エピソード44『イチバンのーー』(脚本)
〇昔ながらの一軒家
2007年、イバラキ。『桜 壱貫』
『なゆた』、あいつは『疫病神』だった。
もしかしたら、
『化け物』の類いだったのかもしれない。
桜 壱貫(幼少期)「『なゆた』、 オマエは着いてくるな」
柊 なゆた(幼少期)「なんで?」
桜 壱貫(幼少期)「邪魔なんだよ、オマエは 俺は今から『しゅら』の散歩に行くんだ!」
柊 なゆた(幼少期)「いーじゃん、いーじゃん。 私と遊ぼ!」
桜 壱貫(幼少期)「クッ!」
夏休み最後の日、その日も
飼い猫である『しゅら』との散歩を
・・・当然ながら邪魔された。
桜 壱貫(幼少期)「『なゆた』 なんでオマエは俺に構う💦」
柊 なゆた(幼少期)「『いっくん』がいいんだよ! 『いっくん』が『じゃすてぃす』だから なんだよー!」
桜 壱貫(幼少期)「そ、そうなのか?」
柊 なゆた(幼少期)「うん、マジの、マジマジだよ!」
桜 壱貫(幼少期)「ご、ごめんな、『しゅら』」
〇昔ながらの一軒家
──数時間後、
俺たちを待つ人の中に、
・・・友達『しゅら』の姿は無かった。
桜 壱貫(幼少期)「父、母! 『しゅら』は何処だ?」
桜 奏楽《サクラ ソラ》「外に出てはいないと思うけど、 それより聞いて『壱貫』」
桜 大河《サクラ タイガ》「いや、 まずは風呂だ」
〇白いバスルーム
桜 壱貫(幼少期)「う、嘘だろ! ま、まだ!」
〇昔ながらの一軒家
桜 壱貫(幼少期)「父よ、恨むぞ!」
桜 壱貫(幼少期)「そ、それより、」
桜 壱貫(幼少期)「『しゅら』──!」
〇通学路
桜 壱貫(幼少期)「『しゅら』──!!」
〇古本屋
桜 壱貫(幼少期)「何処だよ、 『しゅら』!!」
〇店の入口
走り疲れた頃、
──俺はそれを見つけた。
〇開けた交差点
柊 なゆた(幼少期)「ごめんね! ごめんね!」
──雨水伝う道路上に、
赤い何かを抱いた『なゆた』がいた。
桜 壱貫(幼少期)「・・・・・・」
柊 なゆた(幼少期)「助けられなかった」
柊 なゆた(幼少期)「痛かったのに、 苦しかったに違いないのに!!」
「退け! 邪魔だろうが、オマエら!!」
「親は何処だ? 早く帰れよ! 退けって!」
柊 なゆた(幼少期)「黙れ! この子は、『いっくん』の1番なんだぞ!」
桜 壱貫(幼少期)「え?」
柊 なゆた(幼少期)「さよならを邪魔するヤツは、 私が絶対許さない!!」
桜 壱貫(幼少期)「・・・・・・」
桜 壱貫(幼少期)「・・・・・・ありがとう」
桜 壱貫(幼少期)「『なゆた』 ・・・・・・ありがとう、な」
〇昔ながらの一軒家
2015年、イバラキ。『桜 壱貫』
友達の墓の隣に、その子の亡骸を横たえる。
桜 壱貫(さくら いっかん)「『しゅら』 ──こいつの事、任せたぞ」
ふと、
脳裏に泣いている『なゆた』がよぎった。
桜 壱貫(さくら いっかん)「──1番の友達、か」
「──おーい、 ──『いっくん』?」
桜 壱貫(さくら いっかん)「──いま行く」
〇空
あの空に思う。
「俺よ、 ──もっと強く在れ」
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭