読切(脚本)
〇マンション前の大通り
葵「おーい!礼人!」
礼人「いつもながらに朝から騒がしいやつだな」
〇マンション前の大通り
俺は高校二年生の葵!そんでもってコイツは俺の幼馴染の礼人!幼馴染、兼、...想い人。
初恋は実らない、なんてよく言うが、それは本当だなと落ち込んでしまう。
でも、側にいられることがなによりも嬉しいんだ。そう己を鼓舞して通学路で隣を歩く。
〇マンション前の大通り
礼人「...なぁ、葵。今日の夜流星群が見られることは知っているか?」
葵「え!?全然知らなかった!肉眼でも見られるのかな?」
礼人「俺が望遠鏡を持っているんだが、一緒に町の高台まで見に行かないか?」
葵「っしゃあ!礼人がそう言うならぜってぇ見に行こうぜ!」
葵「楽しみすぎて授業に身が入らないな!」
急に飛び込んできた嬉しいサプライズに心が踊る。
礼人「フッ...そこは割り切れよ」
そう苦笑にも近い微笑みをこぼす礼人を見て、俺の胸は締め付けられる。
── 手を伸ばせば、この手で掴んでしまえるほどの距離にいるのに、一番近い場所にいるのに、一番、遠い──
〇田舎の公園
── 夜──
葵「らいとー!お待たせ!」
礼人「俺も今来たところだ。流星群の時間までもうすぐだから急ごう!」
そう言って光り輝く笑顔をたたえながら、俺の手を引き走り出す礼人。
葵(なんだなんだ!?こんな積極的な礼人、ここ数年見たことないぞ!?)
動揺で走る鼓動はより早くなる。
〇見晴らしのいい公園
葵「ッハァ、ハァ、到着〜!」
礼人「っあ!もう流れてる!おい葵見てみろ!」
〇見晴らしのいい公園
葵「うおぉぉ〜すっげぇ綺麗・・・!」
レンズの中を綺麗な弧を描いて流れる光は、とても特別なものに思えた。それは隣にいる幼馴染の存在あってのものだろう。
礼人「・・・あぁ・・・綺麗だな・・・」
俺に変わってレンズを覗くその幼馴染の横顔がなによりも美しく思えて。
幻想的なこの雰囲気も相まってだろう、つい、本当についと口をついて出てしまった、言葉。
〇見晴らしのいい公園
葵「この星をお前にやるよ。好きだ、礼人」
〇見晴らしのいい公園
葵(うわぁぁぁやっちまったあぁぁぁぁ!)
告白、をしてしまってからすぐにやばいと焦りだす俺。
なんだなんだ!なんでいま言っちゃったんだ俺ェェ!
絶対キモがられてるよな、どうしよう・・・と礼人の顔を見遣ると──
──月と流星群の光で照らされた、この暗闇の中でもわかるくらい赤面していた。
礼人「あ、おい、俺も、今日、言おうと思ってた・・・!好きだ、葵・・・!」
そう赤面しながら伝えてくる礼人に愛おしさが爆発する。
葵「やっぱり俺ら、幼馴染だな・・・!」
そう言って礼人を強く抱きしめる。
礼人もそっと背中に手を回してくれる、こんな幸せがあっていいんだろうか?
流れる光は二人を祝福するように光り続けた。