供養鑑定士(仮)

在ミグ

〈生命を注ぐ〉ジョウロ(脚本)

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〇祈祷場
供養鑑定士「この世には、なんらかの形で日の目を浴びることが出来なかった物語が存在します」
供養鑑定士「私は、そんな尖った物語専門の供養鑑定士」
供養鑑定士「さて、本日の物語は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」

〇黒

〇一軒家の庭
植木 育生(うえきいくお)「なかなか育たないなぁ」
植木 華恵(うえきはなえ)「もう諦めなさいよ 品評会までもう1週間しかないんだし」
植木 育生(うえきいくお)「いや、まだ諦めない!」
植木 育生(うえきいくお)「会社の連中に、絶対優秀賞取るって 言い切ってしまったし」
植木 華恵(うえきはなえ)「あなたってほんっと見栄っ張りよね」
植木 育生(うえきいくお)「そ、それに優秀賞には 賞金10万円が!」
植木 華恵(うえきはなえ)「そもそも無理よ 植物なんて今まで枯らしてばっかじゃない」
植木 育生(うえきいくお)「人間、やればできる!」
植木 華恵(うえきはなえ)「そんな根性論だけで育つと思ってるの? それより買い物はいつ行くのよ」
植木 育生(うえきいくお)「そうだった! トイレのあれ切らしてたんだ」
植木 華恵(うえきはなえ)「あなた今日休みなんだからお願いね それとついでに──」

〇黒

〇ホームセンター

〇黒

〇スーパーの店内
植木 育生(うえきいくお)「あれは買ったし、頼まれた物も買って あとは何か──」
植木 育生(うえきいくお)「そうだ、ジョウロに穴が空いてたんだった」

〇黒

〇一軒家の庭
植木 育生(うえきいくお)「全然花の蕾もついていない」
植木 育生(うえきいくお)「俺の健康を少しわけてやりたいくらいだ」
植木 育生(うえきいくお)「頼むから頑張って成長してくれよ」
植木 育生(うえきいくお)「ん?」

〇黒

〇一軒家の庭
植木 育生(うえきいくお)「おい、見てくれよ!」
植木 華恵(うえきはなえ)「なによ、朝っぱらから──」
植木 華恵(うえきはなえ)「花が・・・」
植木 育生(うえきいくお)「どうだ綺麗だろう これなら品評会に間に合いそうだ」
植木 華恵(うえきはなえ)「うーん、でも普通って感じ 品評会に出すようなものでもないんじゃ」
植木 育生(うえきいくお)「そんな・・・!」
植木 華恵(うえきはなえ)「ねぇ、もういいかしら パートの準備しなきゃ あなたも早く仕事行かないと」
植木 育生(うえきいくお)「いや、もっと愛情こめて育てたら 大きく育つかもな ジョウロも新しくした事だし」
植木 育生(うえきいくお)「よし」

〇黒

〇一軒家の庭
「おい、来てみろよ!」
植木 華恵(うえきはなえ)「なぁにー? また今日も朝早くから庭にいるの? まだ眠いのに・・・・」
植木 華恵(うえきはなえ)「ん?」
植木 華恵(うえきはなえ)「すっご・・・ 花が増えてる」
植木 育生(うえきいくお)「どうだ、満開で綺麗だろう」
植木 華恵(うえきはなえ)「ええ、綺麗・・・ ってあなたなんだか老けた?」
植木 育生(うえきいくお)「いやー最近ちょっと疲れやすくてね 歳かなぁ」
植木 華恵(うえきはなえ)「えぇ? 大丈夫なの?」
植木 育生(うえきいくお)「そんな事より これなら優秀賞とれそうかな?」
植木 華恵(うえきはなえ)「う、うーん 綺麗だけどあんま珍しさはないわね」
植木 育生(うえきいくお)「まだ、だめなのか・・・」
植木 華恵(うえきはなえ)「そんな無理しなくても 生活はそこそこやっていけるし 賞金を狙わなくてもいいじゃない」
植木 育生(うえきいくお)「いや、だめだ! 賞を取るって約束したんだ それに」
植木 育生(うえきいくお)「生まれて一度も賞を取った事がないし なんか取りたいんだよおおおお!」
植木 華恵(うえきはなえ)「えー!? あなた健康が取り柄なんだし 皆勤賞とか取ってないの?」
植木 育生(うえきいくお)「子供の頃は病弱だったんだ・・・ だから頑張って鍛えて 健康だけは気をつけて生きてきたんだよ」
植木 華恵(うえきはなえ)「あらー・・・」
植木 育生(うえきいくお)「それから──」
植木 華恵(うえきはなえ)「やだ、私ご飯炊くの忘れてたわ 今から間に合うかしら」
植木 育生(うえきいくお)「はぁ・・・」
植木 育生(うえきいくお)「俺の話を聞いてくれるのは お前だけか・・・」
植木 育生(うえきいくお)「苗木の頃から聞いてくれたよなぁ お前がいなかったら ストレスで禿げていたところだった」
植木 育生(うえきいくお)「そんなお前を立派に育てて 賞を取りたいんだ 愚痴をいつも聞いてくれた礼にな」
植木 育生(うえきいくお)「さぁ、もっと大きくなれよー」

〇黒

〇シックなリビング
植木 華恵(うえきはなえ)「あなたー? まだ外暗いのにもう起きたの?」
植木 華恵(うえきはなえ)「あら? どこ行ったのかしら? まさか今日もまた庭に?」

〇黒

〇一軒家の庭
植木 華恵(うえきはなえ)「あなたー?」
「ああ、見てくれ! この植木を」
植木 華恵(うえきはなえ)「うっわぁ 何この花の量!?」
植木 育生(うえきいくお)「どうじゃ すごいじゃろお?」
植木 華恵(うえきはなえ)「あなた、なの・・・!?」
植木 育生(うえきいくお)「そうじゃ この花の量なら優秀賞狙えるじゃろ」
植木 華恵(うえきはなえ)「おかしいわ」
植木 育生(うえきいくお)「え? まだだめ?」
植木 華恵(うえきはなえ)「絶対おかしい 病院行きましょう」
植木 育生(うえきいくお)「へ?」
植木 華恵(うえきはなえ)「こんなに急激に老けるなんて きっと病気なのよ 早く病院行って診てもらわないと」
植木 育生(うえきいくお)「わしぁ病気じゃない! こいつと一緒に賞を取るんだぁ」

〇花模様2
植木 華恵(うえきはなえ)「何これ・・・ あたり一面が花畑に」
植木 育生(うえきいくお)「もっと、もっと水を注いで もっともっといっぱい・・・」
植木 華恵(うえきはなえ)「あ、あなたー!?」
植木 育生(うえきいくお)「もう少し・・・ 水を」
植木 育生(うえきいくお)「もっと・・・ もっと・・・」

〇一軒家の庭
植木 華恵(うえきはなえ)「あなた・・・」
植木 華恵(うえきはなえ)「そのジョウロ・・・ まさかそれが原因!?」
植木 育生(うえきいくお)「これは・・・ だめらぁ・・・ だいじな・・・」
植木 華恵(うえきはなえ)「ちょっとそれを渡しなさい!!」
植木 華恵(うえきはなえ)「離しなさい!!」
植木 育生(うえきいくお)「だめ・・・ これ・・・」
「あっ!?」

〇黒

〇一軒家の庭

〇一軒家の庭
植木 華恵(うえきはなえ)「あなた!? 水がかかっちゃったけど 大丈夫──」
ゴリラ(植木 育生)「ああ、平気だ なんだか力がみなぎるような」
植木 華恵(うえきはなえ)「・・・」
ゴリラ(植木 育生)「・・・」

〇一戸建て
「なんじゃこりゃあー!?」

〇黒

〇祈祷場
ゴリラ「・・・というお話だったんですわ」
供養鑑定士「ボツっちゃいましたか」
ゴリラ「今見たら明らかに不条理ギャグ漫画的な 展開でしたわ」
供養鑑定士「それではこの物語の鑑定額は・・・」
供養鑑定士「バナナ1本!」
ゴリラ「バナナかーい!」

コメント

  • 禿げたら喋り方変わってて笑いました。
    心まで老けてしまってる!
    こういう話だったんですね。ホームセンターの買い物くらいから心のツッコミが忙しくて楽しめました。供養ありがとうございます

  • こちらのお話が作品として読めるなんて、嬉しいです!
    プロット自点で気になるお話が多かったので🍌🦍
    骸骨になっちゃってはらはらしたけど🦍で良かった
    ん?良かった?なんか色々麻痺してきました😂

  • 独特の世界観ですし、最後に逆転していて面白いですね!!
    世界観を持ってる方は強いなと思いました。
    また一方で、主催者側の意図を汲むのは難しい。
    逆転の面白さより、別のものを主催者側は欲しがってたのかもしれない。
    必ずしも面白い面白くないで選んでないのかなという気がします。
    主催者側の意図も考慮できないし、世界観もなく、びっくり展開も作れないので
    自分自身はまだまだ研鑽が必要だなと気付きました🙇

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