いつか日の目を見る太郎7

もりのてるは

復活!過疎地域 勃興編(脚本)

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〇荒野
  しみったれの人生を考えさせられる午後1時。
  負け続けて、負け続けて、負け癖の付いた愚か者たちが集い、行くあてもなく彷徨う。生きながらにして屍。
  出ては入り、入っては出てを繰り返した先に、とうとう出る場所も入る場所も失って、人生のどん詰まり、圧倒的な壁にぶち当たり、
  爪が削れるほどしがみついても登ること叶わず、ただ延々と涎を垂らし、bescumber、思えばこの身一つ。
  まるで動物のごとく、思考すらも奪われ、
  登りきることの叶わぬ壁を、
  登らされる毎日に次第に慣れ、鈍化し、機械と化す哀れな人間。神の最高傑作を、ただ糞尿と無益な労働に費やす。
  そんな哀れな人間どもの集う、ここが限界集落。
  とどのつまり、過疎った人材の墓場。
ラファエロ「さっさと働けオラ!ピッピッピー!オラ! てめぇには肖像権なんかねーぞ!オラ! 人権もねぇぞ!オラ!」
ラファエロ「金もねぇ、女もいねぇ、ベコを買う余裕もねぇ。お前ら全員、東京に行くこともできずに野垂れ死ねぇ!」
  まるでブラック吉幾三。こんな職場嫌だぁ。
  地獄を出ることなどできず、花の都大東京など夢のまた夢。
  思いでの後先、飲みこんだ辛酸に溶ける食道。
  汗水を垂らし、穴を掘っては埋め、掘っては埋めの成果なき労働。
  考えたら負け。働いても負け。勝つこと叶わぬブラック職場。

〇荒野
アガタ ヒカル「病気になりてぇ・・・、四肢がもげないかな・・・」
  自分をメダロットか何かと考える男一人。
  メダロット。古き言葉。分らぬ御仁にご説明。
  ロボットとロボットを戦わせる漫画、メダロット。
  ロボットの四肢、交換可能。
  心臓であるメダル、交換可能。
  自らの四肢も、魂も、全て交換したいと望む男。
  名を、アガタ・ヒカル。髪の毛の半分金髪、もう半分、黒髪。
  祭りに出ているくじ引き露店に突撃。はずれクジしかないことを暴き、世間の反発に合い、島流しにあって流れ着いた限界集落。
  夢はトップ動画配信者。されど、今はただの労働者。
アガタ ヒカル「キララちゃん・・・キララちゃん・・・」

〇おしゃれな住宅街
  思うは、兵庫県に残した彼女、キララ。
  整形に次ぐ整形で顔面が扇風機と化すかと思いきや、意外や意外、人形のごとく美しくなった女。ヒカルのために整形、整形。
  出身大学、成蹊大学。
  成蹊大学、経済学部政治学科卒業の整形、アキタ・キララ。
  遥か遠くで思い人を待ち続ける、健気な女。

〇荒野
ラファエロ「おい!そこ!しゃべるんじゃねぇ!お前には発言権はねぇ!」
  先ほどからしきりに怒鳴る男。「〇〇ねぇ!〇〇ねぇ!」が口癖の、無いもの尽くしの中年。
  名をラファエロ。
  日の光が嫌いで、白い仮面を付けた男。
  スウェットのような服を着て、腕には高級時計のロレックス。
  ポク電公社、地域活性化支部、本部長。
  過疎地域の年寄りどもを破竹の勢いで騙し、NHK受信料の支払いを契約。
  受信料戦国合戦があったならば、武田信玄並みの成果を上げ、餅が出来上がるレベル。
  もとはフランスから宣教師としてやってきたが、日本人の低レベルさに味をしめ、
  流ちょうにしゃべれるにも関わらず、カタコトの日本語を使うという、ボビー・オロゴン殺法を駆使し、
  日本人、とりわけ老人の心を鷲掴み、
  谷亮子も畏敬の念を抱くほどの一本背負いで、契約を勝ち取った男。
  その能力を買われポク電公社に入社。即本部長。
  付いたあだ名が、『大ペテン使』。その他にも『いやらしい神』
  『フランシスコ・ラファエロ』などなどある。
  ちなみに本名は、パンティーノ・ヒモ・ベロベロブコフ
アガタ ヒカル「うっ・・・くそ・・・」
  猛暑。照り付ける太陽に力を無くし、倒れるもの続出。
  ヒカルも御多分にもれず、バッタリと地面に倒れこむ。
  穴を掘っては埋め、掘っては埋めの何の意味もない作業。
  髪の毛の半分が黒いため、もう半分の金髪部分よりも多くの光を吸収し、頭部の片側が猛烈に熱を持つという異常事態。
アガタ ヒカル「アイム・・・アライブ・・・???」
ラファエロ「いい加減にシーア!」
  このネタ誰が分かるか。
  倒れこむ者に水をぶっかけ、目覚めさせては労働させる始末。
  意味を考えては負けの、何の利益も生まない作業。
ラファエロ「はいはいはい。もういいです。お前らは雑魚以下の稚魚です」
ラファエロ「今日も人生の時間を無駄にしました。平日は奴隷のごとく働いて、」
ラファエロ「休日の半日をベッドの上で寝て過ごし、ダラダラyoutubeを見て、」
ラファエロ「あー、今日も無駄な時間すごしちゃったーと嘆きながらも、己の怠惰から抜け出せないダメな社会人以下の人間です!」
「えっさ、ほいっさ」
ラファエロ「はいはいはい。勝手に撤収してろ。鰯以下の奴隷諸君」
ラファエロ「えっさ、ほいっさ」
  ラファエロの言葉、聞こえているのか、聞こえていないのか。
  しきりに、働くもの一人。
ラファエロ「おい、そこ!さっさとどっか行け!」
「えっさ、ほいさ」
ラファエロ「おい!てめぇ!聞こえてんのか!さっさとどっか行けよ!終わったんだよ!」
「えっさ、ほいさ」
  止まらぬ者ありて、ラファエロの怒り、頂点に達し、
ラファエロ「てめぇ、この野郎!やめろって言ってんだろうが!」

〇荒野
「な、な、な、なんですとぉ!!!!!!?????」
  驚天動地。びっくりしゃっくりクリニック。
  驚きつつ、持っていたスコップを放り投げた男。
  くるくると宙を舞い、勢いよく地面へと突き刺さった。
  その男、全身からは滝のごとく汗をかき、
  目、燦燦と輝き、
  まるで、楽しみを奪われた子供のように、がっかりとした表情で、
いつか日の目を見る太郎「も、もう、終わりなんですかいな!!!!???」
ラファエロ「な、なんだてめぇ・・・」
  もっと続けたいと言わんばかりの、過剰労働好きな男。
  否、この男にとって過剰な労働なものなどない。
  その男、顔に二つの太陽を持つ男。
  生まれは下総の国。父と母の顔を知らず、
  マグロ漁船に乗り込み、
  海水で生命を食いつないだ男。どれだけ過酷な環境にあっても、決して折れぬ心。
  ときに太陽のごとく明るい心と、時に夏に吹く風のごとく人を救う気持ち良き男。
  底抜けに馬鹿で間抜けだが、まっすぐに生きてきた男。嘘偽りなくまっさらな、一点の曇りなき魂を持つ男。
  いつかいつかと、日の目を見る日を待ち望み続ける男。
  我らが主人公、いつか日の目を見る太郎。
いつか日の目を見る太郎「は、はいな!社長秘書になりました!入社して三か月、新入社員兼秘書、いつか日の目を見る太郎と申します!」
ラファエロ「ななななななな、なんで社長秘書がこんなとこにいるんだよ!!!!!」
いつか日の目を見る太郎「秘書だから、避暑地に行け!ってことなんでしょうかねぇ」
  社長秘書となったいつか日の目を見る太郎。しかし、ポク電公社、社長秘書、総勢47名。いつか日の目を見る太郎、47人目。
  序列から言えば下の下。しかし、忍耐強さは神崎与五郎並み。
  ポク電公社、47人の社長秘書。ついた名が『ポク電四十七士』
  社のトップ、万歳田山椒を長として、名だたる精鋭によって組織されているが、
  いつか日の目を見る太郎、なぜかここに組み入れられた。当の万歳田山椒、原因不明の高熱を出して入院。
  刃傷沙汰以上に、人情沙汰にやられて高熱。
  特に尻の痛みが激しく、これぞ臀部の痛み待つの老化。
  変わって、徳野池どん床による指揮を受け、過疎地域に派遣されたいつか日の目を見る太郎。
  そんな組織の人事、知る由もなきラファエロ。
ラファエロ「ふざけんな、ふざけんな。今日の労働は終わりだ!」
いつか日の目を見る太郎「では、お給料を渡さなければなりませんでしょう!」
ラファエロ「給料は月末にまとめて払う。日払いなんてしてねぇ」
いつか日の目を見る太郎「でも、みてくださいな!疲れ切ってますな、みなさん!ほら!」
  見れば、穴を掘っては埋めの作業で、心も体も疲弊した労働者たち。
アガタ ヒカル「キララちゃんに、、、キララちゃんに会いたい・・・」
  げっそりと痩せこけた頬、くの字に曲がった背。ヒカル、ふらふらといつか日の目を見る太郎によりかかり、
アガタ ヒカル「おれが・・・こんなところでめげたら、キララちゃんに、、、キララちゃんに・・・」
  目元から、染み出すように涙。
アガタ ヒカル「キララちゃんに、会わせる顔がねぇ・・・」
  いつか日の目を見る太郎、しっかとヒカルの目を見つめる。
  頭部の片側、熱を持った黒髪の方を手で押さえ、太陽の光を遮り、自身の二つの太陽。眼をぐっとラファエロに向け、
いつか日の目を見る太郎「お給料、日払いにせんと、いかんですな!」
ラファエロ「てめぇが決めるな!馬鹿野郎!」
  されど、ラファエロの脳裏、フラッシュバックする過去。

〇広い公園
  穴を掘っては埋めの作業。実は意外な高利益。
  固い土壌を柔らかくすることで、公園などの公共施設に有利。
  なぜなら、公園で遊ぶ子供たち。転んでもやわらかき地面であれば、ケガの大小が変化。固い地面にぶつかれば大怪我。
  しかし、やわらかければ、土遊び、遊具の建設、走り回って転んでも被害少ない。
  後の未来の子供たちのための労働。そのために費やされる、大人たちの労働。
  しかし、その金、大半をキャバクラの女に使い尽くし、ほとんど貯金ゼロ。スズメの涙ほどの給料も払えぬ状況。
  ラファエロ、ぐぐぐっと噛み締める歯と歯。

〇荒野
いつか日の目を見る太郎「働く方たちを、労ってこそ、労働ですな。労いのある働き、それが労働ですな!」
ラファエロ「うるせぇ!馬鹿に払う金なんてねーんだよ!」
いつか日の目を見る太郎「馬鹿が動かしてる世の中なのにですかな!?」
  燦燦と輝く眼。ラファエロの心の奥、闇の闇を貫く光。
  光を顔に宿す男、いつか日の目を見る太郎。
  その男の前で、偽りの心、破壊されるは当然の事象。
ラファエロ「な、なんだと・・・俺は、馬鹿じゃねぇ・・・」
いつか日の目を見る太郎「おらは馬鹿です。でもね、馬鹿は馬鹿なりにやってきました」
いつか日の目を見る太郎「大して誇れる人生じゃない。でも、おらにはやり残したことばかりですな」
いつか日の目を見る太郎「このポク電公社。大変につらい場所だと聞きました。何人かはビルから飛び降りたとも聞きました」
いつか日の目を見る太郎「この世の中ね、自ら死んじゃう人だっておりますよ」
いつか日の目を見る太郎「自分をここまで育ててくれた親に、泣きながら謝って死んじゃう人だっておりますよ」
いつか日の目を見る太郎「おらは、そんな人たちの力になりたいんです。少しでも、おらは、馬鹿だけど、力になりたいんです」
いつか日の目を見る太郎「競馬だって、馬と騎手が一緒になって走って競い合うじゃないですか。そこに大勢の人が、お金を使ってくれるじゃないですか」
いつか日の目を見る太郎「人だって同じですな。誰かが働いて、その働きを受けて前に進む騎手がいる」
いつか日の目を見る太郎「ラファエロさん。あなたはここの騎手なんじゃないですか。旗を持って、進むべき方向に、」
いつか日の目を見る太郎「良い方向に進ませてくれる旗手なんじゃないですか」
いつか日の目を見る太郎「携帯会社にいけば、簡単に機種変更できますけどね」
いつか日の目を見る太郎「会社の旗手は、そう簡単には変更できんとですな!!!!」
  ガツンッと、ガツンッと、胸を打たれてラファエロ、後退。
アガタ ヒカル「キララちゃん・・・」
  疲れ切って、朦朧と意識の中、愛する人の名を叫ぶ男、一人。
ラファエロ「くっ、社長秘書のくせに生意気な・・・」
  悪態を付けども、ラファエロ。なぜか目から零れる涙。

〇外国の田舎町
  思えばフランス時代、誰とも馴染めなかった学生時代。
  フランス国民の恥とも罵られて、逃げ出すように祖国を飛び出した。
  日本にいれば、自分を笑うものなどいない。
  誰もが、話を聞いてくれる。まるで新しいものを見るかのような目で、
幼きラファエロ「カムカムエブリバディ」
  フランス語ではなく、なぜか英語だったが、日本人は物珍しさに驚嘆。
幼きラファエロ「ポン酢あーる。ナガジュバーン、ハダジュバーン」
  エセフランス語でチヤホヤ。茶屋の娘とイチャイチャ。
  繰り返していくうちに、腐った魂。
  どうしようもなく、カビの生えた自らの魂。
  腐るところまで腐って、珍味にもなれずに破棄されて、それでも、才気だけでのし上がってきた。
  だが、ふと頭をもたげる言葉。

〇荒野
ラファエロ「俺は、間違っていたのか?」
  心の声、ぽろりと零れ、そこに射す光。
いつか日の目を見る太郎「間違いなんてないですな。今を正しく生きていれば」
  だらだらと流れる涙に、ラファエロ、自分でも訳が分からず嗚咽。
ラファエロ「がっとヒカルに歩み寄り、」
ラファエロ「すまねぇ、すまねぇ。俺が悪かったねぇ、悪かったねぇ」
  故郷フランス。父と母の愛に育まれて、すくすくと育ち。
  悲しいかな不運な環境にあって、逃れ逃れて日本にたどり着き、甘さに身を委ね、いつの間にか落ちぶれて、
  袖に涙の降りかかる毎日。
  今、ようやく人生の正しさに気づき、
  涙とともに過去を悔いて懺悔するラファエロ。
  その顔をじっと見るヒカル。
アガタ ヒカル「辛かったですよ、ラファエロさん。でもねぇ、あなたは僕にこう言いました」
アガタ ヒカル「意味のねぇ労働だろうがねぇ、やってれば意味がついてくるねぇとね」
アガタ ヒカル「俺は、信じてましたよ。どれだけ、どれだけ俺たちを奴隷のように扱っても、俺は信じてました」
アガタ ヒカル「そして、きっとみんなもそうです。きっと、きっと ラファエロさんのやることだ。何か、何かあるって」
アガタ ヒカル「この村は、人口の半分以上が後期高齢者です。過疎地域ってやつで、若者はほとんどいません」
アガタ ヒカル「そんなところで、穴を掘っては埋め、穴を掘っては埋め。死にたくなりましたよ」
アガタ ヒカル「でも、俺には愛する人がいる」
アガタ ヒカル「俺の帰りを待っていてくれる人がいる」
アガタ ヒカル「その人のために、俺は一所懸命に生きたいんですよ」
アガタ ヒカル「愛してくれる人のためなら、死んだっていいんです」
アガタ ヒカル「そうですよね、そこの、お兄さん」
  いつか日の目を見る太郎、にっこりと笑う。
いつか日の目を見る太郎「はいなっ!」
  こののち、ラファエロ、改心。
  ヒカル、トップ動画配信者となり、兵庫に残した女、キララを呼び寄せ、
  二人で、過疎地域を盛り上げた結果。

〇高層ビル群
  奇跡の勃興。北海道は夕張、ニセコに次ぐ、第三の革命の地となって、過疎地域、まさかの人で大繁盛。
  場所については、明言は避けておこう。
  やがて、ヒカルは勃興した地域の長となり、政界進出。
  アパレルブランドを開業。お笑い芸人とタッグを組んで焼き肉店を成功させる。
  一方、キララはブランド品をネット販売。女性向けのランジェリーも販売。
  自身もトップモデルとして、整形した女性だけの専門誌『メカニカル・フェイス』を創刊。
  やがて夫婦となって、日本中を巻き込んで発展していく。
  ラファエロ、陰ながら二人をサポートし、大勢の人々に見守られて95年の人生全う。
  後進に多大なる影響を与えることとなる。
  さて、ではいつか日の目を見る太郎はこののち、どうなっていったか。
  それはまた、次回のお話で。

コメント

  • 昨今の人気YouTuberのパロディもあって、なんだか近い将来の話を見ているような感覚でした。
    でもメダロットは懐かしい!その辺のチョイスがもしかしたら私と年代が被ってるのかもしれません。

  • 今回も見る太郎さん冴えてました! ラファエロのようなタイプまで改心させてしまうとは、本当に圧巻です。見る太郎さんに支えられた人達がどんどん幸せをつかんでいく様が嬉しい!

  • 私にとって太郎さん2作目でした。太郎さん今回もまぶしいな!!華々しくなく、地味でピュアでまっすぐで可愛い正義のヒーロー、今ではすっかり私は太郎さんのファンです♪そして、主人公が誰か想像ついちゃうようなブラックジョークも面白かった!!いやぁ太郎さんに会いたい。好きです。

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