第15話(脚本)
〇広い廊下
翌日───
───昼休み
凛「───香穂ちゃん、美月ちゃん! 食堂行こー!」
香穂「うん、行こう」
美月「・・・あら?」
美月は、前から歩いてくる生徒に気付く。
下を向き、ふらふらと歩いてくるその生徒は
───B組の佐々木桃だった。
桃「・・・・・・・・・」
凛「・・・佐々木さん、学校来れたんだね」
美月「・・・でも、すごく顔色が悪いわ」
桃「・・・・・・ん?」
桃はふと、3人に気付いて顔を上げた。
美月「あ・・・──────」
3人と目が合った途端、
桃「・・・・・・あ・・・・・・」
桃「・・・あ・・・うぅ・・・!!」
桃は一瞬驚いたような顔をした後、頭を抱えてその場に座り込んでしまった。
香穂「・・・え・・・!?」
凛「さ、佐々木さん・・・!?」
動けなくなっている桃に、3人は慌てて駆け寄る。
香穂「ど、どうしたの、佐々木さん・・・!?」
凛「大丈夫!? 具合悪いの・・・!?」
桃「・・・違うの・・・違うの・・・ 私が・・・私が悪いの・・・!!」
桃「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ ・・・ごめんなさいごめんなさい・・・!!」
凛「・・・な、何に謝ってるんだろう・・・」
香穂「私たちの声、聞こえてなさそうだよ・・・」
美月「先生を呼んだ方がいいかしら────」
今井「───あなたたち、どうしたの・・・!?」
通りがかった今井が、尋常でない4人の様子に気付き、声をかける。
香穂「あ・・・今井先生・・・!」
凛「あの、佐々木さんが・・・ 座り込んじゃって・・・!」
今井「佐々木さん!? 大丈夫・・・!?」
桃「・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい」
今井「・・・ひとまず、保健室に行きましょうか」
今井「立てる?佐々木さん」
今井は桃を支え、保健室へと連れて行く。
その後ろ姿を、香穂たち3人は困惑しながら見つめていた。
桃「・・・ごめんなさい・・・」
桃「・・・お願い・・・殺さないで────」
〇おしゃれな食堂
食堂にて───
凛「・・・大丈夫だったかな、佐々木さん」
香穂「心配だね・・・ なんだか、パニックみたいになってたし」
美月「・・・精神的な負担が大きいのね、きっと」
凛「市村さんが亡くなったこと、ショックだったんだろうなぁ・・・」
香穂「・・・・・・」
美月「・・・ごめんなさい ちょっと御手洗に行ってくるわね」
香穂「うん、分かった 行ってらっしゃい」
〇女子トイレ
美月「・・・・・・」
美月が手を洗っていると───
蘭「・・・・・・」
美月「───あら?鈴原さん」
蘭「・・・・・・」
美月「今日は学校に来てたのね」
蘭「・・・・・・」
蘭は美月の言葉を無視して、通り過ぎようとする。
美月「・・・鈴原さん、今井先生が心配してたわ」
美月「全然授業に来られてないから・・・ 単位数とかも、そろそろ危ないかもって」
美月「余計なお世話かもしれないけれど・・・ 私たちも心配してるのよ」
蘭「・・・・・・・・・」
美月「鈴原さんが教室に来てくれるの、待ってるわ」
美月「だから──────」
蘭「────悪いけど」
蘭「あたしは騙されないからね」
美月「・・・・・・・・・」
蘭「あんたみたいなのを、悪魔っていうんだよ」
そう言って蘭はトイレを出ていってしまう。
美月「・・・・・・」
美月「・・・はぁ・・・」
美月「何の話かしら? ・・・変な妄想はやめてほしいわね」
美月「本当に・・・最近みんな変だわ」
美月「・・・・・・・・・」
〇広い廊下
放課後───
今井「───岩崎さん、相澤さん」
凛「あ、今井先生!」
今井「さっきはありがとう」
今井「佐々木さん、あの後少し落ち着いて・・・ 今日は早退したわ」
香穂「そうだったんですね・・・」
凛「せっかく学校来られたのに・・・」
凛「私たちが声かけちゃったの、まずかったかな・・・?」
今井「佐々木さんは、まだ精神的に不安定なところがあって、パニックになりやすくなってるの」
今井「だから、あなたたちが悪いことをしたわけではないわ・・・気にしないでね」
今井「一ノ瀬さんにも、そう伝えておいてくれる?」
香穂「はい・・・分かりました」
〇学校の昇降口
凛「・・・辛そうだね、佐々木さん・・・」
香穂「うん・・・」
凛「美月ちゃんも、佐々木さんのこと心配してたし」
凛「今日は先に帰っちゃったから、明日会ったら今井先生の言ってたこと、伝えようね」
香穂「うん、そうだね」
凛「じゃ、帰ろっか」
香穂「────あ!」
凛「ん?どうしたの?」
香穂「ごめん、教室に忘れ物しちゃった ・・・ちょっと取ってくるね!」
凛「おっけー!待ってるね!」
香穂「ありがとう、すぐ戻るね・・・!」
〇教室
───3年A組
香穂「──────あ・・・」
香穂が教室に戻ると──
蘭「・・・・・・!」
席に座り、何かを描いている蘭がいた。
香穂「あ・・・鈴原さん・・・」
蘭「・・・びっくりした・・・ ・・・もうみんな帰ったと思ってたから」
香穂「あ、ご、ごめんね・・・驚かせて・・・」
蘭「・・・別に、平気だよ それより、どうしたの?」
香穂「ちょっと、忘れ物しちゃって・・・」
蘭「そっか・・・」
蘭は再び、何かを描き始める。
香穂は忘れ物を回収するため、ロッカーへ向かう。
香穂(・・・あ、あった・・・)
香穂(良かった・・・ ロッカーに家の鍵忘れていくところだった)
香穂「・・・あ、じゃあ・・・鈴原さん 私は帰るね────」
声をかけようとしたとき、ふと蘭の描いているものが香穂の目に入ってきた。
それは、スケッチブックに色鉛筆で描かれた風景画のようなものだった。
香穂「え・・・鈴原さん、それ・・・」
蘭「あ、やば・・・バレた」
香穂「え、なんで隠しちゃうの・・・!?」
蘭「いや・・・見られんの恥ずかしいし」
香穂「でも・・・そんなに上手いのに・・・」
蘭「・・・う、上手くはないよ・・・」
香穂「そんなことない、すっごく上手だよ」
香穂「・・・美術部に入ってくれたらいいのに」
蘭「・・・美術部・・・か」
蘭「・・・・・・」
蘭「・・・あの子がまだいるなら、入ったかもね」
香穂「え・・・? あの子って・・・?」
蘭「ねえ、相澤さん」
蘭「・・・一ノ瀬と、一緒にいないほうがいいよ」
香穂「・・・え? どういうこと・・・?」
蘭「あいつは────」
凛「───香穂ちゃーん! 忘れ物見つかったー?」
香穂「あ、凛ちゃん・・・」
凛「もう、あんまり戻ってくるの遅いから心配しちゃったよ〜」
香穂「あ、ごめんね・・・」
蘭「・・・・・・」
凛「・・・ってあれ、鈴原さん!?」
凛「あ、ご、ごめん、急に大声出して・・・」
蘭「・・・ううん、平気」
蘭「・・・じゃ、またね」
蘭はスケッチブックを抱え、教室を出る。
凛「・・・何か話してたの?」
香穂「あ・・・ううん、なんでも・・・」
香穂「・・・・・・・・・」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
一ノ瀬家───
───美月の部屋
美月は帰宅すると、スマートフォンのメッセージ画面を開いた。
それは───市村妃奈とのやり取り画面。
美月「・・・・・・・・・・・・」
表示されている最後のメッセージは──
妃奈からの『全部お前のせいだ』という一言だった。
美月「・・・・・・」
美月「・・・馬鹿みたい」
美月はなんの躊躇いもなく、妃奈とのメッセージ画面を、ルームごと消去した。
美月「・・・・・・どうしてよ」
〇黒
一花「──化けの皮も、もうすぐ剥がれるね」
蘭「──あんたみたいなのを悪魔って言うんだよ」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
美月「・・・どうして・・・どうしてなのよ・・・」
美月「なんで、そんな目で私を見るのよ・・・!!」
美月「私はいつだって完璧で優秀で!!」
美月「誰からも嫌われない、嫌われるわけない 100点満点の良い子でしょ!?」
美月「なのになんで・・・ なんで私が死ななきゃいけないのよ!?」
その手には───小さなメモのような紙切れが握られていた。
美月「どうして、私が──────」
〇黒
先生「──・・・それでは、後期の学級委員を決めたいと思います」
先生「やりたい人はいますか?・・・────」
生徒「──・・・推薦するなら、やっぱり美月ちゃんかな?」
生徒「しっかり者だし、前記も学級委員やってたもんね・・・──」
生徒「──・・・私は、楓ちゃんもいいんじゃないかなって思う!」
生徒「楓ちゃんも、明るくて優しいし・・・───」
美月「・・・・・・・・・・・・」
先生「──・・・それでは多数決の結果、学級委員は松山さんにお願いします・・・──」
楓「──・・・はい!頑張ります!」
美月「・・・・・・・・・・・・」
〇黒
楓「──・・・美月ちゃん!食堂行こっ!」
美月「・・・・・・・・・・・・」
???「────・・・どうして・・・?」
楓「───どうして、こんなことするの・・・?」
〇女の子の部屋(グッズ無し)
美月「・・・私は悪くない・・・」
美月「私は悪くない!! 悪いのは全部あの子よ・・・!!!!」
美月「あの子が・・・あの子が私よりキラキラして幸せそうに笑ってるから・・・!!!!」
美月の母「───美月、騒がしいですよ」
美月の母「どうかしたんですか?」
美月「・・・・・・・・・」
美月「・・・いいえ、なんでもありません、お母様」