エピソード47『時は流れて』(脚本)
〇安アパートの台所
1999年、北の国。『シュークレン・バッハ』
シュークレン・バッハ「お兄ちゃん、『ゲーム機』貸して! 次は僕って言ったじゃないか!」
シュークレンの兄「やだね、 『シュークレン』には、い・や・だ!」
シュークレンの姉「あんたら、仲良くしなよ。 お互いが損するじゃん」
シュークレンの母「お兄ちゃん、 次は『シュークレン』に、ね」
シュークレンの兄「しょうがねーなー」
シュークレン・バッハ「ありがとう! お兄ちゃん♪」
シュークレン・バッハ「ありがとう、お母さん!」
『ブラック・ダド』
かつて『シュークレン・バッハ』という名だった私には、父が居なかった。
母が私たち兄弟を大きく、強く育ててくれた。
素晴らしい母だったと記憶している。
私たちは、家族で協力し、
それでも、食費がギリギリ足りないような、質素な生活をおくっていた。
シュークレンの母「今日は肉、手に入ったからね!」
「やったー!!」
私たちは、兄弟で助け合った。補いあった。
私は、兄、姉からのおさがりの本で、
とにかく勉強に勤しんだ。
〇荒れた競技場
2010年、北の国。『シュークレン・バッハ』
大きくなってからも
多少なりとも働き、
そして数多くの本のチカラで知識を得た。
シュークレン・バッハ「はぁ、 ふー、」
・・・生きるために必死だった。
ギリギリの生活が不可欠だった。
けど、この苦労は
きっと報われたんだろう。
国の援助で、私はランクAの大学へ通うことになった。
更には卒業後、
恩師の薦めで、孤島の管理を任される事になった。
〇火山のある島
私は、
『父親』という存在に、
物心ついた頃から憧れていた。
願いが叶ったとでも云うのだろうか?
私は、その孤島で恋に落ち、
──1人の娘を授かった。
〇海辺
2022年、北の国。『シュークレン・バッハ』
私は、
父として、妻と共に娘を育てた。
シュークレン・バッハ「お、 ──キタ!」
シュークレン・バッハ「っと、 お、大物だよ! 『沙羅』! 『マァサ』!」
大きく笑う妻と、
あだあだと、騒ぐ娘、
そして、私
それは3人だけの、
大きな、大きな世界だった。
・・・かつて私が望んだ、
『父の幸せ』だった。
〇海辺
しかし、
神は、私が幸せになるのを
・・・簡単には許さなかった。
本土に残した母たち家族は、
隣人の手によってこの世を去った。
────土地の権利が原因だったらしい。
──妻と愛娘は、
私の誕生日を祝うために出掛けた際、
孤島から離れた海で消息を絶った。
妻たちのそれは、
国家が隠匿するほどの、異常気象によるものだ、と云われている。
当時の私には、詳細を知る術が無かった。
全て、故郷たる本土の政治家によってもみ消されていた。
それが本土による、隣国要人の暗殺が目的だった。
と知ったのは、それから数年も後の事だ。
シュークレン・バッハ「ぅおおおおおおおおおお!!」
シュークレン・バッハ「あ、あぁぁぁぁ、ぁぁぁー」
〇海辺
2025年、北の孤島。『シュークレン・バッハ』
────その後、
──私は孤島に住む人々の生活を賭け、ペンを用い本土の民と戦った。
3人の子供たちを養子にしたのは、その頃の事だ。
それは全て、
浜辺で拾われたという、身元不明の子供たちだった。
・・・キミたち、名前は?
???「無い無い」
???「まぁ、無いよね」
???「あ、うん」
沈む夕陽を眺め、
私は、娘に似た栗色の髪の少女へ話しかけた。
私は本当の父ではないけれど、
ガール《キミ》、私のことを『ダド』と呼んではくれないかい?
???「『ガール』って、あたしの事? それ、なんかかっこいい!! あたしの名前にしてもいいの?」
???「じゃ、じゃあ、俺は? 俺の名前!!」
なら、
キミは『ボーイ』
???「けっ、・・・ダセー、 けど、」
ボーイ「けど、 なんか、むちゃくちゃカッコイイな!!」
???「わ、私は・・・?」
なら、キミは、
・・・『マム』、なんてどうだい?
やはり可笑しいかな?
マム「そんな事ないです! とってもステキ・・・」
その日、
私に新しい家族が出来た。
血は繋がっていないけれど、守るべきものが出来た。
気が狂いそうなほど嬉しかった!
全てが満たされた想いがした。
その時、私たち4人の前へ
大地を震わせ、やって来たものがあった。
それこそが、
自らを『王留』と名乗る獅子、
一振りの刃へと姿を変える、意思持つチカラだった。
〇海辺
それから私は、新しい家族の為にどんなことでも行った。
貧しい民を味方につけ、本土からあらゆるものを奪い取った。
守るために奪った。
もう2度と、・・・失いたく無かった。
他人は信じなかった。ことごとく利用した。
新しい家族の才で、多額の財と、新たな国が産まれていく。
その新たな国でも、私は『ダド』と名乗った。
そして、国民を自身の家族と位置づけた。
しかし、誰も私を『父』とは呼ばない。
私へ微笑みかけることは無かった。
それでも私は家族の為に、
我が家、『ホーム』を守る為に、
・・・隣人を貶め続けた。
〇海辺
3人の家族と出会って数年、
家族の総数は、66億にまで膨れ上がっている。
2040年、アラスカ『ホーム』『ブラック・ダド』
ブラック・ダド「・・・・・・」
ブラック・ダド「・・・こんな父で良かったのかな? 私は、キミたちを幸せに出来たのだろうか」
ピンク・ガール「よく分からないけど、 い~んじゃない? ど~でも。 まあ、少なくとも『ガール』はね」
ピンク・ガール「そして毎日が、 『ダド』と一緒の毎日が、 ・・・あたしは、とっても楽しいよ♪」
〇立派な洋館
2040年? 導きの園。『ブラック・ダド』
ホーム・ホルダーの兵士「『導きの園』 ────制圧致しました」
ブラック・ダド「ご苦労。 その手を汚させてすまない。 父は、心から感謝する」
ホーム・ホルダーの兵士「『ブラック・ダドさま』 こんな一国民にまで、貴重な、有難いお言葉を!」
ホーム・ホルダーの兵士「し、失礼致します!」
ブラック・ダド「これから、世界と、全ての時間軸を統治し、 これらを我ら『ホーム・ホルダー』のものとする」
ブラック・ダド「以上だ。 皆のこれからに、私は更なる期待をしている」
ブラック・ダド「・・・・・・もう、 私は戻らない」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭