エピソード46『遠い遠い未来の昔』(脚本)
〇野球のグラウンド
2015年、イバラキ。『柊モカ』
その日の昼休み、
校庭で休んでいたボクのところへ
彼がやって来ました。
桜 壱貫(さくら いっかん)「おい、おまえ」
柊 モカ「・・・・・・」
桜 壱貫(さくら いっかん)「『桃野』、アイツは何者だ? そして、おまえも いったい何者なんだ!」
柊 モカ「言っても、 絶対信じてくれないと思いましゅ」
柊 モカ「そして、あなたは、」
柊 モカ「ボクを恨むかもしれましぇん」
柊 モカ「それでも聞きたいでしゅか?」
桜 壱貫(さくら いっかん)「ああ、」
柊 モカ「・・・・・・」
柊 モカ「分かりました、お話しましゅ」
柊 モカ「叶うなら、 ・・・話の終わりまで、 どうか聞いてくだしゃい!」
〇荒廃した街
今の時間から、15年程先の未来
『ノア』の箱舟が地球へ降り立った年の事。
その、例年より寒い冬の時の話です。
2030年、イバラキ『なゆちゃん王国』。『ゴミ』
地球へやって来た『ノア』の民へ物資を輸送するため、
そして、その年の異常なまでの冷夏で、
この国は、
今までにないほどの食糧難に陥りました。
ゴミ「・・・・・・」
ゴミ「────お腹、」
ボク、
通称『ゴミ』には、その時より前の記憶がありませんでした。
意識した時にはココ、廃墟と荒野の狭間のような所で生きていて、
破れたシャツとズボンを纏い、
日々雨露を飲み、草木をしゃぶって生きてきました。
出鱈目な生き方と、鮮明な水の色が
ボクの記憶に蠢《うごめ》いていたんです。
彷徨う難民に紛れて
その日も、ボクの元へ国の査察官がやって来ました。
彼らは言います。
自称・査察官「私たちの国のため、 『ゴミちゃん』どうかキミも御協力を、」
ゴミ「国のためなら、」
自称・査察官「ありがとう! あと、コレとコレも貰っていくね」
ゴミ「はい、国のためでしゅから、」
ゴミ「────お腹が、」
彷徨う人A「な、なんだこいつ、 何かのルーを持ってるぞ!」
ゴミ「────欲しいでしゅか?」
彷徨う人A「当たり前だ! さっさと寄越せ」
彷徨う人B「俺にも寄越せ!!」
彷徨う人B「へっ! 俺はおまえより不幸なんだ。貰って当たり前なんだよ!」
ゴミ「・・・・・・」
ゴミ「ノドが、」
全てを持っていかれ、
水を入れるペットボトルすら、盗られて、
ゴミ「────違う。 ボクは差し上げたんだ。 苦しむ皆が欲しがったから、 みんな不幸だから、」
ゴミ「ボクよりも、貰う理由があるから、 ボクは、」
「そんな訳あるかー!! どこの不幸自慢よ!」
柊なゆた「この『柊なゆた』が、取り返しておいたわよ!」
ゴミ「・・・・・・」
柊なゆた「・・・・・・」
柊なゆた「え? キミ、大丈夫?! だ、だれか、水持ってきて!!」
そこから、
『なゆたさん達』との、
──家族の物語が始まったんです。
〇荒廃した市街地
それと同時期に、
1人の男性がボク達の住居へやって来ました。
ツクル「この土地、アナタに任せていいか?」
柊なゆた「うん、任されたよ。 いよいよ行くんだね、『ツクルくん』」
ツクル「ええ。 自称『歯車』を壊してきます」
ツクル「こんな、 何ひとつ噛み合ってない世界は、要らない」
柊なゆた「・・・『ツクルくん』」
世界の歯車を壊すために、
自分達の町の管理を『マァマ』に任せ、
『ツクル』という名の彼をリーダーとする一団は、
イバラキの土地から去っていきました。
〇荒廃した街
──彼を始め、多くの人が『イバラキ』の地を去って行きました。
それでも、
大切な、とても大事な時間は続きました。
大好きな『マァマ』と、
頼もしい『いっか』が、
──ボクを守ってくれたから。
〇荒廃した市街地
──そんな大きな幸せを、ぶち壊したのが、
・・・彼、
『レッド・ボーイ』でした。
桜 壱貫(サクラ イッカン)「逃げろ『モカ』! おまえだけでも!!」
桜 壱貫(サクラ イッカン)「効かんわ!」
柊 モカ「『いっか』 ・・・・・・どうか死なないで、」
〇空
それから、
──ボクの旅が始まりました。
ボクは残った『キメラ』と数人で、
逃げ・・・
〇荒地
──アフリカの地に辿り着いたんです。
そこで、
──大きなお友達が死に、
〇空
ボクは、
お友達の『パス』を使って、
──ようやく、この時代へやって来ました。
〇野球のグラウンド
桜 壱貫(さくら いっかん)「・・・そうか、」
柊 モカ「──はい」
桜 壱貫(さくら いっかん)「世界ってままならないな。 それこそ、自分のことだって」
桜 壱貫(さくら いっかん)「・・・・・・」
桜 壱貫(さくら いっかん)「未来で、 ──『なゆた』は死ぬんだな?」
柊 モカ「はい」
桜 壱貫(さくら いっかん)「なら、」
桜 壱貫(さくら いっかん)「この俺が、 そんな、昔の未来を替えてやる!」
『ブロウ』の鉤爪を持ち、
──『いっか』は笑いました。
そんな彼の反応に、
なんでだろう?
ボク達は、
──2人、声に出して笑えたんです。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭