第17話(脚本)
〇教室
───3年B組
結衣「・・・どうして・・・一ノ瀬さんが・・・」
葵「・・・結衣・・・」
〇広い廊下
一花「───私ね、分かるんだ」
一花「次に、誰が死ぬのか」
一花「化けの皮も、もうすぐ剥がれるね───」
〇教室
葵(・・・あの言葉が、もし本当だったとしたら)
葵(三浦さんは、一ノ瀬さんが亡くなることを 知ってた・・・?)
生徒「───ねえ、あんたが殺したんじゃないの?」
「・・・・・・・・・!」
生徒「来栖さんも市村さんも一ノ瀬さんも・・・ みんなあんたが殺したんじゃないの!?」
生徒「ねえ──────三浦一花!!!!」
一花「・・・・・・・・・・・・」
生徒「・・・だって、市村さんが死んでから、様子がおかしかったし・・・」
生徒「来栖さんと市村さんを殺したこと、一ノ瀬さんにバレたから殺したんじゃないの!?」
一花「・・・・・・・・・・・・」
結衣「・・・み、三浦さん・・・」
一花「・・・・・・・・・・・・」
一花は黙って教室を出ていく。
生徒「ほら、やっぱり三浦だよ! 三浦が3人とも殺したんだよ!」
生徒「もしかして・・・松山さんのことも、三浦が殺したんじゃないの・・・?」
生徒「その罪を擦り付けるために3人とも────」
葵「───証拠もないのに、人を殺人犯呼ばわりするのやめたら?」
葵「聞いてて気分悪い」
生徒「・・・あ・・・」
生徒「・・・・・・・・・」
結衣「・・・葵ちゃん・・・」
葵「・・・・・・」
〇広い廊下
昼休み───
今井「───相澤さん、岩崎さん」
香穂「・・・はい」
今井「呼び止めてごめんなさい ・・・ちょっと、聞きたいことがあって」
凛「・・・なんですか?」
今井「あのね・・・一ノ瀬さんのことなんだけど」
今井「最近の一ノ瀬さんに、何か変わったことは なかった・・・?」
今井「例えば、何かに悩んでいる様子だったとか、体調を崩していたとか・・・」
凛「・・・変わったこと・・・」
香穂「・・・うーん・・・」
香穂「特には・・・なかったと思います」
今井「・・・そう・・・」
凛「・・・ほんとに、分からないです・・・」
凛「なんで美月ちゃん・・・ 死んじゃったんだろう・・・」
凛「・・・なんで・・・」
香穂「凛ちゃん・・・」
今井「・・・・・・・・・」
今井「ごめんなさい・・・ 辛い気持ちにさせてしまって・・・」
凛「・・・・・・ッ・・・」
今井「・・・岩崎さん、少し、保健室で休む? 今は無理をしない方がいいわ・・・」
香穂「・・・私、一緒に行きます」
今井「・・・ありがとう、相澤さん お願いね」
〇屋上の入口
その頃───
一花「・・・・・・」
一花は、階段の途中に座り込んでいた。
一花「・・・・・・・・・」
葵「────三浦さん」
一花「・・・・・・!」
葵「・・・ここにいたんだ なかなか見つからないから探したよ」
一花「・・・・・・」
葵「先に言っておくけど、私はあなたを責めるつもりはない」
葵「あなたが3人を殺したとは思ってない」
一花「・・・・・・」
葵「ただ・・・教えてほしい」
葵「何か、知ってるんだよね?」
葵「今回のこと・・・そして」
葵「亡くなった、松山さんのことも」
一花「・・・・・・」
一花は葵の顔をじっと見つめ、暫く考えていた。
一花「・・・なんで」
一花「なんで、私が殺したんじゃないって言いきれるの?」
一花「・・・本当に、私が殺したかもしれないよ」
葵「あなたが本当に犯人なんだったら・・・ そもそも、そんなこと言わないと思うよ」
一花「・・・・・・」
一花「・・・じゃあ、誰が犯人だと思うの?」
葵「それは分からない ・・・本当に自殺の可能性だってあるし」
葵「私にも今、何も分からないの ・・・だからあなたに教えてほしい」
葵「知っていることを、話してほしい」
一花「・・・・・・」
一花「・・・ふぅ・・・」
一花「・・・怒ってるんだよ、松山さんが」
葵「・・・え?」
一花「・・・あの3人にいじめられて死んだ松山さんが、怒って復讐してるんだよ」
葵「・・・どういうこと?」
一花「そもそも、今回の噂・・・”松山さんの呪いだ”って話をし始めたのは」
一花「松山さんが亡くなった年、彼女と同じクラスだった子たち・・・つまり」
一花「松山さんが、来栖と市村にいじめられてたことを知ってる子たちなんだよ」
葵「・・・いじめは、本当だったんだ」
一花「・・・初めは、来栖の嫌がらせだったと思う」
一花「ずっと学年1位でいたかった来栖は、それを松山さんに取られたのが気に食わなくて」
一花「机を汚したり、ロッカーを荒らしたり ・・・陰湿な嫌がらせを始めた」
一花「佐藤さんがされてたのと同じような、ね」
葵「・・・なんで知ってるの?」
一花「・・・松山さんと、来栖が話してるのを見た」
〇教室
楓「───ねえ、どうしてこんなことするの?」
楓「私、嫌だよ・・・やめてよ」
綾香「・・・・・・・・・」
楓「・・・私が何かしちゃったなら言ってほしい」
楓「こんなふうに、机やロッカーを汚されたり、教科書をボロボロにされたり・・・」
楓「・・・そういうことされるのは、嫌だよ」
綾香「・・・なんでよ・・・」
綾香「私が悪いんじゃない! あんたが・・・あんたが悪いんでしょ!」
綾香「1位は私のものだったのに・・・! あんたがそれを横取りするから!」
綾香「あんたなんかが1位なんて許さないから!」
楓「・・・・・・・・・」
〇屋上の入口
一花「・・・その後どうなったのかは知らない」
一花「でも・・・松山さんの名前が学年1位の欄から消えたのだけは分かった」
一花「そして・・・ それを見て、来栖がニヤついてたのも」
葵「・・・・・・」
一花「市村とは・・・どんなきっかけがあったのかは分からない」
一花「ただ急に、市村の松山さんへの態度が冷たくなって・・・」
一花「教室でわざと聞こえるように悪口を言ったり 荷物を隠したり」
一花「私が、されてたようなことを・・・ 松山さんがされてた」
一花「でも松山さんは・・・ 気にしてないって顔をして耐えてた」
一花「それが尚更・・・ 市村は気に食わなかったんだと思う」
一花「私は人が見てないところで、市村に暴力を振るわれたり、大事な本を捨てられたり」
一花「結構ひどいことをされた」
一花「だから多分・・・松山さんも同じ」
葵「つまり・・・来栖さんも市村さんも、人が見てないところで松山さんをいじめてたんだ」
一花「そういうこと・・・まあ、それでも何人かは目撃者がいるわけだけどね」
葵「・・・一ノ瀬さんは?」
葵「一ノ瀬さんはどうして亡くなったの? 三浦さん、こうなること分かってたんでしょ」
一花「・・・・・・」
一花「・・・あの子がいじめに加担してたのかは、私には分からない」
一花「でも、来栖が死んだ時・・・ 廊下で市村と一ノ瀬さんが話してた」
〇広い廊下
妃奈「・・・ねえ、本当に大丈夫なのよね?」
美月「・・・大丈夫って、何が?」
妃奈「とぼけないでよ! ・・・あの時のことよ!」
妃奈「来栖が死ぬ前日、私に電話してきたのよ」
妃奈「『松山楓に呼び出された』って!」
美月「・・・へぇ・・・」
妃奈「まさか、バレたわけじゃないわよね?」
妃奈「あの時のこと、ちゃんとあんたが────」
美月「───ふふ、落ち着いて?市村さん」
美月「亡くなった人が、生きてる人間を呼び出せるわけないでしょう?」
妃奈「そんなの分かってるわよ・・・!! そうじゃなくて、もしも──────」
美月「それに・・・市村さん」
美月「”あの時のこと”って・・・なんのこと?」
妃奈「・・・ッ・・・!!」
妃奈「あんたねぇ・・・!!」
美月「・・・ねぇ、市村さん」
美月「必要最低限の用事以外、お互いに声をかけない、関わらないっていう約束でしょう?」
妃奈「・・・ッ・・・」
美月「ごめんなさい、私は用事があるから」
美月「これで失礼するわね────それじゃ」
妃奈「・・・・・・・・・」
妃奈「・・・ふざけないでよ・・・」
妃奈「ふざけないでよ、あの悪魔・・・ッ!!───」
〇屋上の入口
一花「・・・だから多分、何かしら関わっているんだとは思う」
一花「どう関わってたのか、私には分からないけど」
葵「・・・そう・・・」
一花「だからこれは、呪いなんだよ いじめられて自殺した、松山さんのね」
一花「そして次は──────」
一花「────きっと、私が死ぬ」
葵「・・・・・・え?」
一花「見てたのに、気付いてたのに ・・・私は何もしなかった」
一花「自分が巻き込まれるのが怖くて ずっと、知らないふりをしてた」
一花「自分がやられて、初めて気付いたんだ───」
一花「───誰も助けてくれないって、こんなに辛いことなんだって」
葵「・・・三浦さん・・・」
一花「でも、松山さんを助けなかった私が、自分がやられたら誰かに助けてもらいたいなんて」
一花「そんなの・・・許されない気がした」
一花「だから、我慢した 市村に何をされても耐えた」
一花「これが・・・松山さんの味わった苦痛だって」
葵「・・・・・・」
一花「でも私は結局・・・耐えきれなかった」
一花「耐えきれなくて、頭がおかしくなりそうで ・・・ううん、きっとおかしくなってた」
一花「だってさ・・・人が亡くなったっていうのに 笑いが込み上げてくるなんておかしいでしょ」
葵「・・・・・・」
一花「・・・次は私が死ぬ番なんだ」
一花「きっと松山さんが、怒って殺しに来るんだよ」
葵「・・・・・・」
〇広い廊下
その頃───
香穂(───私だけ戻ってきちゃったけど・・・ 凛ちゃん、大丈夫かな・・・)
香穂(少し休んで、落ち着くといいけど────)
小野「───相澤さん?」
香穂「え?・・・あ、小野先生」
小野「・・・・・・・・・」
香穂(・・・? なんだろう、じっとこっちを見て・・・)
小野「・・・相澤さん」
香穂「はい・・・?」
小野「・・・キミは、もしかして──────」
小野「・・・・・・・・・・・・・・・」
香穂「・・・え? なん、ですか・・・?」
小野「・・・いや、すまない やっぱりなんでもない」
香穂「・・・・・・?」
小野「たしか・・・美術部に入ったんだよな」
小野「今はコンクールに向けて忙しいんだろう」
小野「転校してきて、いろんなことがあって大変だと思うが・・・頑張ってな」
香穂「は、はい・・・ ありがとう、ございます・・・」
去っていく小野の後ろ姿を、香穂は首を傾げながら見送る。
香穂(・・・? なんだったんだろう・・・──────)