第10話(脚本)
〇教室
翌日───
───3年B組
久保田「───じゃあこの問題、答えを・・・」
久保田「三浦一花、答えなさい」
三浦からの返答はなく、教室は静まり返る。
久保田「三浦? ・・・・・・ああ、そういえば」
久保田「今日は三浦は欠席だったか ・・・じゃあ市村妃奈、代わりに答えなさい」
妃奈(・・・はぁ?なんで私・・・?)
妃奈(やば、宿題やってきてないし・・・)
久保田「市村どうした?答えられないのか?」
妃奈「え、えーっと・・・・・・」
久保田「宿題はきちんとやってこいと、いつも言っているだろう」
久保田「全く・・・ もういい、代わりに中村───」
妃奈(・・・なんで私が怒られるのよ)
妃奈(あーあ・・・ 三浦が休んでるせいで・・・)
妃奈「・・・チッ・・・」
〇教室
昼休み───
───3年A組
香穂「───ちょっとトイレに行ってくるね 先に食堂行ってていいよ」
美月「分かったわ、行ってらっしゃい」
凛「待ってるから大丈夫だよ〜」
香穂「分かった、ありがとう」
〇広い廊下
香穂(・・・あれ?あそこにいるのって・・・)
香穂がB組の前を通りかかると、たった今登校してきたらしい、結衣の姿を見つけた。
香穂(・・・あ、結衣ちゃん、今日は来れたんだ)
〇教室
葵「おはよ、結衣」
結衣「・・・おはよう、葵ちゃん」
結衣「本当は、朝から登校するつもりだったんだけど・・・この時間になっちゃった・・・」
葵「いいんだよ、来れたんだから」
葵「少しずつ慣れていけばいいよ」
結衣「・・・うん・・・」
妃奈「──あーあ、なんか一気に教室の空気暗くなったんだけど」
妃奈「どっかの誰かさんが入って来たからかなぁ?」
結衣「・・・・・・!」
葵「・・・・・・」
妃奈「・・・ていうか、散々学校サボってたくせに今更来るってなんなのかしらねー」
妃奈「ずっと引きこもってればいいのに」
葵「・・・それ、誰に向かって言ってんの?」
妃奈「あんたの隣にいる佐藤ってやつに決まってるでしょ?」
葵「・・・あんたに色々言われる筋合いないんだけど」
妃奈「なによ、思ったこと言っただけじゃない」
葵「言っていいことと悪いことがあるって、分かんないわけ?」
妃奈「なんであんたがキレてんのよ 意味わかんないんだけど?」
妃奈「ていうか実際、そいつがいなくたって誰も困ってないじゃない」
妃奈「オドオドして暗いやつがいると教室の空気が重くなるのよ、迷惑なの分かる?」
葵「いい加減にしなよ ていうか────」
葵「私たちからしたら、あんたの方がよっぽど迷惑なんだけど」
妃奈「・・・はぁ? あんた、誰に向かって口きいてるのよ」
妃奈「マジでムカつくんだけど・・・!!」
そう言って妃奈は、机の上の筆箱を、葵に向かって投げつけた。
葵「・・・っ!」
妃奈「あー、ほんとイライラする・・・!」
妃奈「佐々木!食堂行くよ!」
桃「は、はい・・・!!」
教室を出て行く妃奈を、桃が慌てて追いかけていく。
〇広い廊下
香穂(・・・うわぁ・・・ 大丈夫かな、金子さんと結衣ちゃん────)
妃奈「───ちょっと、邪魔なんだけど」
香穂「え?あ・・・ご、ごめんなさ────」
妃奈「どいてよ」
香穂を押しのけるようにしながら、妃奈は食堂に向かう。
香穂「・・・こ、怖・・・」
結衣「───あ、香穂ちゃん・・・」
香穂「結衣ちゃん・・・!」
香穂「あ・・・今の、外から見えたんだけど・・・ 大丈夫・・・?」
結衣「・・・う、うん・・・大丈夫・・・」
結衣「市村さんは、いつもあんな感じだから・・・ もう慣れちゃってるから、平気・・・」
香穂「そ・・・そっか・・・」
香穂「あの・・・金子さん、も・・・大丈夫?」
葵「・・・私? 私はなんともないよ」
香穂「さっき、筆箱投げつけられてたから・・・」
葵「怪我もしてないし、全然平気」
葵「勝手にキレて物に当たるって子どもみたい あんなバカは相手にしなくていいよ」
香穂「・・・そっか」
香穂(・・・強いんだなぁ、金子さん・・・)
香穂「・・・あ、じゃあ私、食堂行くね」
結衣「う、うん・・・またあとでね・・・」
香穂「うん、部活でね」
〇一人部屋
三浦家───
─── 一花の部屋
一花「・・・・・・・・・」
一花は自分の机で、何かを書いている。
一花の母「─── 一花、体調はどう?」
一花「・・・大丈夫」
一花の母「そう? ・・・母さん、これから仕事に行くけど」
一花の母「熱が下がるまで、大人しく寝てなさいね なにかあったら連絡ちょうだい」
一花「・・・分かった、行ってらっしゃい」
母が家を出る音を聞きながら、一花は再び何かを書き始める。
一花「・・・・・・・・・」
一花は、手に握りしめた黒いボールペンで
クラス写真に写る市村妃奈の顔を、黒く、黒く、塗りつぶしていた。
一花「・・・・・・殺してやる」
一花「・・・殺してやる殺してやる殺してやる」
一花「絶対に・・・殺してやる──────」
〇野球のグラウンド
その頃───
───グラウンド
3年A組は、午後の体育の授業にて
バドミントンのため、ペア活動をしていた。
香穂(えーっと、私のペアは・・・)
蘭「───相澤、さん?」
香穂「あ、は、はい・・・!?」
蘭「・・・バドミントン、ペアだよね」
香穂「あ、うん・・・」
蘭「よろしく ・・・向こうでやろっか」
香穂「そ、そうだね・・・!」
香穂(鈴原さんと話すの、初めてかも・・・)
香穂(なんか、緊張するなぁ・・・)
〇野球のグラウンド
蘭「───行くよー」
蘭「ほいっ」
香穂「よーし・・・」
香穂「え、えいっ!」
香穂(・・・うわ、空振った・・・)
蘭「・・・・・・」
香穂「ご、ごめん、もう1回やるね・・・!」
香穂「えいっ!・・・あれ、当たってない・・・」
香穂「えいっ!・・・えいっ!・・・あれ・・・?」
蘭「・・・・・・」
香穂「ご、ごめん・・・ 私・・・運動苦手で・・・」
香穂「つ、次はちゃんと当てるから・・・」
蘭「・・・ふふ」
香穂「・・・え?」
蘭「・・・いいよ、焦んないで」
蘭「ゆっくりやろ ・・・当たるまで、練習付き合うし」
香穂「・・・あ、ありがとう・・・!」
香穂(・・・鈴原さんって、ちょっと怖い人かと思ってたけど)
香穂(優しい人、なのかも────)
〇広い廊下
放課後───
妃奈「・・・はぁ・・・」
妃奈「三浦で遊ぼうと思ったのに休みだし そのせいで久保田に怒られるし」
妃奈「ろくなことなかったな・・・ どいつもこいつもムカつくんだから」
桃「・・・妃奈さん、大丈夫ですか・・・?」
妃奈「うるさいな、今は1人がいいの」
妃奈「今日は帰り道ついてこなくていいから」
桃「わ、分かりました・・・ それじゃあ、私はここで失礼します・・・」
妃奈「・・・ふん」
〇学校の昇降口
妃奈「・・・学校ってストレス多すぎ」
妃奈「バカばっかりだし、ムカつくし ・・・なんにも思い通りにならないんだもの」
妃奈「家にいれば、パパとママがなんでもお願い聞いてくれるのに・・・」
妃奈「学校なんて、頭固い教師とか、地味で暗くて見ててムカつくやつとか」
妃奈「偉そうに私に説教してくるやつしか───」
〇黒
妃奈「──・・・あんた、見ててムカつくんだけど」
妃奈「マジでどっか行ってくれない? 教室の中で目障りなの分かんないの?」
???「・・・・・・ご、ごめんなさ──────」
???「───・・・ねえ、そういうのよくないよ」
妃奈「・・・はぁ・・・?」
楓「嫌がってるよ、やめてあげて────」
〇学校の昇降口
妃奈「・・・チッ・・・」
妃奈「・・・私は悪くないんだから 私のやることに文句言う方が悪いのよ・・・」
妃奈「・・・・・・」
妃奈「・・・あーあ、嫌なこと思い出しちゃった」
妃奈「家に帰ったら、ママにケーキでも買ってもらおうかな」
妃奈「────ん?」
妃奈は、下駄箱の中に紙切れが入っているのを見つける。
妃奈「・・・なによこれ、手紙?」
妃奈「えーっと──────」
妃奈「・・・・・・ッ!!」
文面に目を通す妃奈の顔が、青ざめていく。
妃奈「・・・・・・なによ、これ・・・・・・」
妃奈「・・・なんなのよ、なんでなのよ・・・!」
妃奈「・・・・・・・・・・・・」