よろしくな?兄弟♥(脚本)
〇秘密のアジト
21番「そんで・・・俺らはここで何を?」
91番「『何を』?ったく・・・ 腑抜けにも程があるぜ・・・」
21番「・・・・・・???」
21番「いってえ!誰だコ・・・」
21番「ラ・・・?」
91番「・・・よっ」
21番「・・・・・・」
21番(──嘘だろ!?まさか、 今のパンチはこの人が!?)
91番「・・・・・・」
21番(今正面にいた奴が、背後からパンチを浴びせて・・・)
21番(そして今は、俺の真横にいる!!)
91番「・・・思考時間は終わったか?」
21番「・・・くっ!」
91番「・・・遅えんだよ」
21番「・・・・・・」
21番(空振った!?俺がアイツに殴られてから、 大して時間は経ってねえ!)
21番(咄嗟に攻撃に転じた筈だ。 なのになんで──)
21番「っ!」
91番「人が思考するのに係る時間── 一体何秒だ?」
21番「・・・・・・人が、思考・・・?」
21番「・・・知るか!だらあ!」
91番「その拳・・・前に突き出すまでに何秒掛かった?」
21番「・・・く!ちょこまかと!」
91番「ちょこまかと?いいや違う。 お前が遅いんだ」
91番「お前は他の隊では強かったかもしれねえ。 才能もある。努力もできる。違いねえ」
21番「よし、当たっ──!?」
91番「──だが、まだ弱い。 俺に言わせりゃあな」
21番「・・・・・・!」
21番「・・・・・・受け、止め・・・た・・・?」
91番「・・・だから、お前にはもっと修行が必要だ」
91番「その為には、あの訓練場だけじゃ足りねぇ。 最近も97番と代わり番こだしな」
21番「・・・・・・何が問題なんだ?」
91番「・・・代わり番こだと、 お前の時間が減るだろ・・・」
21番「・・・・・・・・・」
21番「あ!!!」
91番「・・・ゴホン」
91番「そう!そこで!俺は考えたわけだ。 お前にも、97番にも両方! 気の向くまで修行させられる方法をな」
21番「・・・それで、俺はこっちなんスか?」
91番「そ! まあ、ここは俺も気兼ねなく煙草が吸えるしな」
21番「あっち喫煙なんスか?」
91番「違う違う。 あの試験官サマだよ!アイツが煙草嫌いなの!」
21番「・・・・・・・・・はぁ」
21番「・・・ってか、あんたが吸うって事は・・・ まさか・・・?」
91番「だからまあ、んなわけで・・・」
91番「これからみっちりシバいてくから、 よろしくな?兄弟♥」
21番「・・・・・・・・・ま、」
21番「マジか・・・・・・」
〇大ホールの廊下
同時刻、レオナルダ社・大ホール
96番「ハ・・・ここがレオナルダ社か。 随分と広いもんだ・・・」
試験官「・・・だが、ここも今となっては我々の傘下だ。 『玩具』の件も、存分に調べさせてもらうぞ」
96番「・・・で・・・サヴォイアは?」
試験官「知らん。アイツはただの刺客だ。 案内役なら別にいるだろう」
96番「・・・・・・ふーん」
96番「・・・じゃあ、あのコは?」
試験官「・・・あのコ?」
96番「ホラ・・・俺らの真ん前にいるあのコだよ、あのコ」
試験官「ああ、あの子か。 ちょっと声を掛けてみるか」
試験官「すみません」
受付嬢「あ、いらっしゃいませ!」
受付嬢「もしかして、事前にご予約頂いているAlphabet社様でしょうか?」
試験官「はい」
96番「・・・伝わってるみてぇだな」
試験官「いくら末端とはいえ、俺らの表向きは社員だからな。 丁重に扱ってくれているんだろう」
受付嬢「それでは、こちらになります」
〇小さい会議室
受付嬢「こちらでお掛けになってお待ちください。 もう少ししたら社長のヘルダーが参りますので・・・」
96番「なあ・・・」
試験官「・・・なんだ」
96番「なんでアイツ、自分の社長のコト呼び捨てなんだ?」
試験官「・・・・・・」
試験官「・・・お前それ、本気で言ってるのか?」
試験官「ヘルダー社長! 本日はどうも、お忙しい中──」
「・・・・・・・・・」
ヘルダー「・・・・・・」
ヘルダー「改めまして、私が『レオナルダ社』の社長のヘルダーと申します」
試験官「・・・『AlphaBet』のドゥイです」
96番「96番だ」
ヘルダー「『96番』?」
96番「『AlphaBet』の裏の社員・・・つまり俺たちは、実験体だ。 番号の方が、管理する側にとって都合がいい・・・」
ヘルダー「・・・・・・なるほど」
ヘルダー「・・・今回のご予約、ありがとうございます」
ヘルダー「ドゥイ様から話は聞いております。 ウチのサヴォイアが賭けをして・・・負けた、と」
試験官「はい。今回はその詳細な話をするために伺いました」
ヘルダー「・・・サヴォイアは本当に余計な事をしてくれました。 本来は、あなた方と接触する手筈ではなかった──」
ヘルダー「謎の多い裏のあなた方は放置して、 会社の表部分の社長様と交渉をする予定でした」
ヘルダー「・・・・・・それが、裏に喧嘩を売った挙句、あなた方に取り込まれるなんて」
ヘルダー「・・・・・・本当に、余計な事をしてくれましたよ」
96番(・・・目が笑ってねえな)
ヘルダー「サヴォイアは独断で行動した挙句、何の保証にもならない口約束で今回の契約を行いました」
96番「・・・・・・」
ヘルダー「本来なら反故にも出来る話── ・・・ですが、いくら口約束と言えど、契約の1つに変わりありません」
ヘルダー「・・・部下の提示した条件を社長が破ってしまっては、会社の信用にも影響しますしね・・・」
ヘルダー「・・・という事で、まずは、正式に契約を行わせてください。 こちらを・・・」
試験官「・・・株式会社『AlphaBet』は、株式会社『レオナルダ社』に対し、以下の通り業務委託契約を締結する──」
96番「・・・偉いもんだぜ。 ブッチする事も出来たってのに」
ヘルダー「・・・署名はいつでも構いません。 お時間のある時にお読みになってください」
試験官「・・・そうさせていただきます」
ヘルダー「それでは、本題に入りましょうか・・・・・・」
ヘルダー「・・・何が知りたい?」
試験官「・・・・・・お前らが使っている道具について知りたい」
ヘルダー「・・・・・・・・・」