屋上のポラリス

KNE

屋上のポラリス(脚本)

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〇田舎の学校
  ──本当に好きになると、簡単に気持ちを言葉にできなくなる。
  だから、星に想いを託すことしかできないんだ。

〇高い屋上
冬佳(あ・・・)
冬佳「やっぱりいた」
星也「そろそろ来ると思ってたよ」
冬佳「星を観るのが好きな者同士、何か通じるものがあるのかもね」
冬佳(・・・なんて、半分は嘘)
冬佳(いつだって、星也くんに逢えたらいいのにって思いながら、ここに来てる)
星也「ほら、早くおいでよ。今日も流れ星を探すんだろう?」

〇空
  私たちは星を眺めながら、いつものようになんでもない話をしていた。

〇高い屋上
星也「夜遅くなると、空に星があることを思い出せる」
冬佳「田舎だから、夜中は本当に真っ暗になるもんね」
冬佳「・・・」
冬佳「・・・ねえ、覚えてる? ここで初めて逢った日のこと」
星也「覚えてる」
星也「・・・君は泣いていたよね」
冬佳「・・・」
冬佳「私ね、中学の時・・・学校も親も、ぜんぶ嫌になったんだ」
冬佳「だから高校へ上がる時、ひとりで知らない場所に来たかった」
星也「じゃあ、どうして冬佳は泣いていたの?」
星也「嫌なものは、すべて置いてきたんだろう?」
冬佳「・・・ひとりが寂しかったの。勝手だよね」
冬佳「あの時・・・泣いてたのを誤魔化そうしたけど、声が震えそうになって」
冬佳「だから何も言えなくて」
星也「・・・うん」
冬佳「でも星也くんは、私なんて見えてないみたいに、ここに寝転がって星を眺め始めた」
星也「何も聞かないなんて、冷たいやつだと思った?」
冬佳「逆だよ」
冬佳「何も聞かれないのは楽だった。あなたもひとりだったし」
星也「あはは、そう」
  その夜以来、星也くんは私の心の拠り所で──
  不思議とここで逢える彼は、まるでどの季節も同じ場所で輝くポラリスみたいだ。
冬佳「今夜は、そんな風に出逢って半年経った記念すべき日だから、口止め料の夜食を持ってきたの」
冬佳「私が泣いてたこと、誰にも言わないでって」
星也「・・・え、今ごろ口止め?」
冬佳「すっごく美味しくできたんだけど、いらないんだ?」
星也「その賄賂、受け取るよ」
冬佳(差し入れですら口実を作って、冗談交じりでしか渡せないくせに・・・)
星也「すごく美味しい。ありがとう」
冬佳(『どうか、星也くんのこの笑顔を一番近くで見ているのが、私でありますように』)
冬佳(なんて、願っちゃうんだよね)
星也「あっ、流れ星」
冬佳「えっ!」

〇空

〇高い屋上
冬佳「・・・あーあ、いっちゃった。まだお願いしてないのに」
星也「俺はちゃんと願い事をしたよ」
星也「・・・君は、流れ星に何をお願いしているか教えてくれないけど、」
星也「俺と同じことを願っていればいいのにって、いつも思ってる」
星也「『ずっとこうして冬佳と過ごせますように』」
冬佳「えっ・・・」
星也「・・・」
星也「君が好きだ」

〇空
冬佳「っ、私も・・・!」
  星が流れるたびに祈っていた私の想いは、ちゃんと天に届いていたみたいだ──

コメント

  • 男と女が夜空の下で寄り添う。これほどロマンチックな光景はありませんね。☺️

  • 冬の夜の、透き通った空気感が沁みました!これは素敵!

  • 夜空のもと同じ場所でずっと2人だけで展開されるストーリー…まさにこれぞ青春、という素敵なお話でした。

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