三ツ星の恋人(脚本)
〇商店街
未来「今日もバイトお疲れー」
隼人「おう」
──スッ。
隼人「その手・・・」
隼人「つらく苦しい労働を終えたばかりの俺から、早速せびるのかよ」
未来「寒い中ずっと待ってたんだし、熱~いコーヒーが飲みたくなっても仕方ないじゃん」
隼人「クソ・・・ここに自販機があるせいで、毎回おごらされる」
──ガコン。
未来「はい、飲んでいいよ」
隼人「俺の金だっつの」
未来「次はあたしの分~♪」
プシュッ。
・・・ごく、ごく。
「あ~、沁みる~」
未来「で、インターンはどう? 木曜から行ってるんだよね?」
隼人「それがな・・・グループワークでまとめたプレゼン、明日社長に披露すんだわ」
隼人「直で社長だぞ。ヤバすぎだろ」
未来「へ~、大変だね」
隼人「覚悟しろ。お前も来年、同じような目に遭う」
未来「うん・・・」
こうしてバイト帰りの隼人から就活の進捗を聞きつつ、一緒にコーヒーを飲む。
年明け以来、忙しくなった隼人に逢える貴重な時間だ。でも──
隼人「つーかお前、猫舌だっけ」
未来「え?」
隼人「飲むの遅すぎだろ。さっき普通に飲んでた気もするけど」
未来「・・・」
とっくにぬるくなっていたコーヒーを一気飲みして、缶をゴミ箱に突っ込む。
隼人「は? 飲めんじゃん」
隼人「じゃ、帰るぞ」
〇住宅地の坂道
未来(・・・隼人のバカ)
ブラックコーヒーは正直きついけど、精いっぱい大人ぶる。
できるだけ長く一緒にいたくて、そのブラックをちびちび飲む。
未来(こんな小細工してる時点で、子供じゃん)
隼人「・・・なぁ、未来」
隼人「俺、大丈夫か?」
未来「は?」
隼人「コーヒーくらいおごってやればいいのに、ごちゃごちゃ言っただろ」
隼人「俺は冗談のつもりだったけど、それで怒ってんだろ?」
隼人「なんつーか・・・」
隼人「彼氏・・・として大丈夫か?」
未来「・・・」
未来(・・・なーんだ)
未来「隼人、あたしのこと大好きじゃん」
隼人「っ、当たり前だろ!」
そんな可愛い心配をしてるなら、採点が甘くなる。
未来「ねえ、コンビニの新作グミ知ってる?」
隼人「は? グミ?」
未来「基本丸いんだけど、たまーに星型のグミが入ってるの」
未来「その星のやつ、出たらあげる」
未来「ちゃんと3つ集まるまで買い続けるから」
隼人「いや、わけわかんねえし」
未来「隼人は彼氏として、三ツ星ってことだよ」
未来「あ、違う違う」
未来「・・・星、3つです!!」
隼人「ぷっ・・・あの司会者の真似か? テレビ見過ぎだろ」
隼人「つーか、そんな食ってると太るぞ」
未来「うるさい、デリカシー無し男」
未来「星2つにしてやる」
隼人「はは。減らされた分は、就活終わったら挽回する」
隼人「って、次はお前の就活が来るか」
未来「・・・毎週迎えに来てよ。 今のあたしみたいに」
隼人「コーヒーはお前のおごりな?」
未来「えっ、何? 風の音が強くて聞こえなかったー」
隼人「お前な」
隼人「・・・ったく」
〇空
呆れ顔の隼人が私の手を取って、自分のコートのポケットに入れる。
北風がどれだけ強く吹いても、私の心は温かかった──
未来のさりげない仕草に気付いてくれる隼人。
僕からも言わせて下さい。星3つ!!⭐️⭐️⭐️
読んでいて、ほっこりするお話でした✨☺️
二人の関係性が良いですね✨👍
彼女のブラックコーヒーが苦手なのに、相手に合わせて大人ぶったりするところとかも、とても可愛いですし、彼氏の方が、飄々としているように見えて、実はどう思われているのか心配していたりするところなどが、見ていて微笑ましいカップルで、これからも仲良く過ごして欲しいと思える二人でした✨☺️