アパルトとヘイト6(脚本)
〇組織のアジト
ロイ「ヘイトそいつは、半分OKって事だぞ」
アパルト ヘイト「そうなんですか?」
ロイ「そうとも、それによ、エレンはまた連絡するって言ったんだろ?」
アパルト ヘイト「ええ・・・」
ロイ「なら心配ねぇ!気長に待とうや!」
ロイ「呼んだ女が惚れた女だったなんて、神様に感謝しねぇとな!」
アパルト ヘイト「ロイさん、僕を面白がってるでしょ?」
ロイ「すまねぇ!でも、可笑しくてな!」
アパルト ヘイト「対人恐怖症になりそうだよ」
ロイ「そんな言葉使うな。運が逃げるぜ!」
ロイ「ところで、話しは変わるがよ」
アパルト ヘイト「何です?」
ロイ「俺の知り合いがやってる、工場で一緒に働かねぇか?」
アパルト ヘイト「急ですね、いいですけど、僕に出来るかな?」
ロイ「心配ない。簡単な作業だ。人手が足りないんだと。助けてやってくれ」
アパルト ヘイト「分かりました」
ロイ「ヨシッ、仕事は来週からだ。しっかり稼げよ」
アパルト ヘイト「あの、ロイさん──」
ロイ「な、何だ?」
アパルト ヘイト「はぁ、はぁ、はぁ」
ロイ「急に、どうした?」
アパルト ヘイト「僕、もう、我慢出来ない」
ロイ「は?よ、よせ!」
ロイ「俺にそんな趣味はねぇぞ!」
ロイ「おいっ!」
アパルト ヘイト「・・・──」
ロイ「んっ?」
ロイ「お、おい、ヘイト!しっかりしろ!」
ロイ「す、すげぇ熱だな」
ロイ「・・・救急車呼ぶか」
〇綺麗な図書館
チャールズ「ジェットコースターのような物語だね」
ヘイト「ジェットコースター?」
チャールズ「波のように動いて、笑ったり、泣いたり、時には叫んだりする乗り物だよ」
ヘイト「僕が乗るとしたら楽しめますかね?」
チャールズ「もちろんさ。怖いかも知れないがね」
ヘイト「怖いけど、楽しめるなんて、矛盾した乗り物ですね」
チャールズ「その乗り物のいい所は、最後は必ずホッとする場所に戻って来る所さ」
ヘイト「ホッとする場所?」
チャールズ「出発点であり、終点さ」
ヘイト「へっ?」
チャールズ「人生の縮図みたいな乗り物だと私は感じるよ」
チャールズ「話の腰を折ってしまったね。さぁ、続きを──」
〇田舎の病院の病室
アパルト ヘイト「誰?」
ブラックウェル「あら、起こしたかの?」
アパルト ヘイト「子供?ここに入院してるの?」
ブラックウェル「違う、ここで働いておるのじゃ。 こう見えても89歳の女医であるぞ」
アパルト ヘイト「そういう設定の世界観なんだね。合わせるよ」
ブラックウェル「少し会話をせんか?」
アパルト ヘイト「いいけど、子供は寝る時間だよ?」
ブラックウェル「89歳じゃ!」
アパルト ヘイト「そうだった、じゃあ、お話ししようか」
ブラックウェル「うむ!」
ブラックウェル「昔は女性が医者になるのは偏見が強くとても 難しかったのじゃ──」
彼女は最新の医学を学ぶ為パリに行った事。女の持つ医師免許は紙切れ同然だった事。
信じた道を貫き夢を掴んだ事を語っていた
〇田舎の病院の病室
アパルト ヘイト「・・・──」
女医「グッドモーニング!ヘイト!」
女医「検診のお時間よ」
女医「脇に挟んで!」
アパルト ヘイト「先生」
女医「ん?」
アパルト ヘイト「昨日の夜、89歳の少女が部屋に来たんですが、どこが悪くて入院してるんですか?」
女医「89歳の少女?どういう事? 入院してるのは全員が男よ?」
アパルト ヘイト「ブラックウェルっていう子なんですけど」
女医「それ、アメリカ最初の女性医師の名前よ」
女医「そんな偉大な人が、夢に出てきたのね」
アパルト ヘイト「夢じゃなくて、本当に会話をして──」
女医「少し高いみたいだけど、平熱ね」
女医「この調子なら、明日には退院出来るわ!」
女医「あまり、無理しないようにね、ヘイト」
アパルト ヘイト「夢・・・だったのかな?」
〇工場の中
退院後は工場で働いたんだ
工員「お前が新入りだな。仕事内容を説明してやる」
アパルト ヘイト「よろしくお願いします」
工員「ここでは流れてくるナットをスパナで締めるこの作業を繰り返してもらう」
工員「誰でも出来る単純作業だ」
工員「近くに大きな歯車があるから、ウトウトしてると挟まれちまうぞ。気をつけな!」
工員「前に働いていた黒人のヤツは作業中に 眠むって、そのまま、あの世行きだったぜ」
アパルト ヘイト「は、挟まれないように気をつけます!」
工員「本当は、黒人を募集してたんだがな──」
アパルト ヘイト「何故です?」
工員「そりゃあ、安い賃金で済むからな!」
工員「じゃ、頑張れよ!」
アパルト ヘイト「複雑だな──」
〇工場の中
アパルト ヘイト「何か、単純作業過ぎて、瞼が重いや・・・」
アパルト ヘイト「はっ!いけない、目を閉じてしまいそうだ」
アパルト ヘイト「・・・──」
〇黒
アパルト ヘイト「んっ?」
アパルト ヘイト「・・・──」
アパルト ヘイト「ぐるぐる回ってるような・・・」
アパルト ヘイト「えっ!」
〇歯車
アパルト ヘイト「あわわっ!」
アパルト ヘイト「うわっ!」
アパルト ヘイト「うげっ!」
〇綺麗な図書館
ヘイト「気づいたら、歯車に挟まれ回っていたんです」
チャールズ「昔、同じ場面を劇に取り入れた事があるよ」
チャールズ「そういえば──」
チャールズ「そうか、君は──」
ヘイト「あっ!自己紹介がまだでしたね。僕の名前は」
チャールズ「いや、知っているよ。君と会うのは2度目だ」
ヘイト「えっ?昔お会いしました?」
チャールズ「ああ。会っているとも」
ヘイト「そうでしたっけ?」
チャールズ「私の残された時間は少ないのだろ?」
ヘイト「・・・」
チャールズ「今の私がどんな気持ちかわかるかい?」
ヘイト「人生を完走したって気持があると思います」
チャールズ「そうだな。しかし、往生際が悪いもので、登って来た階段が見えなくなった瞬間、新しい価値観が見えるのだよ」
チャールズ「そうなった時、バランスを保ちながら登ってきた白と黒の階段は最上階でどちらかの色が多くなる」
ヘイト「もしも、均等ならどうします?」
チャールズ「私は案内人に懇願するんだ、見た目のバランスを整える為にあと1段階段を追加して欲しいと」
ヘイト「追加しても、よくならなかった場合は?」
チャールズ「もう少し高い方が見栄えがいいと我儘を言ってもう一段追加してもらう」
ヘイト「それでも、よくならなかったら?」
チャールズ「神様の声が聞きにくいから、あと一段だけ増やして欲しいと頭を下げる」
ヘイト「それで、本当の最後ですよね?」
チャールズ「いや、忘れ物をした一緒に探してくれと言って、階段を降りる」
ヘイト「見つかったら、素直に付いて来てくれます?」
チャールズ「ボケたフリをして、案内人を困らせる」
ヘイト「強引に引っ張られた場合は?」
チャールズ「腰が痛い、老人なのだから、ゆっくり歩けと案内人を諭す」
ヘイト「ハハッ。年を重ねると、ふてぶてしくなるのは猫だけかと思いました」
チャールズ「やがて、言い訳が無くなったら、素直に案内人に従うだろう」
チャールズ「困らせる側が、困らせられたら面白いと思もわんかね?」
ヘイト「はい──」
ヘイト「どうやら、あと少し彼と彼女のストーリーに続きがあるようです」
チャールズ「なら、私のお迎えはまた今度だな」
チャールズ「結果を見届けたい人物が気になるのだろう?」
ヘイト「はい」
ヘイト「あの彼、喜怒哀楽を表情に出せないんですよ」
ヘイト「それが表現できたら、普通になれるって思ってるみたいなんですが・・・」
ヘイト「でも、それだけでは足りないんですけどね」
チャールズ「足りないものが揃ったら、それは、喜劇になって輝くはずさ」
ヘイト「最後に、一つだけ」
チャールズ「ん?」
ヘイト「どこで、僕と会いました?」
チャールズ「日本の古典落語「死神」に似た場面」
チャールズ「松の木の下──だったかな?」
「ヘイト!」
ヘイト「3年ぶりだね!エレン!」
エレン「急に呼び出してごめんね、どうしても会って話したかったの」
エレン「あのね・・・・・」
ヘイト「どうしたのさ?」
エレン「その、言いにくいんだけど・・・」
ヘイト「なんだい?」
エレン「その、一緒に暮らして欲しいな・・・って」
ヘイト「えっ!」
エレン「ゴ、コメン、迷惑だよね、私ったらどうかして」
ヘイト「もちろん!いいよ!」
エレン「へっ、本当に?」
エレン「わ、私、絶対に完治しない病気にもなってて」
ヘイト「心配ないよ!2人で一緒に──」
「ママ〜!」
ヘイト「ママ?」
エレン「私とヘイトの息子」
ヘイト「え、えぇぇぇ!」
〇綺麗な教会
その後に地元の教会で結婚式をあげて──
ロイ「おめでとう、ヘイト!」
エイミー「次は私達の番ね、ロイちゃん!」
ロイ「そうだな、式の予約しといてくれ」
エイミー「えっ?急に!」
ロイ「おう!」
エイミー「でも、あの言葉を聞いてないなぁ〜」
ロイ「何だ?」
エイミー「ふんっ!ロイちゃんなんて、知らない!」
ロイ「何だ?」
アパルト ヘイト「きっと、プロポーズの事ですよ」
ロイ「そ、そ、そうか」
そして、幸せな時間が3年と少し過ぎた頃、エレンは突然、床へ崩れ落ちた
アパルト ヘイト「エレン!」
〇豪華なベッドルーム
アパルト ヘイト「──体調はどうだい?」
エレン「ボチボチかな・・・」
アパルト ヘイト「明日はきっと、良くなるよ」
エレン「あのさ、ヘイト、聞いてくれる?」
アパルト ヘイト「何?」
エレン「実はね、前にヘイトと別れた後も、風俗の仕事を続けていて──軽蔑してる?」
アパルト ヘイト「してないよ」
エレン「きっと、大勢の男に偽物の愛をばら撒いたから、不治の病なんていう天罰が下ったのよ」
アパルト ヘイト「神様は罰を当てる相手を勘違いしただけさ」
エレン「ねぇ?ヘイト」
エレン「本当に私をどう思ってる?」
アパルト ヘイト「僕の中では一番輝いてる存在だよ」
エレン「──皆に愛の安売りをしていた女でも?」
アパルト ヘイト「それも、輝いてる」
アパルト ヘイト「大丈夫、きっとよくなるよ!」
エレン「そうだね──」
エレン「ねぇ、昔の話しをしない?」
アパルト ヘイト「うん。喋る事が無くなるまで聞いてあげるよ」
アパルト ヘイト「ねぇ?エレン?」
エレン「どうしたの?」
アパルト ヘイト「僕の表情って今どんな感じ?」
エレン「穏やかな表情、元気がもらえるよ」
アパルト ヘイト「なら、良かった」
エレンは、昔食べたパンケーキの事や外で絵本を読んだ事、父親に殴られて家から逃げだしていた嫌な思い出の話をしていた
エレン「ヘイト、息子の事は頼むね」
アパルト ヘイト「これが、最期みたいに言わないでよ」
アパルト ヘイト「あっ、そうだ!読んでもらいたい日本の小説があるんだ!」
エレン「日本の小説?面白そうね」
エレン「でも、私が読むのはこれ」
エレン「聖書」
アパルト ヘイト「え〜僕の好きな本も読んでよ!読んだら、きっと気に入るからさ」
エレン「明日の朝、読むよ」
アパルト ヘイト「絶対?」
エレン「ああ、絶対さ!」
アパルト ヘイト「約束!」
〇豪華なベッドルーム
エレン「誰?」
ヘイト「ごめんね、君の寝顔を見ていたくて」
エレン「フフッ。おかしなヘイト」
ヘイト「エレン少しだけ、外にでてみない?」
エレン「──いいよ」
〇月夜
エレン「綺麗ね・・・」
ヘイト「これ覚えてる?」
エレン「あっ!」
ヘイト「昔、エレンが持ってきてくれた本」
ヘイト「今度は僕が読んであげるよ」
エレン「思い出した!夜風に当たって、ヘイトが変な声になっちゃったんだよね」
ヘイト「そう、こんな声」
ヘイト「う〜ん僕は、動物のジャガーかな 何か鋭い目つきにゾクっとさせられるんだ」
エレン「フフッ、そうだったかな?」
ヘイト「そうさ!」
〇豪華なベッドルーム
ヘイト「さぁ、エレン横になって。疲れてない?」
エレン「大丈夫──」
エレン「──・・・」
エレン「ねぇヘイト?」
エレン「私が安心して寝れるまで一緒に居てくれる?」
ヘイト「もちろんさ、ずっといるよ」
エレン「うん──貴方はいつも側にいたのよね」
エレン「ごめんね──気付かなくて」
ヘイト「大丈夫だよ、気にしないで」
エレン「うん──・・・」
エレン「私の手を握ってて──」
ヘイト「握ると困らせちゃうよ?」
エレン「いいから、握って」
ヘイト「・・・うん」
エレン「ずっと一緒よ、ヘイト──」
ヘイト「そうだね、ずっと一緒にいるよ」
エレン「・・・──」
エレン「・・・──」
エレン「・・・──」
ヘイト「おやすみ、エレン──」
〇豪華なベッドルーム
アパルト ヘイト「おはよう、エレン小説持ってきたよ!」
エレン「・・・──」
アパルト ヘイト「・・・・・・」
アパルト ヘイト「・・・さよなら、エレン」
アパルト ヘイト「君の聖書、形見にするね・・・」
エレンは9月24日に亡くなった
〇墓地
4年後
アパルト ヘイト「エレン、子供の頃に食べたパンケーキ覚えてる?あのお店、来月なくなっちゃうんだ おばさんが亡くなったんだって・・・」
アパルト ヘイト「あと、僕らの通ってた小学校は来年廃校になってそこには、大きな映画館が建設される予定なんだ」
アパルト ヘイト「子供の頃に君と乗ったスクールバスも無くなっちゃうかもね──」
アパルト ヘイト「えっと、今日は息子のケビンが初めて隣町の小学校に通う日なんだよ」
アパルト ヘイト「昨日の夜は泣いちゃってさ、寝かしつけるのに苦労したんだ・・・」
アパルト ヘイト「そう、苦労して──」
アパルト ヘイト「エレン、君がいたらケビンに何て声をかけたかな?」
アパルト ヘイト「君がいたらケビンはもっと笑顔になるかな?」
アパルト ヘイト「君がいたら朝食は残さず食べてくれるかな?」
アパルト ヘイト「エレン、君がいたら」
アパルト ヘイト「君がいたら──」
アパルト ヘイト「エレン、ぼくは今どんな表情?これでやっと普通になれたかな?」
アパルト ヘイト「感情を全て表現出来るようになっても なにか足りないような気がして──」
アパルト ヘイト「エレン、君なら解るかな?」
アパルト ヘイト「あとね、エレン──」
アパルト ヘイト「僕の大切だった場所は壊され、知ってる人は早歩きで遠くに消えていくんだ」
アパルト ヘイト「だからね、エレン僕は──」
アパルト ヘイト「僕は──」
アパルト ヘイト「僕は今とても寂しいよ──」
アパルト ヘイト「ねぇ、エレン、君と僕の子供の事なんだけど」
アパルト ヘイト「・・・──」
アパルト ヘイト「──何でもない、こんな話をしたらきっと 君に嫌われるね」
アパルト ヘイト「これ、置いとくね」
「草枕」
アパルト ヘイト「君に見せたかった小説」
アパルト ヘイト「じゃあ、行ってくるねエレン」
〇美しい草原
「ねぇ?パパ学校ってここらどのくらい?」
アパルト ヘイト「歩いて30分くらいかな?」
「そんなに、歩きたくないよ〜」
アパルト ヘイト「パパと話しながら行けばすぐに着くさ」
アパルト ヘイト「んっ?」
「パパ、あれって!」
〇バスの中
ニーナ「あら?ずいぶんと大きな新入生ね」
アパルト ヘイト「あっ、ニーナさん!」
アパルト ヘイト「スクールバス、無くなってなかったんだ」
ニーナ「最新のスクールバスよ!」
ニーナ「子供の未来を繋ぐバスの運転手は、まだ終わりそうにないわ」
アパルト ヘイト「久しぶりに会えて、なんかホッとしました」
ニーナ「フフッ。ところでヘイト君、その子は?」
アパルト ヘイト「息子のケビンです」
ニーナ「えっ?」
アパルト ヘイト「よろしくお願いします!」
ニーナ「了解!」
アパルト ケビン「アパルトケビンです!よろしくお願いします」
ニーナ「とても元気がいいわね!」
アパルト ヘイト「ニーナさんを困らせちゃダメだぞ、ケビン」
アパルト ケビン「うん!」
ニーナ「じゃあ、そろそろ出発しようかしら」
アパルト ヘイト「じゃあ、パパは降りるよ」
ニーナ「後は任せて頂戴!」
アパルト ケビン「じゃあね!行って来ます!」
スネイプ「おいっ!」
アパルト ケビン「な、何?」
スネイプ「黒人は座るな!立ってろ!」
アパルト ケビン「え、えっと?」
ニーナ「スネイプ君、お母さんに言いつけるわよ!」
スネイプ「そ、それは──」
ニーナ「さぁ、ケビン席について」
アパルト ケビン「う、うん」
〇美しい草原
アパルト ヘイト「いずれ、きっとケビンも──」
〇墓地
ヘイト「やぁ、エレン」
ヘイト「静かに過ごせてる?」
ヘイト「君だけだったよ、子供の頃から僕と話してくれたのは」
ヘイト「みんな、僕の話しの途中でどっか行ってしまうからさ、正直寂しくて──」
ヘイト「君は僕の正体に気付いてたね」
ヘイト「怖がらず、優しく接してくれて嬉しかった」
ヘイト「執着して、君を困らせちゃってたかな?」
ヘイト「もう君と二度と話せないね」
ヘイト「輝いてた君を忘れないよ」
ヘイト「じゃあ、またね、エレン」
〇シックなバー
数年後
チャールズ「おや、久しぶりじゃないか」
ヘイト「はい、貴方もお変わりないようで」
チャールズ「そういえば、あの彼はどうなったんだい?」
ヘイト「気になります?」
チャールズ「ああ。彼に足りないものって何だったのか、気になって眠れんのだよ」
ヘイト「答えを聞いたら、素直に眠ってくれます?」
チャールズ「もちろん」
ヘイト「彼に、足りなかったものそれは──」
チャールズ「それは?」
それは──
哀れみの表情です
「なるほど──足りない表情を揃えた彼は普通になれたのかい?」
「なれたと思います──」
「さて、時間ですよ」
「おい、おい、まだ酒が残ってるだろう?」
「早く飲み干して下さいよ」
「そう、急かすんじゃない」
「では、いきましょう」
「ふぃ〜酔いが回った、所でお前さんは誰だ?」
「はい?僕の名前は──」
「冗談さ、お前さんの本当の、名前は」
「死神じゃないですよ」
「分かっているさ」
「君は──」
デビル
「みんなの嫌われものだろう?」
「そんな正直に言わないで下さいよ」
「でも、私は嫌いじゃないぞ?」
「えっ!?悪魔信仰?」
「違う、神も悪魔も、喜劇の一部」
「人種も性別も惑星も関係ないのさ」
「何か仏教の教えみたいですね」
「ハハッ、悪魔が仏教を知ってるとはな」
「なぁ?一つ質問なのだが」
「何です?」
「この先、私はどうなるのだ?」
「白も黒もない世界に行きます」
「無という事かね?」
「近からず遠からずですね」
「そうか──」
「足がフラフラで、まともに歩けん また明日来てくれないか?」
「担いであげますよ」
「そんなに急いで、次が詰まってるのか?」
「いいえ」
「なら、先の短い老人を哀れんでくれんとな」
「チャールズさん往生際が悪いですよ」
「抗っているのさ」
「死は怖いですか?」
「いや、抗えば希望が見えるかと思ってな」
「誰かも似たような事言ってました」
「では、最後に一杯飲もう。君も付き合ってくれないか?」
「しょうがないですね、あんまり僕を困らせないで下さいね」
「悲しい場面でも最後まで喜劇を貫く、 それが私さ」
「チャールズさんって、図太いですね」
「では最後の時間に乾杯!」
〇西洋風の駅前広場
ネルソン「私は願う!肌の色にかかわらず、全ての人種が輝く世界を──」
ヘイト「・・・──」
死神かなと思いましたが、悪魔だったんですねびっくりです!!
ようやく人間の感情を理解したのに、世の中諸行無常ですね…
エレンとの最後が美しかったです😭
モダン・タイムスは、私も好きなので嬉しかった。
ベトナム戦争もマンデラも出て、まさに人類史のような作品でした!