シャーク・イン・シブヤ~最強陰陽師VSサメ~(脚本)
〇SNSの画面
────夜の渋谷には、サメが出る。
そんな噂がネットで囁かれていた。
〇豪華な社長室
渋谷区役所 区長室
蘆屋孔明「この街に潜むサメを調伏できるのは、私だけでしょう」
蘆屋孔明「陰陽師蘆屋孔明(あしやこうめい)が、必ず調伏してみましょう!」
土御門桃子(助手)「先生、まだ本当にサメがいるとは────」
渋谷区長「さすがは蘆屋先生! 頼もしいお言葉です!」
渋谷区長「まだ区民に被害は出ておりませんが、 それも時間の問題・・・・・・」
渋谷区長「しかし、警察を動かせば区民の動揺を煽ることになる。本当に困っていたのです」
渋谷区はサメの存在を認めていなかった。
サメの目撃証言は多数報告されていたが、
確たる証拠がなかったからだ。
そのため、蘆屋に対する依頼も渋谷区としてではなく、区長個人からの依頼だった。
土御門桃子(助手)「区長は本当にサメの存在を信じているのですか?」
土御門桃子(助手)「ここ渋谷ですよ。 サメがいるわけないじゃないですか」
渋谷区長「私も、そう思っていました」
渋谷区長「見てください」
区長がシャツの袖を捲る────
そこには、生々しい傷跡があった。
渋谷区長「サメにやられたものです」
蘆屋孔明「腑に落ちました。 ────なぁ、桃子君?」
土御門桃子(助手)「え!? あぁ、はい・・・・・・」
蘆屋孔明「事態は一刻の猶予もないな」
蘆屋孔明「私たちはこれで失礼します。 行くぞ、桃子くん」
土御門桃子(助手)「はい、先生」
渋谷区長「よろしくお願いします!」
渋谷区長(・・・・・・手は尽くした)
渋谷区長(見ていてくれ、知樹)
〇公園通り
蘆屋孔明「あぶなかったぁ・・・・・・」
蘆屋孔明「桃子くんが余計なことを言い出した時はヒヤッとしたぞ・・・・・・」
土御門桃子(助手)「実際、本気でいると思ってます? 渋谷にサメ」
蘆屋孔明「何かはいるのだろう。 少なくともサメではないだろうが」
土御門桃子(助手)「やっぱり、先生だって信じてないじゃないですかー!」
蘆屋孔明「あたり前だろ! 渋谷にサメだぞ?」
蘆屋孔明「だがな、『幽霊の正体見たり枯れ尾花』 陰陽師の仕事には”祓う”事も含まれる」
蘆屋孔明「それが魑魅魍魎でなく、人の心に巣食った不安であろうとな」
土御門桃子(助手)「・・・・・・ふ、ふーんだ! 報酬に目がくらんでいるだけでしょ!」
蘆屋孔明「────否定はしない」
蘆屋孔明「これでギリギリ食いつないでいける!」
土御門桃子(助手)「このロクデナシ陰陽師ー!」
蘆屋孔明「労働して報酬をもらって何が悪い!? 分け前は桃子君にも払うから!」
土御門桃子(助手)「まったくもー! まったくもー! これだから先生はまったくもー!」
土御門桃子(助手)(・・・・・・まぁ、そこがいいんだけど)
土御門桃子(助手)「じゃあ、依頼料分はしっかり働きましょう」
蘆屋孔明「も、もちろんだ!」
桃子が手を差し出す。
土御門桃子(助手)「握っててください。 ・・・・・・この街、人が多いので」
〇スペイン坂
土御門桃子(助手)「サメや~い」
〇モヤイ像
土御門桃子(助手)「でておいで~」
〇ハチ公前
土御門桃子(助手)「いませんねー」
〇渋谷のスクランブル交差点
土御門桃子(助手)「すみません。 サメを見ませんでしたか?」
通行人D「見てないですねー」
土御門桃子(助手)「そうですか。 ありがとうございます」
〇宮益坂
土御門桃子(助手)「う~ん・・・・・・ なかなか見つかりませんね」
蘆屋孔明「いや、桃子君。 もっと、すごいのいただろ・・・・・・」
土御門桃子(助手)「先生、ここは渋谷ですよ」
土御門桃子(助手)「コスプレってやつですよ!」
蘆屋孔明「なぁんだ! コスプレかー!」
「はーはっはっはっはっ!」
蘆屋孔明「あれもコスプレかー?」
土御門桃子(助手)「いや、あれはサメです」
蘆屋孔明「サメだな」
サメ「shark!!」
「サメだー!!」
蘆屋孔明「桃子くん、下がっていたまえ!」
孔明はサメに刀印を結び、九字を切る。
蘆屋孔明「臨兵闘者皆陣列在前!」
サメは意に介した様子もなく、
地を泳ぐように這い孔明に迫る!
サメ「shark!!」
蘆屋孔明「チィッ!」
孔明は身を捻り、サメの牙を躱す。
土御門桃子(助手)「四海の大神、百鬼を避け、凶災を祓え! 急急如律令!!」
サメ「shashasha!!」
土御門桃子(助手)「方術、全然効かないですね・・・」
蘆屋孔明「ならば! 物理で理解(わか)らせるまで!!」
孔明は拳を握り、攻勢反閇(へんぱい)で
サメに肉薄し────
蘆屋孔明「急急如律令!」
────拳を振り下ろした。
サメ「sha!?」
蘆屋孔明「急急如律令! 急急如律令! 急急にょ────いてっ! オラァ!」
サメ「shasha・・・・・・r・・・・・・k」
サメが動きを止めた。
蘆屋孔明「強敵だったな。 私に血を流させるとは・・・・・・」
土御門桃子(助手)「舌を嚙んだだけですよね」
土御門桃子(助手)「先生、そんなことよりもこのサメ────ロボットですよ!!」
蘆屋孔明「ああ。 そろそろ説明してくれるだろう」
孔明が路地の暗がりを睨むと、男が姿を現した。
〇宮益坂
渋谷区長「────やはり、お気づきでしたか」
蘆屋孔明「現代社会はあらゆるところに機械の目があります」
蘆屋孔明「しかし、サメの目撃証言の多さに反し、ネットに上がった動画の数は少ない」
蘆屋孔明「何らかの力が働いてると考えるのが当然。この渋谷でそれができるのは────」
渋谷区長「────なるほど。 さすが蘆屋先生だ」
蘆屋孔明「しかし、なぜ渋谷にサメを?」
渋谷区長「私の息子────知樹は、難病を患っているのです」
渋谷区長「手術の成功確率は50%・・・・・・踏み切れずにいました」
〇病室のベッド
知樹(区長の息子)「僕、渋谷にサメが出たら、怖いけど手術を受けるよ!」
渋谷区長「知樹!」
〇宮益坂
蘆屋孔明「あなたは、サメの相手として陰陽師である私を雇ったのですね」
渋谷区長「申し訳ありません! 私の事はどうしてくださっても構いません」
蘆屋孔明「ならば一つ、お願いがございます」
〇渋谷駅前
翌日
土御門桃子(助手)「よかったんですか? 『報酬は手術代に使ってほしい』なんて」
蘆屋孔明「知樹くんの不安を祓ったのは区長だ。 金など受け取れないよ」
蘆屋孔明「帰るぞ、桃子君」
土御門桃子(助手)「・・・・・・せっかく渋谷に来たんです。 映画でも観て帰りませんか?」
蘆屋孔明「ふむ」
土御門桃子(助手)「────ダメですか?」
蘆屋孔明「まぁ、たまには俗世の娯楽に触れるのもいいか」
土御門桃子(助手)(よしっ!)
蘆屋孔明「桃子君────」
蘆屋孔明「映画代を貸してくれ! 手持ちがすっからかんでな!」
土御門桃子(助手)「ていっ!」
陰陽師の二人は渋谷の人波に呑まれ、消えていった。
これにて一件落着
まず、最強陰陽師vsサメというB級映画感あふれるテーマが最高です。タイトルだけでもう笑える。
最初から最後まで面白かったんですが
サメ「shark!!」
の部分でもうダメでした。超笑った…
蘆屋孔明シリーズ連載でもっと見てみたいです!
陰陽師(物理)、渋谷にサメ!?そしてまさかのロボット(笑)
カオスすぎる設定なのにお話としてまとまっていて、テンポが良く何度も笑わせていただきました🤣
二人のこれからの活躍と桃子さんの恋路の行方を想像してしまいます😆
2人で「サメだー!!」というシーンや、サメが「shark」と言うところがまるでCMを見ているみたいでとても面白かったです😂笑
キャラの個性も発想も豊かで素敵でした🙆♀️