ペルソナの微笑

鳳条

エピローグ(脚本)

ペルソナの微笑

鳳条

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ペルソナの微笑
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〇美術室
  数日後───
凛「・・・・・・」
  凛は静まり返る美術室で、一人黙々と絵を描いていた。
結衣「───凛ちゃん・・・」
凛「・・・あ、結衣ちゃん!金子さん!」
凛「お疲れ様〜! 金子さん、部活は?」
葵「こっちはもう引退しちゃったから 今日は結衣の付き添いで」
凛「そうだったんだー! せっかくだし金子さんも描いてみる?なんて」
凛「コンクールも近いし、頑張ろうね! 結衣ちゃん!」
結衣「・・・凛ちゃん・・・」
葵「・・・岩崎さん」
葵「辛かったら、無理に笑わなくてもいいよ」
凛「・・・・・・・・・」
凛「・・・ごめん・・・ありがとう・・・」
凛「・・・・・・・・・」
凛「・・・ギリギリまで、迷ったんだ」
凛「香穂ちゃんに、本当のことを確かめるかどうかって」
凛「本当に香穂ちゃんが犯人だったら・・・ きっとまた、たくさんの人が傷付く」
凛「・・・おばあちゃんの顔も、浮かんだし」
凛「だから、これで良かったのか・・・ 正しかったのか、分かんないんだ・・・」
結衣「・・・きっと、良かったんだと思う」
結衣「香穂ちゃんも・・・ 長く苦しまなくて済んだんじゃないかな」
葵「うん・・・私も、そう思うよ」
凛「・・・そっか・・・」
葵「・・・そういえば 佐々木さんが私に連絡をくれて」
葵「松山さんのこと、話してくれたんだ」
結衣「・・・え・・・?」
凛「佐々木さんが・・・?」
葵「うん────」

〇可愛い部屋
桃「───本当は、市村さんにいじめられるのは」
桃「・・・私だったはずなんです」
葵「・・・どういうこと?」
桃「・・・私、昔はすごく、地味で暗くて」
桃「話すのも得意じゃなくて・・・ いつもオドオドしていて」
桃「市村さんの、標的にされたんです」
桃「でも、その時────」

〇教室
楓「───ねぇ、そういうのよくないよ」
楓「嫌がってるよ、やめてあげて」
桃「・・・・・・・・・・・・」

〇可愛い部屋
桃「───それから、市村さんの標的は、松山さんになったんです」
桃「『自分に楯突くなんて生意気、許せない』 ・・・市村さんはそう言ってました」
桃「私は・・・自分がいじめられない代わりに パシリとして市村さんの言うことを聞いて」
桃「市村さんの機嫌を損ねないように・・・ 顔色を伺いながら、一緒にいました」
桃「私は、自分のせいで松山さんがいじめられているのに────」
桃「───それを助けもせず、見てました」
桃「自分がいじめられたくないから・・・ 巻き込まれたくないからって・・・」
桃「私は・・・自分のことしか、考えてなくて」
葵「・・・佐々木さん・・・」
桃「・・・だからきっと、次は私が死ぬんです」
桃「私も、市村さんみたいに・・・」
葵「・・・それを、どうして私に?」
桃「・・・どうして、でしょう・・・」
桃「・・・誰かに話して・・・楽になりたかったのかもしれないです」
桃「もし、私が死んだとしても・・・ 誰かが真実を知ってくれていれば」
桃「それだけでもって・・・そう思って・・・」
桃「市村さんを恐れずに正しいことを言った金子さんになら、話せるかなって」
桃「・・・気が付いたら、連絡してました」
葵「・・・そっか・・・」
葵「・・・ありがとう、話してくれて」
桃「・・・ごめんなさい・・・」
桃「結局私は・・・自分のことばかり────」

〇美術室
結衣「・・・そう、だったんだ・・・」
凛「・・・・・・・・・」
葵「学校は第三者委員会を立ち上げて、もう一度松山さんのことを調査するって公表した」
葵「多分佐々木さんは・・・ 今の話を、大人に話してくれると思う」
凛「・・・そっか」
  その時、美術室のドアが開いた。
蘭「・・・・・・」
凛「・・・鈴原さん!?」
蘭「・・・急に、ごめん」
蘭「なんか・・・岩崎さん、大丈夫かなって」
凛「・・・あ・・・」
凛「・・・ごめん、みんなに心配かけて」
蘭「ううん、そんなの気にしないで あたしが気になって来ただけなんだから」
葵「・・・先生に連絡してくれたの、鈴原さんだって聞いた」
葵「ありがとう ・・・って言葉が合ってるか分からないけど」
蘭「ううん・・・ あたしは出来ることをしただけだよ」
蘭「楓ちゃんのときは、何も出来なかったからさ」
「・・・・・・・・・」
蘭「・・・あ、そうだ」
蘭「あのさ・・・ 相澤さんが描いてた絵、見てもいい?」
凛「・・・うん、もちろん」
  凛は、香穂の描きかけの絵を蘭に見せた。
蘭「・・・・・・」
結衣「・・・なんだか、改めて見ると────」
結衣「───香穂ちゃんの絵・・・ 楓ちゃんの絵と雰囲気が似てる気がする」
蘭「・・・うん、あたしも同じこと思った」
蘭「なんか・・・懐かしくなるよね」
蘭「・・・・・・・・・」
凛「香穂ちゃんと楓ちゃん、もし二人とも美術部にいたら」
凛「二人で、一緒に絵描いたりしたのかな・・・」
「・・・・・・・・・」
蘭「そういえば・・・もしかしたらね」
蘭「小野先生は・・・ 香穂ちゃんと楓ちゃんが双子だってこと」
蘭「なんとなく、気付いてたのかもしれない」
蘭「あたしが電話で知らせたとき・・・ なんとなく『やっぱり』って感じだったから」
結衣「二卵生でも、双子だから・・・ 雰囲気とか似てたのかな・・・」
凛「もしかして、佐々木さんが廊下ですれ違ったときに座り込んじゃったのも・・・」
凛「香穂ちゃんに、楓ちゃんの面影を見たからなのかな・・・?」
蘭「・・・それは、あるかもね」
  4人は香穂の絵をじっと見つめる。
凛「・・・・・・」

〇見晴らしのいい公園
香穂「────・・・凛ちゃん」
凛「・・・なに、香穂ちゃん」
香穂「あのね・・・」
香穂「・・・『楓の存在を、美術部から消したくない』って凛ちゃんが言ってくれたこと」
香穂「私・・・本当に嬉しかったんだ」
凛「・・・・・・・・・」
香穂「・・・ありがとう、凛ちゃん」
香穂「楓のこと・・・ ずっと大切に思っててくれて────」

〇美術室
凛「・・・・・・」
凛「・・・そうだ」
  凛は立ち上がり、美術室の奥から、1枚のキャンバスを持ってきた。
結衣「・・・凛ちゃん、それ・・・」
凛「・・・うん 楓ちゃんが描いてた、絵」
  凛は美術室の端に、楓の絵と香穂の絵を並べて置いた。
凛「・・・・・・・・・」
凛「・・・これさ、ずっとここに残しておいてもらおうよ」
凛「いつか、香穂ちゃんが罪を償って・・・ また会えた時に」
凛「完成まで、描ききってもらいたいから」
結衣「・・・うん、そうだね」
結衣「残しておいてもらおう・・・!」
蘭「・・・あのさ、岩崎さん、佐藤さん」
蘭「あたし・・・ 今からでも、美術部入ってもいいかな?」
結衣「・・・え・・・!?」
凛「す、鈴原さん・・・!?」
蘭「なんかさ、見てたら描きたくなっちゃった」
蘭「まあ、入ってすぐ引退になっちゃうけどさ」
蘭「屋上でだらだらゲームしてるよりは、部活やってる方が有意義だもん」
凛「もちろん・・・大歓迎だよ!!」
結衣「う、うん・・・私も・・・!」
蘭「・・・へへ、ありがと」
葵「・・・あ、見て」
葵「今・・・夕陽がすごく綺麗」
結衣「わぁ・・・本当だ・・・!」
蘭「ふふ、これを絵に描いたらいい感じだね」
凛「わぁ・・・すっごく綺麗・・・!」
凛「・・・・・・・・・」
凛(・・・本当に、色んなことがあって───)
凛(正直、気持ちの整理はまだつかないけど)
凛(でも・・・ 絶対に何があっても、この事は忘れない)
凛(楓ちゃんのことも、香穂ちゃんのことも ・・・絶対に──────)

〇黒
  『ペルソナの微笑』
  ─── 𝑒𝑛𝑑.

コメント

  • 読了致しました。
    まさか香穂が楓と双子だったとは。
    同級生や先生。誰か1人でもいじめに向き合っていたら結果は変わっていたと思うと胸が痛いですね……。

    エピローグで美術部に飾られた絵。双子が学校に通っていた証が風化しない事を切に願います。

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