エリシアとアリエイルの覚悟(脚本)
〇養護施設の庭
仮面の男「・・・お前は」
ガロ「や~、ここでジャマすんのは無粋じゃないっすか?」
仮面の男「・・・貴様、なぜ生きている・・・」
ガロ「あいにくと、腹を抉られたくらいで死んでちゃ朱凰騎士団の小隊長はやってられないんっすよ」
ガロ「それでも山の中に捨てられたせいで、戻って来るのにずいぶん時間が掛かりましたけどね」
エリシア「ガロ・・・」
ガロ「団長殿・・・」
ガロ「きょうだい水入らずを邪魔する野暮な客人は、自分にお任せを」
エリシア「・・・あぁ、任せた」
ガロ「りょ~かいっす!」
仮面の男「お、おのれ・・・」
ガロ「自分らは邪魔なんで、ちょっと離れましょうか」
仮面の男「ぐっ!」
〇霧の立ち込める森
仮面の男「手負いの雑魚が!いきがりおって!」
仮面の男「俺の一撃で腹を抉られ、地に臥したことも忘れたか!」
ガロ「忘れちゃいないし、負けたことを否定する気もないっすよ」
ガロ「そして、そのせいで団長殿が窮地に立たされていることも・・・」
ガロ「だから、あんただけでも自分が討たなきゃカッコがつかないんすよ」
仮面の男「立っているのもやっとの状態で、俺に勝てると思っているのか?」
ガロ「・・・教えてやるよ」
ガロ「不意打ちでなければ、お前はラン・バベルどころか手負いの雑魚一人にすら敵わないってことをな」
〇養護施設の庭
エリシア「・・・ぐ」
魔護神「お姉様・・・放してください・・・お願いです・・・」
エリシア「ダメだ、絶対に放さん・・・」
魔護神「なぜですか・・・僕はもう・・・」
エリシア「アリエイルが・・・心の底から「魔護神」になりたいというのなら・・・私は止めん・・・」
エリシア「だが、自分を犠牲にして・・・私達から離れようと言うなら・・・絶対に許さない」
魔護神「・・・」
エリシア「完全に「魔護神」として覚醒しきったら・・・人の意思など無くなる・・・自害しようとしても・・・無駄だ・・・」
魔護神「・・・なぜ・・・わかるのですか」
魔護神「自害なんて・・・僕は・・・」
エリシア「わかるさ、私はアリエイル・バベルの・・・お姉ちゃんだからな・・・」
魔護神「・・・お姉様・・・」
エリシア「ぐぅ!あぁ!!」
魔護神「お姉様・・・放して・・・自分では・・・止められないんです・・・」
エリシア「だ、大丈夫だアリエイル・・・私に・・・」
エリシア「いや、私達に任せておけ・・・」
伝令兵「団長殿!!」
魔護神「あれは・・・」
エリシア「アリィの心は清らかなまま・・・悪意に染まってなどいない・・・」
エリシア「ならば・・・「魔護神」の覚醒には、外部的な要因があるはずだ・・・」
「ぐぅっ!」
兵士C「かぁはっ!!」
仮面の男「・・・くっ」
仮面の男「な、なぜわかった・・・」
エリシア「お父様が教えてくれた・・・」
エリシア「一流の剣士なら、斬り口だけで相手の太刀筋や力量がわかる」
エリシア「お父様は、族の手掛かりを残して下さったのだ」
エリシア「そのおかげで気付けた・・・」
エリシア「そして確信した・・・私が討った者と、お父様と戦ったガロモドキは別人」
エリシア「となれば、とうぜん他にも間者がいると思い至る・・・」
仮面の男「そうか・・・」
〇養護施設の庭
エリシア「お前達は陛下を護れ、そして伝えろ・・・偽りの仮面が現れたと・・・」
〇養護施設の庭
仮面の男「偽りの仮面とはヤツのことではなく、姿を見せぬ俺のことだったのか・・・」
エリシア「ノックもできん貴様や私と違って、我が国の兵は優秀でな」
伝令兵「団長殿!」
エリシア「ありがとう、もう大丈夫だ・・・」
エリシア「貴様がアリエイルの不安や恐れに付け込み、無理やり「魔護神」に覚醒させようとした」
エリシア「そんな方法があるとは初耳だが、「魔護神」を信仰している国なら有り得なくもない話だ・・・」
仮面の男「推測だけで時間稼ぎをしていたわけか」
エリシア「時間稼ぎなどしてない」
エリシア「愛する弟を愛でていただけさ」
魔護神「お姉様・・・」
エリシア「アリエイル・・・」
エリシア「もう一度、私を信じてくれるか?」
魔護神「・・・」
魔護神「お姉様のことはずっと信じています」
魔護神「ずっとずっと信じている、世界一大好きで愛しているヒトです」
エリシア「・・・」
エリシア「ありがとう・・・」
仮面の男「・・・」
仮面の男「油断大敵だ!!エリシア・バベル!!」
仮面の男「!?」
エリシア「もう二度と、油断などしない・・・」
仮面の男「ぐはぁあああ!!」
エリシア「もう二度と、悲しませない・・・」
エリシア「二度と目を離さない・・・」
エリシア「アリエイルは、弟は私が護る!!」
仮面の男「ぐ・・・おぉ・・・」
仮面の男「ぐ・・・力が・・・」
仮面の男「お・・・おぉおおおおおお!!」
エリシア「アリエイル・・・」
仮面の男「・・・お、のれぇ・・・」
仮面の男「これで終わったと思うな・・・」
仮面の男「「まもりがみ」を狙っているのは我々だけでは・・・」
エリシア「・・・関係ない」
エリシア「相手がどこの誰だろうが・・・」
エリシア「何万・・・何十万・・・何百万の軍勢だろうが・・・」
エリシア「弟は・・・」
エリシア「アリエイルは、私が護る!!」
仮面の男「・・・」
仮面の男「・・・ならば地獄で見届けよう」
仮面の男「「まもりがみ」を・・・守護する者の末路を・・・」
仮面の男「地獄の底で・・・更に苛烈な生き地獄でもがく、貴様らをなぁ!!」
エリシア「・・・」
エリシア「望むところだ」
〇養護施設の庭
ガロ「おはようございまっす」
レオナルド「おはよう、もう傷は良いのか?」
ガロ「そりゃもう、いつまでも寝てる訳にはいかないっすから」
ガロ「・・・ん?」
ガロ「アレ?団長殿は?」
レオナルド「・・・ん・・・あぁ・・・団長殿は・・・」
アリエイル「・・・」
ガロ「ん?アレはアリエイル様・・・っで、その背中にくっついているのは・・・」
エリシア「・・・」
アリエイル「はっ!はっ!はっ!」
エリシア「(じ~)」
アリエイル「はっ、はっ、はっ・・・」
エリシア「(じ~)」
アリエイル「あ、あの・・・お姉様?」
エリシア「どうした?アリエイル」
アリエイル「稽古を見て頂けるのは嬉しいのですが・・・」
アリエイル「あまりくっつかれると、少し動きづらいです・・・」
エリシア「気にするな、ホラそこはもっとこうして・・・」
ガロ「・・・」
ガロ「・・・なんなんすかアレ?二人羽織り?」
レオナルド「稽古らしい・・・一応」
ガロ「きょうだいがイチャイチャしてるようにしか見えないっすけど」
レオナルド「まぁ、素直になったというべきか・・・」
ガロ「素直にねぇ・・・」
セリファ「ごめんなさい、少し大目に見てやってください」
レオナルド「セリファ様」
セリファ「真実を乗り越えるに、あの子達は若すぎる」
セリファ「あの子達は、まだまだ二人で支え合う必要があるのかも知れない」
ガロ「そうかも・・・知れないっすね」
レオナルド「セリファ様、ラン・バベル殿の容態は?」
セリファ「もう二度と剣を握ることは無いでしょう・・・」
セリファ「もっとも、命を取り留めているだけでも奇跡のようなものですが・・・」
ガロ「あの仮面2人を同時に相手してたわけっすからね」
ガロ「さすがは、ラン・バベル殿っす」
レオナルド「今後は、どうされるおつもりですか?」
ガロ「バルバスには「まもりがみ」のことはバレちゃったんっすよね?また前のように狙われたり・・・」
セリファ「陛下は、アリエイルのことを友好国へ通達するそうです」
ガロ「えっ?」
セリファ「「まもりがみ」・・・アリエイルはすでに自分の意志を持っている」
セリファ「今のアリエイルを「魔護神」とするには、先日以上の強引な手を使わざるを得ません」
セリファ「国別に見れば「魔護神」より「守り神」を信仰している国の方が遥かに多い」
セリファ「そんな中、再びバルバスが同じような手を使えば「守り神」信仰国の反発は必至」
レオナルド「アリエイル様の現状が他国に知れ渡ったことで、バルバスも下手に手を出せなくなった・・・と?」
セリファ「下手をすれば連合軍同士の大戦に発展しますから」
セリファ「もっとも、それで全ての危険が排除されたわけではありません」
セリファ「今までのような生活を送ることは困難でしょう・・・」
セリファ「いえ、間違いなく2人には苦難の道が待っている・・・」
セリファ「そのことは2人も承知しています」
セリファ「その上で、あの子達は手を取り合うことを選びました」
セリファ「私も母親として、2人を支えていくつもりです」
ガロ「アリエイル様は、「守り神」になられるおつもりなんっすかねぇ」
セリファ「どちらかを選べと言われれば、そうなるでしょう・・・」
ガロ「しかし「守り神」だから問題無いとも言い切れないっすよね」
ガロ「バルバスとは逆の立場で、同じくらい過激な国もあるらしいっすし・・・」
セリファ「そうですね・・・」
レオナルド「陛下は今後のことを、アリエイル様と団長殿の意志に任せるそうですね」
セリファ「陛下には感謝してもしきれません」
セリファ「今あの子達は、必死に自分達で答えを出そうともがいている」
セリファ「私も、アリエイルの決断を待ちたいと思います」
セリファ「あの子達の、母親として・・・」
セリファ「副長さん、ガロさん、今しばらく二人のことを宜しくお願いします」
レオナルド「はい、お任せください」
ガロ「今度こそ・・・」
セリファ「エリシア、アリエイル・・・」
セリファ「きっと大丈夫・・・」
セリファ「アナタ達は・・・」
アリエイル「お、お姉様・・・やっぱり動きづらいです・・・」
エリシア「まぁまぁ、良いではないか♥」
エリシア「ほら、もっと脇を締めて・・・」
エリシア「(ぎゅ~♥)」
アリエイル「お、お姉様~」
セリファ「アナタ達は、2人きりじゃないから・・・」
読みました!
設定や情報の出し方、バトル演出など読みやすく
またエリシアの、弟君への想いがビシバシ伝わって来ました♪
魅力的な主人公だったと思います!!