僕は面白い話ができないし、考えれば考えるほど服装もダサくなるから」
マリエ「・・・」
マリエ「ちょっと黙って」
マリエ「水晶で透視してみるから」
「・・・」
マリエ「あなた渋谷でカフェデートしてるじゃない!!」
〇テーブル席
ユウタ「彼女まで発展はしないけど、デートぐらいだったら何度か・・・」
〇占いの館
マリエ「デートだけでもできれば十分」
マリエ「中学・高校と、あなたがいじめられていたことが透視で分かったけど」
ユウタ「そんな所まで視たんですか」
マリエ「つらい過去を乗り越えてきた強さがあなたにはあるの!!」
マリエ「だから自信を持ちなさい。 どんな苦難も乗り越えていけるから」
ユウタ「なんか、ありがとうございます」
マリエ「ところで、あなたはどこ住み?」
ユウタ「葛飾区です」
マリエ「またいらっしゃい!!」
マリエ「上野東京ラインに乗ると渋谷には停まらないわよ。湘南新宿ラインに乗るのよ」
ユウタ「渋谷へ来るのに、上野東京ラインも湘南新宿ラインも使いません」
マリエ「それはさておき、なぜあなたは占いの館に来ようと思い立ったの?」
ユウタ「それは・・・」
マリエ「ちょっと黙って。水晶をのぞけば理由なんてお見通しだから」
マリエ「あなたはイヤホンで音楽を聴きながら、渋谷の街を散策していた」
〇渋谷の雑踏
ユウタ「みんな僕をバカにしてるんだ」
通行人A「ダサっ」
通行人B「キモっ」
〇占いの館
マリエ「イヤホンで音楽聴いてたのに、あなたを悪く言ったってなぜ分かったの?」
ユウタ「絶対俺のことを悪く言ったんだ」
マリエ「それから、、、あなたは、古着屋でTシャツの値段の高さに驚いてるわね」
〇道玄坂
ユウタ「ちょっとおしゃれするのに、こんなにお金が必要なのか、、、」
ユウタ「僕が渋谷のコンサート会場で観たミュージシャンは、Tシャツ着て脱力系」
ユウタ「頑張ってない様に見えて、でもすごくて。 僕もあーなりたいけど、なれない」
〇占いの館
マリエ「あなたのことを悪く言ってるのは、あなた自身よ。自分でも気づいてるんでしょ?」
〇渋谷の雑踏
マリエ「みんな違って、それが良い」
〇ハチ公前
マリエ「イヤホンとって、周りの音を聴いてみなさい。感じてみなさい」
〇SHIBUYA109
マリエ「服が欲しければバイトすればいいじゃない?仲間だってできるよ」
〇モヤイ像
マリエ「あなたができることをすればいいんじゃない?」
〇占いの館
ユウタ「今日は、なんかありがとうございました。 気持ちが楽になりました」
ユウタ「お姉さんのお名前を教えていただけませんか?」
マリエ「マリエだ。おバカ!! さあ出て行った出て行った!!」
〇渋谷の雑踏
ユウタ「なんでマリエさんはエプロンしてたんだろう?」
人の声。車の音。音と音の間の無音。
みんな違って、きっと素敵な。
そんな渋谷を僕はイヤホンを外して歩き出した。
気後れする彼の気持ちはわかりますが、自信がないから周りが自分の悪口を言ってるように聞こえるんですね。
でも、マリエさんすごいですね!私も会ってお話ししてみたいです。
占い師との出会いって、自分の事を言い当てているからとかだけじゃなく、その伝達の仕方とかフィーリングもあると思います。エプロン姿のまりえさんの言葉は、なにか実家の母親が励ましてくれているかのようにとれました。竹を割ったような性格の占い師さんっていいですね!
わたしもマリエさんとお話ししてみたいです。水晶ですべて透視できるなんて、マリエさんには嘘がつけないですね。
こんな頼りになる占い師さんに巡り合ってみたいなあ。