十年来の友人と、三本の赤いバラ。(脚本)
〇古民家カフェ
毎年、誕生日に三本のバラをくれる友人がいる。
高校の時からだから、もう十年。
小林「ほら」
早和「ありがとう!」
六月十九日の誕生花がバラだから。
ただ、それだけだと思っていた────。
小林「で? 彼氏はできたのか?」
早和「できてたら、小林と飲んでないでしょうよ」
小林「・・・だな」
お互い働き出してからは、仕事帰りに馴染みのナイトカフェで待ち合わせが定番。
「かんぱい」
小林はいつも小綺麗なスーツを着ている。
スーツにもワイシャツにも、しっかりとノリが効いていて、シワなんてほぼない。
対して、私は着慣れた通勤着。
介護士として一日中動き回っていたせいか、ちょっと汗臭い気もしている。
お互いに仕事帰りなのに、どうしてこうも違うのか。
早和「ぷはぁ!」
小林「いい飲みっぷりだな」
早和「今日もよく働いたもん!」
小林「ん」
いつも他愛ないお喋りや、仕事の話をする。
小林は営業先であったヒヤッとした話。
私は介護での珍事件。
最近見て面白かった動画をおすすめしたりも。
色々話して、笑って、食べて飲む。
三時間が経ち、閉店間際になったので、帰ることにした。
〇マンション前の大通り
小林は近所に住んでいて、歩いて帰ることの出来る距離。
だからなのか、いつもアパートの前まで送ってくれる。
早和「いつもおごってくれてありがとね」
小林「ん」
誕生日はバラをくれて、ご飯もおごってくれる。
「仕事でストレスが溜まった!」
と言うと、すぐに飲みに誘ってくれる。
早和「小林はこんなにいいヤツなのに、なんーで彼女ができないんだろうねー?」
誕生日だしいいかと飲みすぎた自覚はある。
そこまで酔ったつもりはなかったけど、たぶん酔っていたんだと思う。
だから、つい言ってしまった。
彼氏はどうだとか、根掘り葉掘り聞いてくるくせに──
自分は『好きな人がいる』以外は話そうとしないから。
早和「好きな子にちゃんと告白しなよー」
小林「・・・・・・相手を、困らせたくない」
早和「またそれ?」
早和「大丈夫大丈夫。 小林なら絶対に大丈夫!」
小林「・・・・・・言ったな?」
小林の顔がスッと近付いてきた。
早和(へっ!?)
気づいたら、唇が重なっていた。
小林「っ──!」
小林「・・・ごめん、早和 俺酔ってるわ」
小林「帰る」
早和「えっ・・・」
小林「バラの意味、調べといて」
早和「え・・・うん」
このあと、どうやって部屋に戻ったのか、記憶がない。
〇綺麗な一人部屋
小林に言われたとおりに、スマホでバラの意味を検索した。
三本の赤いバラは、『愛しています』を意味しており、告白の際におすすめです。
衝撃の事実に、ベッドの上でスマホを抱いてのたうち回ってしまった。
早和(明日、小林に連絡しなきゃ・・・)
私も好き、って言いたいから──
── fin ──