3話 裏切りのチョコの味 後編(脚本)
〇学校の部室
静粛な部室。そこで私は鎖百合ちゃんと対面した。
しかし、鎖百合ちゃんは瞬きもせずに、そのパッチリとした黒目で私を捉えて離さず。その威圧感に私は飲まれた
そして終始、彼女の雰囲気に従う事となった。
斯波鎖百合「繭美ちゃんさぁ・・・蓮君の事、好きだよね?答えてよ」
真波繭美「っ──・・・そう、だよ」
斯波鎖百合「そっかぁ・・・やっぱり繭美ちゃんも蓮君の事好きだったんだね!」
斯波鎖百合「鎖百合も蓮君の事が大好きなの」
斯波鎖百合「・・・」
斯波鎖百合「だからさ、諦めてよ」
斯波鎖百合「それと、このチョコも迷惑だから蓮君に渡さずに持って帰ってよ」
真波繭美「それはできないよ!」
斯波鎖百合「・・・なんで?」
真波繭美「だ、だってそれは・・私の、大切な・・・思いだから」
真波繭美「鎖百合ちゃん卑怯だよ!こんな事して・・・私の邪魔しないで!」
斯波鎖百合「私が卑怯?そうかなぁ・・・。とりあえずこれ見てから言ってくれるかな?」
鎖百合ちゃんは、何故か私が細工を施して蓮君に渡した小説と、夏に一人で部室に来るようにメモした栞を持っていた。
真波繭美「なんで、鎖百合ちゃんがソレを持ってるの!?」
斯波鎖百合「うーん・・・それはねぇ──」
〇宇宙空間
──時をさかのぼる事、七夕。『星を眺める会』にて──
真波繭美「──」
沼地蓮「──」
斯波鎖百合「あー!いつのまにか蓮君と繭美ちゃんがいい雰囲気になってる!どうしよう・・・」
真波繭美「──蓮君、月が綺麗だね」
斯波鎖百合「え・・・なんなの、あの繭美ちゃんが蓮君に向ける表情と言葉。なんかイヤ」
斯波鎖百合「それに、『月が綺麗』ってこの状況でいうのはおかしい気がする。だって今日は『星が綺麗』な七夕だよ?」
斯波鎖百合「なーんか、怪しいなぁ・・・」
──思えばこの時から繭美ちゃんは私を出し抜いて、蓮君に仕掛けていたんだよね
〇学校の部室
──更に時が進み。夏休み前の文芸部活動にて──
真波繭美「──はい・・・これが蓮君の分の文芸部の課題の小説だよ」
繭美ちゃん、本を渡すときに妙に緊張してるなぁ。なんでかなぁ・・・とっても気になるなぁ・・・
真波繭美「はい、コッチは鎖百合ちゃんの分の本だよ」
斯波鎖百合「ありがとう繭美ちゃん!わぁ・・・どんな内容の本なのかなぁ。さっそく帰ったら読んでみるね」
斯波鎖百合「・・・」
〇学校の部室
真波繭美「それじゃあ、私夏休みの文芸部室の調整に行くから、二人は先に帰ってて──」
斯波鎖百合「うん、それじゃあお言葉に甘えて、蓮君と二人で帰るね♡」
真波繭美「うん・・・」
沼地蓮「すまないな繭美・・・」
真波繭美「別に気にしないで。部長としての役目だから・・・」
真波繭美「夏休みに来てくれるよね・・・蓮君(ボソっ」
斯波鎖百合「・・・」
〇まっすぐの廊下
斯波鎖百合「・・・あのさぁ、蓮君。繭美ちゃんと何かあった?」
沼地蓮「いや。別に何もないが?」
斯波鎖百合「そっかぁ・・・。ところでさ───」
斯波鎖百合「さっき繭美ちゃんが私達に渡した本、交換しない。私ソッチの本が読んでみたいの」
沼地蓮「そうか、別にそれは構わないが・・・」
繭美が細工を施した本
斯波鎖百合「・・・」
繭美が本の栞に書いたメモ。
『蓮君へ、この本を読んで気が付いたら、夏休みに一人で文芸部室に来てください。伝えたいことがあるの』
斯波鎖百合「・・・へぇ」
沼地蓮「ん?どうしたんだ鎖百合。表情が硬いぞ。その本がどうかしたのか?」
斯波鎖百合「うん!とっても面白そうな内容だからつい真剣にのめりこんじゃった!」
沼地蓮「そうか。なら交換してよかったな」
沼地蓮「それにしても、そんなにその本を鎖百合が気に入るとは・・・。繭美は本を選ぶのがうまいんだな」
斯波鎖百合「うん!本当に意味深な物語の本を選ぶのがうまいよ!」
・・・
〇学校の部室
斯波鎖百合「──というわけなの」
斯波鎖百合「繭美ちゃんさぁ・・・やってくれるよね。こんな手の込んだことするなんて。まるで策士だね」
斯波鎖百合「けどざんねんでしたー。繭美ちゃんのイヤらしい手の込んだ恋愛の策はぜーんぶ私が見破って粉砕したよ!」
斯波鎖百合「まったく哀れだねぇ。まっ──ブスで根暗な文学少女の繭美ちゃんならこうでもしないと私と戦えないからしょうがないよね」
斯波鎖百合「あっ、けど告白に『月が綺麗だね』って、夏目漱石さんが編み出した有名な愛の告白の言葉を引用したのはロマンチックだったよ!」
斯波鎖百合「文学少女の繭美ちゃんらしい方法だよ」
斯波鎖百合「まっ、伝えたい人に伝わらなかったから意味ないんだけどね」
真波繭美「ひどい・・・もう、やめて。ひどい事言わないで」
真波繭美「どうして鎖百合ちゃん。私達大切な幼馴染じゃないの?」
斯波鎖百合「──違うよ」
斯波鎖百合「だから私、繭美ちゃんに対してこんな事できるよ」
鎖百合ちゃんはそういうと突然私の作ったチョコを勝手に一口食べて一言喋った──
斯波鎖百合「パクッ──うーん、裏切りのチョコの味は思った通り甘くて美味しいね!病みつきになりそうだよ!」
真波繭美「私が・・・蓮君の為に愛情を籠めて作ったチョコが──」
斯波鎖百合「──けど、いくら美味しくてもいらない」
真波繭美「あ──やめて──」
鎖百合ちゃは私の作ったチョコを床に落とすと、それを隕石のごとく何度も踏みつけて粉々に砕いた
真波繭美「・・・こんなの、ひどすぎるよ」
斯波鎖百合「あははは!」
斯波鎖百合「繭美ちゃんの大切な思いの詰まった『月』の形のチョコはぁ~『小惑星サユリ』の衝突によってぇ~」
斯波鎖百合「粉々に打ち砕かれちゃいましたぁ~。な~んちゃって・・・くすくす」
斯波鎖百合「・・・繭美ちゃん。あと私が言いたいことわかるよね?」
真波繭美「わかった・・・蓮君には・・・近づかない」
斯波鎖百合「うん、そうして」
斯波鎖百合「それじゃ、私もう帰るね」
彼女は普通にまったく悪びれもせずに部室を去って行った
〇まっすぐの廊下
斯波鎖百合「うふふふ」
斯波鎖百合(これで蓮君は鎖百合だけのもの!)
斯波鎖百合(あ・・・でもあともう一人邪魔な娘がいるんだよねぇ。けどあの娘は繭美ちゃんよりバカそうだからすぐに片づけれるかぁ・・・)
斯波鎖百合「ふふふっ」
・・・ジーッ
暮内紅葉「チっ──ブチ胸糞悪い女じゃ」
続く。次回紅葉エピソード
やったぜ、鎖百合ちゃん!
待ってました〜!ドロドロ〜。
まだ女同士の戦いが続くのワクワクです😍