本能寺さんはクソ野郎

和久津とど

第20話 本能寺さんと玉宮くん(脚本)

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〇教室
  倉重との因縁にケリがつき、本能寺は元通り学校に来るようになった。
  俺の静かな学校生活が終わり、また騒がしい日々が始まる、と思われたが──
玉宮守「授業中は勉強に専念すること」
  その約束を、本能寺はきちんと守っているようだ。
  さらに、煽らない、馬鹿にしない、人の嫌がるようなことをしないと条件を加えていこうとしたのだが。
本能寺令「死ねと!?」
  と、本気で絶句していたので、こちらは前向きに検討するという程度に留まった。

〇学校の廊下
本能寺令「す、すすすす」
小柴育美「本能寺さん、がんばって!」
本能寺令「好きです! 付き合って下さい!」
  そして、ついでに告白も受けたのだが。
玉宮守「えー」
  大変不服な俺であった。
本能寺令「なんでぇっ!?」
玉宮守「大体、性格が、ねえ?」
小柴育美「あ~、やっぱり、そうなりますよね」
本能寺令「なんでそんな反応!? 一生お前の面倒を見てやるとか言ってたのに!」
玉宮守「そんな覚えはない。全部チャラにしてやるよって言っただけで調子に乗るな」
本能寺令「でもでも!  前に告白した時、良い感じだったでしょ!」
玉宮守「それはお前の錯覚だ」
本能寺令「ええええー!?」
玉宮守「大体なあ。お前、登校再開してから大概ヒドいぞ? 例えば──」

〇田舎の学校
本能寺令「玉宮くん! ドッジボールしようよ!」
玉宮守「は? 急に?」
本能寺令「食らえーっ!」
玉宮守「ぶほっ!?」
  答えを聞く前に放たれたボールは、俺の顔面に見事なクリティカルヒット。
  無様に地面へ倒れた俺は、そのまま保健室に担ぎ込まれたのだった。

〇教室
本能寺令「玉宮くん! お弁当作って来たよ! 食べて!」
玉宮守「お、おう」
  本能寺とはいえ、女の子の手作り弁当。
  俺はちょっとだけドキドキしながら、弁当を受け取り、蓋を開けた。
玉宮守「白一色」
本能寺令「そう、ご飯! 初めて炊いてみたんだ!  食べて!」
玉宮守「いやあの、おかずは?」
本能寺令「いつか作るよ!  でも今は、これが私の全力全開フルパワー!」
玉宮守「そうかい。おかずは?」
本能寺令「玉宮くん。あのさ?  ないものねだりはよくないよ?」
  こうして弁当箱にぎっしり詰められた何の味もしない白米を、俺は修行僧のような気持ちで食べたのだった。

〇物置のある屋上
玉宮守「弁当箱ぎゅうぎゅうの白米、お前は食いたいと思ってんの?」
本能寺令「え、普通にヤダ」
玉宮守「ならやるなよ!」
玉宮守「他にもいきなり俺の手を引いて犬みたいに走り出したり! 大量の漫画を読ませようとしたり!」
本能寺令「勉強の邪魔はしてないからセーフでは!?」
玉宮守「アウトだよ!」
玉宮守「常識とか落ち着きとか思いやりとか、そういうごく普通の人間性が欠け過ぎなんだよお前は!」
玉宮守「だから付き合うとか無理!」
玉宮守「真人間に近づけるのを手伝うと約束しただけで、恋愛感情は一切抱いてません!」
本能寺令「そんなズバッと!?」
本能寺令「もしかしたらこれから好きになるかもしれないよ!?」
玉宮守「まぁ、真人間になったら考えてやるよ。 今考えているランクアップ制度はこうだ」
玉宮守「お前に友達が5人出来たら、俺の友達候補に。友達10人出来たら、準友達にしてやる」
本能寺令「ランクアップ制!?」
小柴育美「しかも今、友達ですらなかったんですか」
本能寺令「恋人は!? 恋人はどうやったらなれるの!?」
玉宮守「最低でも、友達100人?」
本能寺令「ひゃ、ひゃ、ひゃくにん!」
小柴育美「やめて下さい玉宮くん! 友達0人の本能寺さんに、そんな無理難題を吹っ掛けるのは!」
本能寺令「ひとり当たり、1000円渡せば友達になってくれるかな?」
小柴育美「ホラお金で友達作る気ですよ! そういうこと言うと手段を選ばない人なんですから!」
玉宮守「たしかにな。ちょっと待て、考え直す」
  他人に迷惑をかけるのは俺としても不本意だ。
  だからといって、今の本能寺と付き合うのは御免こうむりたい。
  俺は少し考えた後、決断を下す。
玉宮守「俺と同じ高校に入ること」
本能寺令「えっ?」
玉宮守「俺が目指してるのは、県内で偏差値が一番高い高校だ」
玉宮守「そこに入れたら考えてやるよ」
本能寺令「本当に!?」
玉宮守「ただし! さすがに楽には入れないからな。 俺は努力しないやつが嫌いだ」
玉宮守「足を引っ張らず、一緒にちゃんと勉強する必要がある。やれるか?」
本能寺令「ちょっとしたスキンシップとかは?」
玉宮守「例えばどんな?」
本能寺令「ノートを隠して、どこにあるか当てるゲームとか」
玉宮守「思いっきり邪魔じゃないかよ!  ダメに決まってるだろ!」
本能寺令「むぅ。面白くないの」
本能寺令「でも、それで付き合えるなら、がんばるよ。 私も玉宮くんと一緒の高校に行きたいしね!」
玉宮守「そうか。じゃあ、決まりだな」
本能寺令「うん! よろしくね、玉宮くん!」
  話がついて、俺はホッと胸を撫でおろす。
  これで本能寺も、少しは大人しくなることだろう。

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