ペルソナの微笑

鳳条

第22話(脚本)

ペルソナの微笑

鳳条

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〇見晴らしのいい公園
香穂「楓は自殺じゃなかった ・・・あいつらが、楓を突き落としたの」
凛「・・・突き落とした・・・?」
香穂「・・・結衣ちゃんが嫌がらせをされてるって話を聞いたあと、来栖を呼び出した」
香穂「楓の名前で、いじめのことを公表するって手紙に書いたら、あっさり来てくれて」
香穂「私が楓の双子の姉だって言ったら、みるみる青ざめていって────」

〇教室
綾香「───わ、私は・・・!! いじめるつもりなんてなかったの・・・!!」
香穂「───そんなの、認められると思ってる?」
香穂「実際、楓は亡くなってるんだよ? ・・・あなたたちのせいで」
綾香「ち・・・違うの・・・ 私はそんなつもり、なくて・・・ッ!!」
綾香「ふ、ふざけて・・・!! ちょっと軽く押しただけなの・・・ッ!!」
香穂「・・・?」
綾香「ちょっとビビらせてやるつもりで・・・ッ!! ま、まさか本当に──────」
綾香「───本当に落ちて死ぬなんて思わなくて!!」
香穂「・・・・・・!!!!」
綾香「私は悪くない・・・ 悪いのは市村さんと一ノ瀬さんよ!!────」

〇学校の屋上
妃奈「───あんたさぁ、目障りなんだよね」
妃奈「別にあんたがいなくても誰も困らないからさ ────そこから飛び降りたら?」
楓「・・・や、やめて・・・ 本当に、危ないから・・・」
綾香「・・・なによ、ちょっと柵の向こう側に立たせてるだけじゃない」
綾香「高所恐怖症でもないでしょ? それくらい平気なんじゃないの?」
楓「で、でも・・・ ここから落ちたら、私・・・」
美月「あははッ、可哀想な楓ちゃん ・・・そんなに落ちるのが怖い?」
美月「ちゃんと掴まっていれば落ちないわよ ・・・ね、少し押してあげたら?」
妃奈「へぇ、いいじゃんそれ、面白そう ・・・ほら来栖、やるわよ」
楓「ちょ・・・本当にやめてったら・・・!!」
妃奈「なによ、ごちゃごちゃ文句言わないでよね」
綾香「掴まってれば落ちないって言ったでしょ ほら──────」
楓「あ、──────────」

〇見晴らしのいい公園
凛「・・・嘘・・・そんなの・・・」
凛「・・・じゃあ・・・楓ちゃんは・・・ 自殺じゃ、なくて・・・」
香穂「・・・そう、殺されたの、あいつらに」
香穂「あいつらは焦った──────」

〇黒
妃奈「───ちょっと、どうすんのよ・・・!?」
綾香「さすがに、まずいよこれ・・・ 私たち警察に捕まっちゃう・・・!!」
美月「・・・・・・・・・・・・」
妃奈「あんたのせいよ、来栖!! あんたが強く押しすぎたから・・・!!」
綾香「な・・・市村さんだって押したでしょ!? 私のせいにしないでよ・・・!!」
美月「・・・落ち着いて、二人とも」
美月「このことは、私たちしか知らないのよ ・・・バレないようにすればいいじゃない」
妃奈「はぁ?どうするっていうのよ・・・!?」
美月「・・・自殺だと思わせればいいでしょう?」
美月「靴を屋上に揃えておいて、そこに遺書でも作っておいておけば───」
美月「きっとみんな、自殺だと思うでしょ?」
綾香「で、でも・・・ 私たちがいじめてたこと、バレたら・・・」
美月「・・・ねえ、市村さんのお父様って、たしか議員だったわよね?」
妃奈「・・・そ、そうだけど・・・」
美月「・・・まさか、娘がいじめをしていて そのせいで相手が死んだなんてこと」
美月「・・・世間に知られたくないはずよね?」
妃奈「・・・ッ・・・!!」
美月「私たちはただ、必死に訴えればいいわよ」
美月「『いじめなんてしてない』 ・・・『こんなことになって悲しい』って」
美月「泣く演技でもすれば、先生なんて騙されるわ だってみんな、馬鹿だもの──────」

〇見晴らしのいい公園
凛「・・・・・・そん、な・・・・・・」
香穂「・・・誰一人、楓への謝罪なんて一言も口にしなかった」
香穂「『自分は悪くない』・・・そればっかり」
香穂「反省する気も、悔やむ気もなく・・・ 自分のことしか考えてないようなやつら」
香穂「だったら、同じ目に遭わせてやればいい ・・・そう思ったの」
香穂「楓が味わった苦しみを、あいつらにも味わわせてやったの」
香穂「・・・死んでやっと、あいつらも分かったんじゃない?」
凛「・・・・・・香穂・・・ちゃん・・・・・・」
香穂「・・・ねえ、誰が悪いの?」
香穂「あいつら?学校?先生たち?」
香穂「私?・・・それとも、楓?」
凛「・・・・・・・・・・・・・・・」
  そこへ、誰かが駆けてくる足音が聞こえた。
蘭「───岩崎さん・・・!!」
凛「・・・鈴原さん・・・」
今井「・・・! 相澤さん・・・!!」
「・・・・・・・・・・・・」
香穂「・・・・・・!? なんで、先生たちが────」
凛「・・・ごめん、香穂ちゃん」
凛「私が鈴原さんに頼んで、呼んでもらったの」
凛「・・・今の話、先生たちにも聞いてほしくて」
香穂「・・・・・・・・・・・・」
蘭「・・・相澤さん」
香穂「・・・・・・」
蘭「・・・最初から、全部知ってたんだね」
蘭「楓ちゃんのいじめのことも・・・ 一ノ瀬がいじめに加担してたことも」
蘭「知ってたうえで・・・あたしに聞いたの?」
香穂「・・・そうだよ 鈴原さんがどこまで知ってるのか────」
香穂「──どう思ってたのか、知りたかったから」
蘭「・・・・・・」
蘭「・・・相澤さん、もうやめよう」
蘭「復讐は・・・なんにも生まないよ」
香穂「・・・そんなの、分かってる」
香穂「何か生みたかったんじゃない ただ、奪われた分を奪い返しただけだよ」
浅川「・・・あ、相澤さ──────」
香穂「───全部、あなたたちのせいでしょ!!!!」
浅川「ひっ・・・・・・!?」
香穂「自分たちの責任を問われたくないからって 真相を捻じ曲げて・・・!!!!」
香穂「楓や私たちに、全く向き合わなかった!! それがどれだけ私たちを苦しめたか・・・!!」
香穂「あなたたちには分からないよね・・・!?」
浅川「・・・う、うぅ・・・!!」
久保田「・・・本当に、すまなかった」
久保田「何もかも全て、我々の間違いだった ・・・君たちを、傷付けてしまっ────」
香穂「───謝られたって、楓は帰ってこない」
  そう言うと香穂は──────
  ───懐からカッターナイフを取り出した。
「・・・・・・!?」
今井「相澤さん・・・!? 一体何を──────」
香穂「・・・やることは全部やった」
香穂「あとは私が────」
香穂「───楓のところに、行くだけだから」
凛「香穂ちゃん!!!!だめ!!!!!!」
今井「二人とも離れて!!!! 相澤さ──────」
「・・・・・・・・・!!」
「・・・・・・・・・!!」
今井「・・・・・・・・・」
香穂「・・・・・・え?」
  カッターナイフが香穂の肌に届く前に
小野「・・・ッ・・・」
  ──小野の手が、その刃をしっかりと握っていた。
香穂「・・・小野、先生・・・?」
小野「・・・相澤さん、カッターを離しなさい」
香穂「・・・先生、血が・・・」
小野「私のことはいい ・・・手を離しなさい」
香穂「・・・なんで・・・」
小野「・・・謝って済むことじゃない 分かってるんだ、君の言う通りで────」
小野「───それでも、言わせてほしい」
小野「・・・すまなかった」
香穂「・・・・・・・・・・・・」
小野「松山さんと、キミの苦しみに気付けなかった」
小野「キミに、こんなことをさせてしまった」
小野「・・・本当に、申し訳なかった」
香穂「・・・・・・・・・・・・」
今井「・・・相澤さん」
今井「もし相澤さんが、自分で自分の命を絶つようなことをしてしまったら────」
今井「───きっと、松山さんも、あなたたちのご両親も・・・悲しむし、苦しむことになる」
今井「あなたが味わった苦しみを、他の人に味わわせたらいけないわ」
香穂「・・・・・・・・・・・・」
今井「・・・そしてね どんな理由があってたとしても────」
今井「──人の命を奪うということは、重いこと」
今井「それはあなたが、一番分かっているはず」
今井「あなたは生きて、償わなくちゃいけないわ」
香穂「・・・・・・・・・・・・」
  香穂の手から、カッターが滑り落ちた。
香穂「・・・私・・・間違ってた・・・?」
香穂「・・・どうして・・・?」
香穂「どうして・・・ 楓は死ななくちゃいけなかったの・・・?」
凛「・・・香穂ちゃん・・・」
凛「・・・ごめんなさい・・・」
香穂「・・・なんで、謝るの」
香穂「凛ちゃんは・・・ 何も、知らなかったんでしょ」
凛「・・・私、なんにも出来なかったから」
凛「ずっと、一緒にいたのに・・・」
凛「友達なのに・・・ 何も、気付けなかった・・・」
凛「・・・ごめんね・・・」
香穂「・・・・・・・・・・・・」
香穂「・・・凛・・・ちゃん・・・」
香穂「・・・・・・・・・・・・・・・」
香穂「・・・ごめんなさい・・・──────」

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