ペルソナの微笑

鳳条

第2話(脚本)

ペルソナの微笑

鳳条

今すぐ読む

ペルソナの微笑
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
  ───放課後・3年A組にて
生徒「───ねぇねぇ、香穂ちゃんは部活入るの?」
香穂「うーん、どうしようかなって考えてたところ」
香穂「入りたいとは思ってるんだけど、3年生だし 入ってもすぐやめちゃうかなって」
生徒「運動部と文化部だったらどっちがいいの?」
香穂「私、運動は苦手だから文化部かなぁ」
生徒「だったら、引退も秋頃だろうし、今から入ってもいいんじゃないかな?」
香穂「そっかぁ・・・」
香穂「私、絵を描くのが好きだから、美術部とか入ろうかなって思ってるんだけど───」
凛「───美術部って言った!?」
香穂「わっ、びっくりした・・・」
凛「ご、ごめんごめん・・・」
生徒「・・・あ、そっか!凛ちゃん美術部だもんね」
凛「そうなのー! だからつい反応しちゃって・・・」
香穂「凛ちゃん、美術部なんだ」
凛「うん!もし美術部に入ってくれるなら大歓迎だよー!」
凛「今日もこの後部活やる予定なんだけど・・・ 香穂ちゃん、来てみる?」
香穂「いいの?ありがとう!」
凛「よーし、決まりー!」

〇美術室
  ───美術室
凛「───どうぞ〜」
香穂「し、失礼しまーす・・・」
  美術室は静まり返っている。
  凛と香穂以外には、誰もいない。
香穂「他の部員さんは、まだ来てないの?」
凛「来てない・・・っていうか、なんていうか」
凛「今の美術部ってさ、私を含めて部員が3人しかいないんだよね」
香穂「え、3人? 少ないんだね・・・」
凛「そーなの、しかも全員3年生だからさ 最悪、私たちが引退したら廃部なんだよね」
香穂「そ、そうだったんだ・・・」
凛「1人で描いてるのも寂しいし、香穂ちゃんが来てくれるなら嬉しいなって思って」
凛「ちょっと強引に誘っちゃったよね、ごめん」
香穂「そんなことないよ、誘ってくれて良かった」
香穂「凛ちゃんがどんな絵描くか、見ててもいい?」
凛「もっちろーん!そこ座って!」
凛「まあ、私そんなに大した絵は描けないけどね」

〇美術室
香穂「・・・さっき、部員は3人って言ってたけど」
香穂「他の2人は、今日は来てないの?」
凛「あー・・・うん」
凛「1人は今、不登校みたいになっちゃって 学校に来れてないんだよね」
凛「詳しい理由は分からないけど・・・ 大丈夫かなって心配なんだ」
香穂「そうなんだ・・・来られるといいね」
凛「うん・・・ で、もう1人は────」
凛「・・・・・・」
香穂「・・・? 凛ちゃん・・・?」
凛「・・・もう1人はね」
凛「一昨年───亡くなったの」
香穂「え・・・?」

〇黒
凛「───松山楓ちゃんっていう子がいたの」
凛「すごく明るくて優しくて・・・ 勉強もスポーツもなんでもできちゃう子でね」
凛「みんなに好かれる人気者だった ・・・私も、仲良しで大好きだった」
凛「だけど────」
凛「───1年生の冬 もう、そろそろ2年生になるっていう頃」
凛「楓ちゃん、亡くなったの」
凛「学校の屋上から、飛び降りたんだって」
凛「遺書も置いてあったみたいで・・・ 自殺だって伝えられた」

〇美術室
香穂「・・・自殺・・・」
凛「でも・・・ 楓ちゃんが自殺なんて、私考えられなくて」
凛「いつも、あんなに笑顔で明るかった楓ちゃんが、どうして自殺なんて・・・」
凛「・・・・・・」
香穂「凛ちゃん・・・」
凛「・・・美術部から、楓ちゃんの存在を消したくないんだ」
凛「部員を2人にしちゃったら、楓ちゃんがそこにいた事実まで無くなっちゃいそうで」
凛「だから・・・私の中では3人なんだ」
香穂「・・・そうだったんだ」
凛「・・・ごめんね、暗い話しちゃって」
香穂「ううん、大丈夫だよ」
香穂「むしろ・・・ 辛かったこと話してくれて、ありがとう」
凛「優しいね、香穂ちゃん」
香穂「・・・そんなこと、ないよ」
凛「・・・・・・」
香穂「・・・・・・」
  暫くの間、重たい沈黙が流れる。
凛「───さーてと、絵の続き描こうかな」
凛「コンクールも見えてきてるし、本腰入れて頑張らないと」
香穂「コンクールがあるの?」
凛「うん、秋頃にね 3年生はそれで引退だよ」
香穂「そうなんだ・・・ じゃあ、気合い入れて頑張らないとだね」
凛「うん、最後だからね」
凛「・・・あ、香穂ちゃん、結局どうする?」
凛「美術部に、入部するかしないか・・・ ちょっと暗い話もしちゃったけど・・・」
凛「もちろん、他の部活を見てからでもいいし 今すぐにじゃなくてもいいよ」
香穂「うーん・・・」
香穂「・・・私は、もう入部しちゃいたいかな」
香穂「絵を描くの好きだし・・・ コンクールにも、自分の絵を出してみたい」
凛「ほんと?嬉しい〜!」
凛「じゃあ早速、顧問の先生に言いに行こっか!」
香穂「うん、ありがとう」

〇明るいリビング
  その日の夜───
  ───相澤家にて
香穂の父「───ただいま」
香穂「あ、おかえりなさい、お父さん」
香穂の父「ただいま、香穂 遅くなってすまなかったね」
香穂「ううん、大丈夫 私もさっき帰ってきたところ」
香穂の父「そうか・・・」
香穂の父「学校はどうだ? ・・・少し、馴染めたか?」
香穂「うん、楽しいよ! 友達も出来たし、部活にも入ることにしたの」
香穂の父「そっか、もう友達が出来たか・・・ それなら良かったよ」
香穂の父「・・・お父さんの転勤が急に決まったせいで、転校しなきゃいけなくなってごめんな」
香穂「大丈夫だよ 私、女子高にもちょっと憧れてたんだよね」
香穂「共学と女子高の両方を経験できるなんて、むしろラッキーだと思ってるよ」
香穂の父「・・・それならいいんだが」
香穂の父「辛いことがあったら、無理せず言うんだぞ」
香穂「うん、分かった ありがとう、お父さん」

次のエピソード:第3話

成分キーワード

ページTOPへ