ただいま おかえり

笑門亭来福

空想散歩(脚本)

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〇モヤイ像
渋子「♪ 五、五、五」
代々子「♩ 月、月、月」
千駄子「♫ 五月、五月、五月」
渋子「♪ 蝿、蝿、蝿」
代々子「♩ 五月蝿、五月蝿、五月蝿」
千駄子「♫ 心おきなく 引きこもる」
渋子「♪ 今日もテレワークで なんてね」
渋子「みんなぁー こんにちはぁー 💕」
代々子「いつもあなたを待っている💕」
千駄子「持続可能的渋谷ガールズこと💕」
「SSGs48でーす❤️」
渋子「みんな準備はいい? せーのっ」
  ただいまぁーっ!!
「おかえりぃーっ㊗️」
「ありがとぉーっっっ! きゅん、きゅん❤️」
渋子「あなたの今日のピクトグラムは何ですかぁ?」
「私たちは8番。 「渋谷はあなたのふるさと」でーす」
代々子「みんなぁ、今日もイチオシピクTシャツきてるのぉっ?」
  おぉーっっっっっ!
千駄子「よろしぃ」
渋子「それじゃあ、新曲いっちゃいます」
千駄子「『ピクトグラム with かごめかごめ』」
渋子「♪ さとり、さとられ、鬼の子は」
代々子「♩ みんなに囲まれ唄われる」
千駄子「♫ かごめかごめ ・・・ 後ろの正面だーれ」
千駄子「♫ あぁ、何回やっても、当てられない」
渋子「♪ 正解がつかめないの そう」
代々子「♩ 永遠にあなたの心がつかめない 私みたい ♫」

〇渋谷駅前
父「懐かしいなぁ かごめかごめ」
息子「?」
父「小さい頃よくやった」
父「TVゲームなんて、なかったからなぁ」
息子「??」
父「♫ かごめかごめ かごの中のとりは」
父「♫ いついつ出やる 夜明けの晩に」
父「♫ つるとかめがすべった」
父「♫ 後ろの正面だーれ」
父「唄い終わったら、目をつぶった真ん中の鬼が、後にいる人の名前を当てる」
息子「・・・間違えたら?」
父「ずっと繰り返し」
息子「・・・鬼のまま?」
父「そう」
息子「・・・こわい」
父(・・・そう、私はずっと鬼のままだ)
父(周りのみんなは、回るうちに、いつの間にか知らない人のようになって・・・)
父(唄声は、ヒソヒソ、罵倒、笑い声に変わる)

〇水の中
父(苦しさがこぼれて、溢れて、止まらない夜)
父(魂は泳いで、渋谷駅に向かう)
父(癒されない魂が、坂という坂から、ビルの窓という窓からこぼれ、集まる)
父(笑えない、答えがわからない、逃げ出したい、ふるさとに帰りたい)
父(ウメキながら、改札を抜け、電車に飛び乗る)
父(電車は走る。いつまでも鳴り止まない踏切を駆け抜け、信号は紫に変わる)
父(汽笛のような鳴き声が高く、遠くまでひびき、かすれていく・・・)
父(電車はふわりと宙に浮き、最後尾からポツポツと鱗が生え、龍となった)
父(銀の龍の背に乗って、引き受けられた魂は、北へ南へ東へ西へ)
父(山を抜け、海を渡り、丸い月を横切り、星の中を泳いだ)
父(夜明け前、龍は元の電車に戻り、静かに渋谷駅に滑り込む)
父(傷ついた魂達は、龍がくれた鱗で、力を取り戻し、顔を上げ、それぞれの役割に戻っていく)
息子(一日中、山手線の電車の窓から、空だけを眺め続け、)
息子(先のことなど考えもしなかったけど、気象予報士になった)
息子(無駄なことは何一つない)
息子(日常は続く)
息子(やりがいのある仕事をするんじゃない)
息子(やりがいのある仕事にするんだ)
息子(と うそぶいた。 結婚もし、子供もできた。 龍を見ない月日が過ぎた)
父(最近、リモートワークが増えた)
父(家族とずっと一緒だ❤️)
父(・・・だけど、小さなことが気になり、うれしいのに、大好きなのに・・・)
父(だんだんと、大きな声で怒り、気づいたら、手をあげるようになった)
父(苦しくて、やるせなくて、逃げ出したいけと、逃げ出せない)
父(また、ボクの魂は、夜中、渋谷駅に向かい、龍の背に乗り、明け方、鱗をもらう)
息子(キラキラ光る虹色の鱗、自分の顔が映る。 それは確かに僕自身だ)
息子(かごめかごめの周りが、知らない人に変わるわけじゃない)
息子(友達や家族でもない)
息子(それは、お前、お前自身だ)
息子(自分で自分を否定しても、安全な場所なんてない)
息子(自分と向き合わなければ、地の果てまで逃げても、逃げきれない)

〇魔法陣2
「こんにちはぁ、SSGs48でーす」
渋子「今日も持続可能な渋谷の目標をピクトグラムで伝えまくっちゃいまーす」
代々子「今日のピクトグラムは、18番! 長方形2つ、ビルの中の大型ビジョン」
千駄子「『全国の姉妹スクランブル交差点と繋がるのだぁ』」
「とにかく、大型ビジョンがあるところは、 片っ端に」
「隅から隅まで、ず、ず、ずぃーとぉ、姉妹スクランブル交差点に認定しちゃうんだから!」
「全国の商店街に○○銀座があるように、 全国の大型ビジョンがあるところは、 ○○渋谷にしちゃいまーす」
父「・・・清、ごめんな」
父「最近、お父さん、ちょっと、変かな?」
息子「最近は、コロナ鬱とか、コロナバイオレンスで、彷徨う魂も随分増えた」
息子「でも、これ以上、龍の鱗をむしるわけには いかない」
父「清、お父さんなぁ・・・」
父「実は『サトラレ』なんだ・・・」
父「お父さんな、考えたことが、周りの人に聴こえてしまうんだ」
父「でも、お父さん、サトラレでもいいと思ってる」
父「しっかり自分と向き合って、受け入れる。 大丈夫。だから、お父さん、龍に恩返し、 しようと思う」
  法螺貝の音、高らかに
  渋谷のあらゆる寺社、教会、祠、公園、土俵から、
  大小色とりどりの龍が、一斉に空高く飛び立った
  『昼の龍だ!』
  復活した鱗をキラキラさせながら、一声高く鳴き
  四方八方に散って、スクランブル交差点の
  大型ビジョンへ、
  電車の車内ビジョンへ、飛び込み、山を越え、海を越え、
  ふるさとに駆け抜ける
「すべては渋谷に繋がり、渋谷はそれを引き受け、寄り添う」
「来世もまた、渋谷で」
「ただいま」
  おかえり

コメント

  • もしかして「銀の龍の背に乗って」の「銀の龍」は「電車」のメタファーなのか?私は思わず、旅に出て、電車に揺られながら「銀の龍の背に乗って」を聴きたい気持ちになりました。こんな世の中でもきっと龍は背中を押してくれる。さあ、行こうぜ──と。

  • 独特の世界観に圧倒されました!
    内容もですが、キャラクターが本来の役割(父と子)を超えてナレーションに近い事を語る演出などから演劇に近い感じを受け、TapNovelでこういう事もできるのかと新鮮な驚きでした

  • 「クリスマス寄席」のときもそうでしたが、今回も笑門亭来福さんの世界観に引き込まれてしまいました。

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