8.想い悩む(脚本)
〇教室
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「うーん・・・」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「──なにを唸ってるんだ?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「明志くん・・・実はね、ちょっと悩みがあってさ・・・」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「どんな?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「男子のみんなが、真昼ちゃんのことを好きになったかもしれないんだ・・・」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「・・・俺は男子をやめた覚えはないぞ?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「隠さなくていいんだ、明志くん・・・」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「前に真昼ちゃんが、みんなにお弁当を分けていただろう?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「分けてたな。揚げ物ばっかりだったが」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「男子っていうのは、女子から物を貰ったら好きになっちゃうだろう!?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「その姿で男子を語られてもな・・・」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「特に明志くんみたいな、女性経験が皆無の男子はそうだと思う!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「男子どころか、俺のことまで語り始めるな」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「物を貰ったくらいで、好きになるわけないだろ・・・?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「だいたい、女性経験がないのはお互い様だし」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ボクはちゃんと女性を経験してるよ?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「──ほら、この格好がその証拠さ!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「女性経験に女性になった経験を含めるな」
〇教室
春無 明志(ハルナシ アカシ)「そもそも、男子にも選ぶ権利がある」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「真昼ちゃん以外の選択肢・・・?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ボク!?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「・・・選ばれたらどうすんだよ」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「そう言われても、真昼ちゃん以外なんて考えたことがなくて・・・」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「お前には選ぶ権利がないのか?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「そう言うなら、明石くんはどんな子がいいんだい?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「・・・俺?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「好みを聞いてみたいな。真昼ちゃんと遠いなら、それだけ安心できるからね!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「俺の好みか・・・」
クラスメイト(──好みの女子? 男子も恋バナなんてするんだなぁ)
〇教室
春無 明志(ハルナシ アカシ)「髪は長くて、明るい方がいいな」
クラスメイト(ふむふむ)
春無 明志(ハルナシ アカシ)「一本にまとめてるくらいがすっきりしてるかもな」
クラスメイト(こんな感じ?)
春無 明志(ハルナシ アカシ)「顔は中性的というか、凛々しいくらいがいいかもしれない」
クラスメイト(・・・んん?)
春無 明志(ハルナシ アカシ)「あとは俺にないような部分・・・自分に自信があって、はきはきしてると憧れるな」
クラスメイト(いや、それって──)
クラスメイト(それって晴空くんのことじゃない!?)
〇教室
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「それって・・・」
クラスメイト(ほら、晴空くんが気づいちゃうよ!?)
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「真昼ちゃんのこと!?」
クラスメイト(気づかないんだ・・・!?)
春無 明志(ハルナシ アカシ)「・・・なんでそうなるんだ?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「明るくて自信があるなんて、真昼ちゃん以外にあり得ないからね!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「百歩譲ってそうだとして、見た目の好みを無視するな」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「明志くん、人は外見じゃなくて生き様なんだよ?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「生き様でも選ばねーよ・・・」
〇教室
春無 明志(ハルナシ アカシ)「だいたい、俺が知ってる中で人気なのは九冬だぞ?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「常夏が好きっていう奴は・・・お前以外に知らん」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「誰しも本命は隠すものさ」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「──男子ならば当然!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「隠さないお前は男子じゃないのか?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「かっこいい女だからね」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「なら男子を語るなって・・・」
クラスメイト「──だ、男子じゃないってことは、晴空くん的には男子も恋愛対象ってこと?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「な、ななな、なんだ!?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ん? いや、かっこいい女ではあるけど男子でもあるというか・・・」
クラスメイト「目指してるってことは、今後は変わってくることもあるんじゃないかな!?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「まあ、絶対にないとは言い切れないかも?」
クラスメイト「──だって、明志くん!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「お、俺? なにが!?」
クラスメイト「私は応援するからね!」
クラスメイト「はいこれ、応援の印だよ」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「え、あ、うん・・・」
クラスメイト「それじゃあ、仲良くね!」
〇教室
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「相変わらず、女子への免疫がないんだね」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「晴空・・・」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「どうしたんだい?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「やっぱり、外見じゃなくて中身だよな」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「え? もしかして、今ので!?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「だって、お菓子くれたしよ・・・」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「すごいよ、明石くん・・・ ボクの期待通りになっている!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「悪かったな、お前の言うことを否定して」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「男子っていうのは、物を貰うと好きになるもんなんだな・・・」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「明志くんを見ていると、ボクの悩みも杞憂じゃないことが確信できるよ」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「いや、それは杞憂だと思う」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「いやいや、明石くんだって同意してくれたじゃないか!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「あのな、俺の免疫の無さは見ただろ・・・」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「そんな俺が常夏相手になにも思ってない それでもう安心できるだろ?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「──なるほど!」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「男子オブ男子の明石くんが惚れていないなら、他の男子もそうに違いないね!」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「正直、屈辱的な事実ではあるが・・・今は否定できない」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ありがとう、明石くん! きみのおかげですっきりしたよ」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「──おっと、そろそろ着替えなきゃね それじゃあ、またあとで!」
〇教室
春無 明志(ハルナシ アカシ)(──まあ、あいつの悩みがなくなるならいいか)
春無 明志(ハルナシ アカシ)(いくら女子が苦手でも、物を貰っただけで好きにならねーよな・・・)
〇教室
クラスメイト「応援してるからね!」
〇教室
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「──明志くん?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「・・・いつの間に戻ってきたんだ?」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「ちょっと前からだけど・・・どうしたの、ぼーっとして?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「晴空、やっぱりさ──」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「好きになるのって、見た目じゃないのかもな」
秋野 晴空(アキノ ハレソラ)「それってつまり・・・真昼ちゃんのことも!?」
春無 明志(ハルナシ アカシ)「それは違う」