好きの在処

夏名果純

第20話 好きの在処(脚本)

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夏名果純

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〇神社の石段
川崎謙弥「なあ、花奈」
  やがて、花火もすべて打ち上がった頃。
  謙弥は前を見つめて切りした。
水杉花奈「何?」
川崎謙弥「俺は花奈のことが好きだ」
水杉花奈「!」
  そう言ってから、ようやく謙弥は花奈の方を向く。
川崎謙弥「花奈は?」
水杉花奈「えっ」
川崎謙弥「俺と今日の花火大会に行きたいってことは話してくれた」
川崎謙弥「けど、肝心の花奈の気持ちをまだちゃんと聞いてない」
水杉花奈「あっ、そういえば・・・」
水杉花奈(私も謙弥にまだちゃんと伝えてなかった・・・)
川崎謙弥「だから、聞きたい」
水杉花奈(そうだよね。私もちゃんと言わないと・・・)
  謙弥の言葉にゆっくりとうなずいて、花奈は意を決して口を開く。
水杉花奈「私も謙弥のことが好き。大好きだよ」
川崎謙弥「花奈・・・」
  謙弥の腕が伸びてきて、花奈は力いっぱいに抱きしめられた。
水杉花奈「ちょっと、謙弥。苦しいよ・・・」
川崎謙弥「あっ、悪ぃ・・・」
  腕の力が弱められて、花奈もおずおずと謙弥の背中に腕を回す。
水杉花奈「ねえ、私たちって付き合ってるって思っていいの?」
  花奈が聞くと、謙弥は少し身体を離して大きくうなずいた。
川崎謙弥「ああ、当然だろ?」
水杉花奈「そっか、よかった・・・私、謙弥の彼女なんだね。それで、謙弥が私の彼氏なんだ」
  花奈はうれしくなって、微笑んだ。
川崎謙弥「ああ。そうだ」
川崎謙弥「だから・・・なあ、キスしていいか?」
水杉花奈「!?」
  思いがけない謙弥の言葉に、花奈の心臓は大きく飛び跳ねた。
川崎謙弥「・・・なんだよ、嫌か?」
水杉花奈「い、嫌じゃないよ。 びっくりしただけで・・・」
水杉花奈「うん、いいよ」
川崎謙弥「・・・・・・」
  花奈が小さな声で言うと、ゆっくりと謙弥の顔が近づいてきて、2人の唇が初めて触れ合ったのだった。

〇ファストフード店の席
  8月27日(火)
  それから、およそ半月後。
  花奈と謙弥はいつものハンバーガーショップで会っていた。
水杉花奈「ねえ、もうすぐ夏休みも終わりだね」
川崎謙弥「ああ、そうだよなあ」
水杉花奈「ねえ、夏ももう終わりだし、一緒にどこか遊びに行きたいなって思うんだけど」
川崎謙弥「ああ、別にいいぜ。行くか?」
水杉花奈「いいの!?」
川崎謙弥「どこ行きたいんだ?」
水杉花奈「そうだなあ。たくさんあるけど・・・でも、水族館に行きたい!」
川崎謙弥「あー、近くにあるしな。 いいぜ、なんなら、今からでも行くか?」
水杉花奈「やった、行きたい!」

〇大水槽の前
  2人は勢いのまま、近くにある水族館にやって来た。
水杉花奈「わあ、見て! おっきなエイ!」
川崎謙弥「ぷっ・・・ははっ!」
水杉花奈「えっ、何?」
  突然笑い出した謙弥に、花奈はきょとんとする。
川崎謙弥「いや、小学生ん時も花奈、この大水槽の前で同じこと言ってたなーと思って」
水杉花奈「そ、そうだったっけ?」
水杉花奈(全然覚えてない・・・)
川崎謙弥「エイが好きなのか?」
水杉花奈「別に、そういうつもりはないんだけど・・・」
川崎謙弥「他には何が見たいんだ?」
水杉花奈「えっとね、クラゲ! ラッコ! イルカ!」
  花奈の言葉に、謙弥がパンフレットを確認する。
川崎謙弥「イルカのショーまではまだ時間があるな。 クラゲ、行くぞ」
水杉花奈「うん!」
水杉花奈(あっ・・・)
  謙弥が歩き出した時、自然と手が伸びてきて花奈は謙弥に手をつながれた。
川崎謙弥「・・・・・・」
  謙弥はそのまま何事もなかったかのように、前を向いたまま歩いていく。
水杉花奈(謙弥・・・、うれしいな)

〇ショーの水槽
  その後、クラゲやラッコを見てから、花奈たちはイルカショーが行われるスタジアムにやって来た。
水杉花奈「早めに来てよかったね。 まだ前の席が空いてるよ!」
川崎謙弥「そうだな。じゃあ、正面の席にするか」
水杉花奈「・・・わあ、イルカが泳いでる。可愛いー!」
川崎謙弥「なんか飲み物買ってくる。何がいい?」
水杉花奈「えっ、いいの? じゃあ、コーラ!」
川崎謙弥「オッケー。じゃあ、行ってくるわ」
水杉花奈(・・・なんか、本当に彼氏っぽい!  いや、彼氏なんだけど)
  花奈はつい、遠ざかっていく謙弥の背中をボーっと見つめていた。

〇ファンシーな部屋
  水族館から帰ってきてもまだ少し時間があったので、2人は花奈の部屋でくつろぐことにした。
水杉花奈「あー、楽しかったね!」
川崎謙弥「ああ、あんな目の前でイルカショー見たのは初めてだ。すごかったよな!」
  2人で隣り合って座る。
  謙弥も興奮気味に話してくれたので、花奈はうれしかった。
水杉花奈「おそろいのストラップも買えたね」
  花奈と謙弥が買ったのは小さなイルカのマスコットがついているものだった。
  花奈が自分のイルカのマスコットを謙弥のイルカに近づけて、そっとキスさせる。
水杉花奈「ふふっ・・・」
川崎謙弥「・・・・・・」
  花奈が上機嫌でいると、それを見ていた謙弥が花奈の両肩に手を置いた。
水杉花奈「・・・謙弥?」
川崎謙弥「イルカ同士より、こっちの方がいいだろ?」
水杉花奈「えっ」
川崎謙弥「俺は花奈との方がいい・・・」
水杉花奈「んっ!」
  突然、謙弥に唇を塞がれて花奈は少し戸惑う。
  つい肩に力が入ってしまっている花奈に、謙弥がささやく。

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