ペルソナの微笑

鳳条

第6話(脚本)

ペルソナの微笑

鳳条

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〇広い廊下
  数日後───
  ───休み時間・廊下にて
  廊下には人だかりができている。
  生徒たちの目線の先には──定期テストの上位10名の氏名が張り出されていた。
生徒「───ねえすごいじゃん! 9位に入ってるよ!」
生徒「えへへ、嬉しい~! 今回は頑張ったんだ~!」
凛「───あ、美月ちゃんが2位だ! やっぱりさすが~!」
香穂「わあ、ほんとだ!すごいね、美月ちゃん!」
美月「ふふ、頑張って良かった」
凛「で、1位は────」
凛「───あー、やっぱり」
  1位の欄には「来栖綾香」の名前。
  その字をじっと眺めていたのは───
綾香「・・・・・・」
生徒「──また来栖さんが1位なんだね」
生徒「まあ、いつも勉強してるもんねー」
綾香「・・・ふふ」
綾香「まあ・・・この程度のテストで点数が取れないなんておかしいものね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
綾香「普通に勉強していたら取れる点数なのに ・・・逆にみんな、どう勉強してるんだか」
綾香「勉強法、教えてあげたいくらいね」
生徒「・・・ああいうこと言わなきゃいいのにね」
生徒「ほんとそれー なんでいっつも上から目線なんだろうね」
凛「・・・うわー・・・そうなるよね・・・」
「・・・・・・・・・」
綾香「・・・あれ?そういえば────」
綾香「前回1位だった佐藤さん ・・・名前がなくなってるじゃない」
綾香「まあ、最近学校に来てないみたいだし 勉強嫌になっちゃったのかしら」
綾香「あーあ、可哀想にね」
凛「・・・ッ・・・!! ちょっと────」
香穂「ま、待って! 落ち着いて凛ちゃん・・・!」
凛「だって・・・! あいつのせいで結衣ちゃんは───」
香穂「気持ちは分かるけど、今言ったらダメだよ 結衣ちゃんが・・・」
美月「二人とも、どうしたの? なにかあったの?」
凛「え、あ・・・えーっと・・・」
香穂「・・・・・・」
凛「う、ううん!なんでもない!」
美月「そう・・・?」
綾香「・・・ふふ・・・」
葵「・・・・・・・・・」

〇学校の屋上
  昼休み───
  ───屋上
  静かな屋上に、スマホのゲーム音が響く。
蘭「・・・・・・・・・」
蘭「・・・あ、やば、ミスった」
蘭「あーあ、ここまで来るの結構大変だったんだけどな・・・リトライするか」
今井「───ここにいたのね、鈴原さん」
蘭「・・・・・・」
今井「屋上は危ないから、ゲームをするなら他のところにした方がいいわ」
蘭「・・・別に、ここでいい」
蘭「教室・・・いたくないし」
今井「・・・・・・そう」
蘭「・・・・・・」
今井「・・・・・・」
今井「・・・ねえ、鈴原さん 何か悩みがあるの?」
今井「教室にいたくない理由とか、授業に出たくない理由とか・・・」
今井「もし、私に話してくれるなら・・・ 聞かせてくれないかしら」
今井「心配してるの、あなたのこと 話して少しでも楽になるなら──」
蘭「───何も」
今井「・・・え?」
蘭「何も、期待してないから ・・・先生たちにも、学校にも」
今井「・・・どうして?」
蘭「・・・・・・」
今井「ごめんなさい、私には本当に分からなくて ・・・何かしてしまったかしら?」
蘭「・・・・・・」
今井「鈴原さん────」
蘭「なんとも、思わないんでしょ、学校って」
今井「・・・・・・?」
蘭「別にさ、あたしが────」
蘭「あたしが、死んだとしたって ・・・学校って、何も感じないんでしょ」
今井「・・・鈴原さん・・・?」
蘭「・・・・・・」
今井「・・・ダメよ、そんなこと考えたら」
蘭「・・・別に、ほんとに死ぬなんて言ってないじゃん」
蘭「例えばの話だし」
今井「それでも、そんな話はするものじゃないわ」
今井「本当に、何かに悩んでいるなら ・・・抱え込まずに、話してほしい」
今井「私が嫌なら、私じゃなくてもいい ・・・誰でもいいから、話せる人に」
蘭「・・・・・・」
蘭「・・・そんな人、いないし」
  呟くようにそう言って、蘭は屋上を立ち去ってしまう。
今井「あ、待って鈴原さん・・・!」
今井「・・・・・・」
今井「・・・はぁ・・・ なんとかしたいんだけれど・・・」
今井「難しいわね・・・ ・・・どうしたらいいのか────」

〇学校の昇降口
  放課後───
綾香「・・・・・・」
綾香「・・・ふふ・・・」
綾香「・・・良かった、また私が1位で」
綾香「あの程度で不登校になるなんて・・・ 佐藤も大したことないわね」
綾香「見られたときは焦ったけど、強めに脅してやったのが効いたかしら」
綾香「まあ彼女、大人しそうだし・・・ しばらくは勉強どころじゃないでしょうね」
綾香「これで、私の邪魔をするやつはいない 私が1位・・・私が、絶対に1番」
綾香「・・・だって、私には勉強しかないのよ これくらいしか、人より勝るものがない」
綾香「・・・だから、いいじゃない 私に、1位を取らせてよ」
綾香「これじゃなきゃ私は・・・ 1番に、なれないんだから」

〇黒
生徒「───・・・あ、見て!今回の学年1位!」
生徒「楓ちゃんだよ、すごーい!・・・───」
生徒「──・・・やったね、楓ちゃん!」
楓「──・・・えへへ、頑張ったから嬉しい!」
綾香「・・・・・・・・・・・・」
綾香「・・・・・・なんで・・・・・・?」
綾香「学年1位は、私のものなのに・・・───」
???「───・・・ねえ、なんでこんなことするの」
楓「私、嫌だよ・・・やめてよ・・・────」

〇学校の昇降口
綾香「・・・・・・・・・・・・」
綾香「・・・はぁ・・・ 嫌なこと思い出しちゃった」
綾香「もう帰ろう────」
  そうして、綾香が下駄箱を開けると───
  中から、1枚のメモのような紙切れが出てきた。
綾香「・・・? なにこれ・・・」
綾香「なにか書いてある・・・」
綾香「えーっと────」
綾香「────────ッ!!」
  メモの文面に目を通す綾香の顔が、
  青ざめていく。
綾香「・・・・・・・・・・・・」
綾香「・・・なんで・・・」
綾香「・・・・・・なんでなのよ────」

次のエピソード:第7話

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