第3話 退魔師見習いの1日(脚本)
〇空
コリャ待て、逃げるな!
〇港の倉庫
道士「はぁ、はぁ、なんちゅーすばしっこい」
シェイシェイ「やはり獣だけあって 一筋縄ではいきませんね」
道士「ヤツめ、小屋へ入ったぞ」
シェイシェイ「ふふ、袋小路袋小路♪」
〇怪しい実験室
道士「抜かったな、そっちは行き止まりじゃ」
シェイシェイ「君は完全に包囲されている! 大人しく出てきたまえ」
退路を絶たれた怨霊は
ついに凶悪な姿を現した!
怨霊「クゥ~ン」
シェイシェイ「じょ、情に訴えても ダメなモンはダメだかんな!」
道士「犬を殺して肉体を乗っ取り 飼い主から衣食住をせしめる」
道士「大欲非道な餓鬼め! 裁きの時がきたのじゃ!!」
道士「シェイシェイ、札の用意を」
シェイシェイ「はい!」
道士「悪しき怨霊よ 魔封の壺にお入りなさい!」
道士「印!!」
〇怪しい実験室
怨霊「アォォオオオン!!!!」
スポン!
〇怪しい実験室
道士「何をボケッとしておる、はよ札を貼らんか!」
シェイシェイ「は、はい!」
ペタリ!
うわーん!
くらいよー! せまいよー! こわいよー!
道士「封印成功じゃ!」
ボクは犬を殺してない!
車にハネられたところを乗り移ったんだ~!
犬が死んだと知ったら家族が悲しむ
〇動物
特に坊やはとっても可愛がってた
彼は中学受験を控えてる
精神的支えを失えば、とても勉強なんか──
〇怪しい実験室
シェイシェイ「・・・・・・」
道士「シェイシェイ、耳を貸すな」
道士「悪は人間の善意につけこむ 甘言に惑わされず、冷徹になれい」
うえ~ん! うえ~ん!
ひとりぼっちは嫌だよー! さみしいよー!
道士「お前には優しすぎる嫌いがある くれぐれも油断するなよ」
シェイシェイ「・・・・・・はい先生」
怨霊が抜け出たあと、憑依された犬は
2人の足下に横たわり、死んでいた
遺骸はみるみる内に、骨となり、砂となった
怨霊が取り憑いた期間――
ストップした時間が
いちどきに押し寄せたのだ!
道士「ねんごろに供養してやろう」
シェイシェイ「南無阿弥陀仏」
〇黒
2人は砂と化した遺骸をかき集め
火をかけて邪気を払った
遺灰は丁重に木箱の中へ
これを飼い主一家へ返上するのだ
〇空
明朝
依頼者宅へ向かう2人の足取りは重かった
〇一戸建ての庭先
必ず助けるって約束したじゃないか!
この嘘つき!!
〇並木道
シェイシェイ「あの、先生──」
道士「皆まで言うな、お前の考えはよくわかる」
道士「飼い主たちは 怨霊が取り憑いた犬を心底可愛がっとった」
道士「特に害があるでもなし あのまま愛犬のフリを させた方がよかったのではないか?」
シェイシェイ「おっしゃる通りです」
道士「確かに今回の敵は 珍しく悪意が希薄じゃった」
道士「しかし、ワシらは陽で奴は陰 水と油のごとく、相容れぬ関係じゃ 生者と死霊の接触は、不幸しかもたらさん」
道士「他人の幸せを踏みにじろうとも 人々から恨まれようとも、悪を滅する 夢幻道士とはそういう仕事じゃ」
シェイシェイ「そう、ですか」
道士(・・・・・・)
〇テクスチャ3
お人好しめ、無造作に同情しよって
武芸の腕は確かだが
生来の甘さが足を引っ張っとる
ここは1つ、心の鍛練を授けるとしよう
〇並木道
道士「今から宿題を課す」
シェイシェイ「しゅ、宿題ですか?」
道士「嫌そうな顔をするな なにも算数ドリルや 読書感想文をやれとは言っとらん」
道士「今から1週間、壺の見張りを命ずる」
シェイシェイ「壺って 昨夜悪霊を封じこめた 魔封の壺のことですか?」
道士「さよう」
〇地下室
壺は寺の地下室に厳重に保管されとる
お前は1週間、コレと夜を共にするのじゃ
〇並木道
道士「部屋には錠をかける 甘言にそそのかされ、札をはがした日には お前の肉体は乗っ取られることじゃろう」
シェイシェイ「の、乗っ取られるとどうなるです?」
道士「犬と同じじゃ お前の魂はオン出され、好き勝手操縦される」
シェイシェイ「それでは、オン出された僕の魂はいずこへ?」
道士「怨霊に食われるか 誰にも認知されずに悠久をさまようか その場で蒸発するか・・・・・・」
シェイシェイ「なんだか釈然としませんね」
道士「実際に体験した訳じゃないからな」
シェイシェイ「とにかく ロクな最期にならないのはわかりました」
道士「話を聞いて怖じ気づいたか?」
シェイシェイ「怖くないといえば嘘になりますが 敵の心情を知るいい機会だと思います」
道士「よく言った!」
道士「昨日も言うたが、ヤツの話に耳を貸すな どんなデマカセを言うかわからんぞ」
シェイシェイ「はい!」
道士「宿題は今夜7時から、逃げるでないぞ」
シェイシェイ「わかっています」
道士「ワシャこのあと祭事を頼まれとる お前は静かな場所で勉強でもしとれ」
道士「知っとるぞ 通信制高校のカリキュラムを受けとるのは」
シェイシェイ「お恥ずかしい、18歳にして高校1年生です」
道士「恥ずることはない 成功の秘訣は、挑戦から逃げぬこと」
道士「それでは今夜、また寺で」
シェイシェイ「お気をつけて!」
シェイシェイ(・・・・・・)
〇空
図書館でも行くか
〇中央図書館
中央図書館
――の左手前に木が1本
ぐるりを少年少女が取り囲み
心配そうな面持ちで見上げている
彼らに紛れ
津々浦うらら、名古屋チャコの姿も
チャコ「今行くぞゴラァ!!」
うらら「やめなさいって」
シェイシェイ「なにかあったのかい?」
チャコ「シェイシェイか、上を見てみろよ」
シェイシェイ「上?」
〇木の上
ニャンコ「ふにゃ~ん」
〇中央図書館
シェイシェイ「はは~ん、降りられなくなったんだな」
うらら「助けてあげられないかしら」
チャコ「やっぱり私が登って──」
うらら「チャコちゃんは高所恐怖症でしょーが!」
シェイシェイ「ちょっと失礼」
なにを思ったか、シェイシェイは
子供らのおなかをさすって回った
チャコ「おい、一体なにを?」
シェイシェイ「君のおなかは・・・・・・」
チャコ「ナチュラルにセクハラするのはやめろ」
シェイシェイ「う~ん、ちょっと固いな」
シェイシェイ「えっと、君のは・・・・・・」
うらら「めっ!」
そこのキミ!
男の子「ボ、ボクですか?」
シェイシェイ「名前は?」
凡太郎「凡太郎です」
シェイシェイ「OK凡ちゃん! すまないが木の下で 仰向けに寝そべってくれないか?」
そうそうその辺、どうもありがとう!
女の子「あのお兄さん、一体なにする気かしら?」
女の子「凡ちゃ~ん、あんまり無理しないでね!」
シェイシェイ「僕は後ずさり後ずさり」
〇開けた交差点
シェイシェイ「行くぞ!!」
〇中央図書館
ホップ!
ステップ!!
〇木の上
ドロップ・キッ~ク!!!
〇木の上
ニャンコ「ニャッ!?」
〇中央図書館
木の下で寝そべる
凡太郎のおなかがクッションとなり
ニャンコは一命をとりとめた
〇中央図書館
「ハッピーハッピーハッピー♪」
「ハピハピハピハピハピー♪」
〇中央図書館
うらら「やるじゃない!」
チャコ「あの大木を揺らすたァ、大した脚力だ!」
うらら(猫が落ちる地点まで 計算に入れるなんて・・・・・・)
シェイシェイ「ははは、ざっとこんなモンですよ!」
気をよくしたシェイシェイは
木をパァン! とはたいた
すると、首筋になにかが落ちてきた
〇中央図書館
シェイシェイ「ヘヘ、へへへ、ヘビィ!!」
みんな逃げろ! あぶないぞ!!
うひょ~! 首に巻きついた!!
グギギ・・・・・・
〇中央図書館
ニャンコ「シャーッ!!」
シュルル・・・・・・
ニャンコの奇襲に
ヘビはおそれをなして逃げていった
「ツエー!! カックイイー!!」
シェイシェイ「あ、ありがとう。助かったよ」
ニャンコ「ニャーン」
子供らは小さな英雄を担ぎ上げ
意気揚々と去っていった
うらら「お株を奪われたわね」
シェイシェイ「こーゆー時もあるさ」
チャコ「今日はなんの用だ?」
シェイシェイ「あぁ、図書館へちょっと」
チャコ「悪魔払いの勉強でもしようってのか?」
シェイシェイ「いや、シャリ(社会と理科)を少々」
うらら「あの・・・・・・」
うらら「・・・・・・」
うらら「勉強、頑張ってね」
シェイシェイ「あ、ありがとう!」
〇空
かくして、高校生組も別れた
〇空
〇中央図書館
シェイシェイ(アカン、ちっともわからなかった)
〇屋根の上
修行も勉強も上手くいかないなァ
〇けもの道
ホウ・・・・・・ホウ・・・・・・
〇銀閣寺
郊外の森の奥に、寺が1軒
今晩から1週間
ここがシェイシェイの寝床となる
〇地下室
道士「それでは、カギをかけるぞ」
シェイシェイ「お願いします」
シクシク・・・・・・
シェイシェイ「まだ泣いてる」
道士「泣き落としじゃ」
道士「キャツはあの手この手で 封印を解かそうと誘いをかけてくる」
道士「耳を傾けず、誘惑に打ち勝つのじゃ」
道士「できるなシェイシェイ?」
シェイシェイ「はい」
道士「では、ワシは行くとしよう 健闘を祈る!」
シェイシェイ「とまぁ、そういう訳だ これから1週間、よろしく頼む」
グスン
筆記用具なんか持ってきて・・・・・・
この状況で、キミは勉強する気なの?
シェイシェイ「あぁ、毎日宿題が山積みさ」
シェイシェイ「黙ってくれれば勉強がはかどるんだけど どうせ抵抗するんだろ?」
シェイシェイ「やるならさっさとやってくれ 一体どうするんだ?」
シェイシェイ「僕を操ってお札をはがすか? それとも先生のいうように 口八丁で籠絡し、お札をはがさせるか?」
結論を急いじゃいけない
まだ時間はたっぷりある
邪魔しないから
キミは勉強に専念するといい
シェイシェイ「先に信頼関係を作っておいて あとになって利用する気だな?」
いくら敵じゃないと言っても
どうせ信じやすまい
少しずつ、ゆっくりと
ボクの人品を理解してもらうまでさ
ふふふふふ・・・・・・
シェイシェイ「不気味な奴だ」
さぁ、勉学に励みたまえ
成績が悪いのをボクのせいにされちゃ敵わん
シェイシェイ「・・・・・・」
〇銀閣寺
不穏に思いながら
シェイシェイはしずしずと勉強に励んだ
〇地下室
シェイシェイ(静かは静かだけど、かえって落ち着かないな)
どうした?
さっきから手が止まっているじゃないか
シェイシェイ(誰のせいだ、誰の!)
景気づけに
歌でも歌ってあげようか?
♪みっちゃんミチミチ──
シェイシェイ「や、やめろ、その歌は!!」
え~?
坊やは喜んでくれたけどなァ
〇動物
坊や? ああ、あの子か
彼にはずいぶん嫌われたモンだ
〇地下室
シェイシェイ「子供はバッチいのが好きだから」
あの子、今頃どうしてるだろう
シェイシェイ「心配なのか?」
そりゃあ仲がよかったから
〇学生の一人部屋
ペットとしか思われてなかったけど
それでも幸せだった
幸せだったんだ・・・・・・
〇地下室
キミらはボクを悪とみなして
駆除するのが仕事のようだけど──
ボクに言わせりゃ
キミらの方がよほどエゴイストさ
正義の味方ヅラして
他人の幸せを取り上げるのは
どんな気分だい?
シェイシェイ「それに関しちゃ一家言あるが 長くなるので割愛させてもらう」
シェイシェイ「1つ言えるのは キミがあのまま犬のフリを続けていたら いずれ一家に災厄が降りかかったことだろう」
シェイシェイ「悪意がなくとも 死霊との接触は、不幸しかもたらさない」
シェイシェイ「他人の幸せを踏みにじろうとも 人々から恨まれようとも、悪を滅する 夢幻道士とはそういう仕事さ」
シェイシェイ(なーんて、先生の受け売りだけど)
詭弁だね
善か悪かなんて
人間の定めた基準に過ぎないだろう?
〇一戸建ての庭先
その証拠に
ボクが死んで、家族は悲しみに暮れた
〇地下室
ボクは真剣に家族の幸せを考えていた
不幸をもたらしたのはキミたちだ
シェイシェイ「その場限りで言えば、そうかもしれない」
シェイシェイ「でも長い目で見て のちのちもっと不幸な目に 遭ったかもしれない」
シェイシェイ「結果的に ダメージを最小限に抑えられたはずだ」
見苦しい・・・・・・
君らは仕事に失敗すると
アレコレ理由をつけて言い訳をはかる
かわいいのは我が身で
他人のことなぞ毛ほども考えちゃいない
ヘドが出る
シェイシェイ「なんとでも言うがいいさ」
シェイシェイ「僕は人間だ キミには気の毒だが 軋轢がある以上、人間につく」
生者ファーストか
だけどボクら魑魅魍魎にも
いい奴はいるんだぜ
シェイシェイ「君がいい奴だというんなら 1週間、口にチャックしてもらいたいね」
それはムリな相談だ
根っからのおしゃべりなモンで
せめて勉強に専念できるよう
目一杯応援してあげよう
シェイシェイ「応援ねぇ」
シェイシェイ、頑張って!
〇カラフル
うらら「シェイシェイ、頑張って!」
〇地下室
シェイシェイ「な、なんて卑劣な奴だ! よりによって、うららちゃんを騙るとは!」
やる気出た?
シェイシェイ「出る訳ないだろう!」
シェイシェイ(ったく、とんでもない奴だ)
シェイシェイ(・・・・・・)
シェイシェイ「も、もう1回、言ってくれないか?」
シェイシェイ
テストでいい点取れたらチュウしてあげる♪
シェイシェイ「・・・・・・」
〇銀閣寺
ボクが言うのも難だが
もう少し警戒心を持った方がいいヨ?
今回はシェイシェイのキャラがよくわかった感じで、楽しかったです。悪霊側の言い分もあり、考えさせられる内容ですね!
創作をしていると孤独な時もありますね、互いに応援できればいいですね。タップノベル楽しみましょう。いつか遊びに来てください👍