偽りのエデン

そある

エピソード1(脚本)

偽りのエデン

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偽りのエデン
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〇村に続くトンネル
プリムラ「どうしよう・・・日も暮れたのに・・・ こんな森の奥まで来ちゃった・・・」
プリムラ「・・・・・・・・・パパ・・・ママ・・・」
プリムラ「・・・・・・ううん!もう家には戻らないって決めたんだから!泣いちゃダメ!」
プリムラ「私は悪くない!パパとママが悪いんだから もう顔も見たくないもんね!」
プリムラ「・・・あれ?トンネルがある・・・」
プリムラ「・・・暗くて怖いけど向こうに何かありそう ・・・入ってみようかな・・・」

〇暗い洞窟
プリムラ「・・・・・・暗くて何も見えない」
プリムラ「わぁっ!?なに!?」
プリムラ「不思議な光がたくさん・・・ なんだろうこれ、蛍じゃないし・・・」
プリムラ「・・・もしかして・・・出口まで案内してくれてるのかな?この光・・・」
プリムラ「奥まで進んでみよう・・・!」

〇森の中
プリムラ「よかった・・・!出れた・・・!」
プリムラ「光が消えない・・・まだ私についてきて欲しいってこと・・・?」
プリムラ「どうせ行くところもないし・・・ ・・・待って!置いてかないで!」

〇華やかな広場
プリムラ「光が消えちゃった・・・ というか、森にこんな場所あったんだ」
プリムラ「綺麗に咲いた薔薇がこんなにたくさん! 一体誰がお世話してるんだろう」
「こんばんは」
プリムラ「きゃっ!!誰なの!?」
ロツ「ご、ごめん!驚かせるつもりはなくて・・・」
プリムラ「あなた・・・子供?なんでこんな夜に一人で森にいるの?」
ロツ「ふふっそれは君もでしょ?」
プリムラ「それはそうだけど・・・」
プリムラ(この子ももしかして家出してきたのかな)
ロツ「僕は君を迎えにきたんだ」
プリムラ「迎えに・・・?あなたどこから来たの?」
ロツ「僕は『マザー』から言われて、君を迎えに行くために孤児院から来たんだ」
プリムラ「『マザー』って・・・?」
ロツ「僕たちをお世話してくれている孤児院の院長でね、皆んなのママなんだ」
プリムラ(こんな森の中に孤児院なんてあったんだ)
ロツ「君、光を追ってここに来たでしょ あれは僕が出している火の玉なんだ」
プリムラ「わあっ・・・!!すごい・・・!! あなたの周りに光が浮かんでる・・・!!」
ロツ「僕のいる孤児院にはこうやって少し不思議なことができる子供が何人かいるんだ」
プリムラ「・・・ねぇ!私あなたの孤児院に入ってみてもいい?なんだか楽しそう!」
ロツ「もちろん良いに決まってるさ そのために迎えに来たんだから」
プリムラ「やった!ありがとう!」
プリムラ(これからどうしようかと思ってたけど、この子について行ったら面白いかも!)
ロツ「僕のことはロツって呼んで」
プリムラ「私はプリムラ!よろしくね、ロツ」
ロツ「プリムラ・・・可愛らしい名前だね」
プリムラ「そ、そうかな・・・?」
ロツ「プリムラ、ちなみにここは孤児院の庭でね ここに咲いてる薔薇は僕が世話してるんだ」
プリムラ「へぇ・・・!そうなんだ・・・! とっても綺麗だなって思ってたの!」
ロツ「ありがとう、薔薇たちも喜んでるよ じゃあ僕について来て」
プリムラ「うん!」

〇立派な洋館
ロツ「ここが僕の住んでる孤児院だよ」
プリムラ「すごい・・・!こんな大きなお屋敷に住んでるの?良いなぁ〜」
ロツ「と言っても、子供がいっぱいいるからあまり広い気はしないんだけどね」
プリムラ「どんな子たちがいるの?」
ロツ「会ってみればわかるよ、さぁ入ろう」

〇洋館の玄関ホール
プリムラ「ながーい階段!たかーい天井! すごすぎるよここ!」
ロツ「まずは『マザー』のところに行こうか 君を孤児院に入れる手続きをしないと」
「ロツ、おかえり」
リリー「あれ?その子ってもしかして・・・」
ロツ「リリー、新しく孤児院に入るプリムラだよ プリムラ、彼女はリリー」
リリー「はじめまして、リリーよ わからないことがあればなんでも聞いてね」
プリムラ「リリー・・・!よろしくね!」
リリー「ふふ、そういえば『マザー』が部屋にいるから会いに来てって言ってたわよ」
ロツ「そうか、伝えてくれてありがとう」
プリムラ「ねぇ、『マザー』ってどんな人なの?」
ロツ「『マザー』はとても優しい人だよ 不幸な境遇の子供を、自分に利益がなくてもこの孤児院に受け入れてくれるんだ」
リリー「皆んなと違う不思議な力を持ってたって、 それを気にせず普通に接してくれるの」
ロツ「僕たちを本当の子供みたいに思ってくれてる だから僕たちも『マザー』を信頼してるんだ」
リリー「プリムラも会ってみればきっとわかるわ そしてきっとこの孤児院を気に入るわ!」
プリムラ「へぇ〜・・・私も早く会いたいな」
ロツ「じゃあ、『マザー』の部屋に行こうか」
プリムラ「うん!じゃあまたね、リリー」
リリー「うん、また後で」
リリー「・・・きっと・・・気に入るわ・・・」

〇洋館の廊下
プリムラ「リリーってとてもおしとやかな子だよね 勉強とかなんでもできちゃいそう!」
ロツ「うん、リリーは孤児院の子供の中でもけっこう読み書きができる子なんだ」
プリムラ「読み書き・・・ロツは文字が書けるの?」
ロツ「僕は読むのはちょっとできるんだけど、書くのは少し苦手なんだ・・・」
プリムラ「そっか・・・じゃあ今度私が教えてあげるね!こう見えて読書とか好きなんだ〜」
「随分と楽しそうね」
エリカ「ロツ、この子が新しく入ってきた子?」
ロツ「エリカ!久しぶりじゃないか! やっと勉強室から出てきたの?」
エリカ「ただあなたと会ってないってだけでしょ そんなことより、彼女の紹介を・・・」
ロツ「プリムラ、エリカは孤児院で一番賢いんだ 勉強室にある本は全部読んじゃうくらい」
プリムラ「エリカも本を読むの好きなんだ 私もその勉強室ってところ見てみたい!」
エリカ「・・・プリムラって言った?私はあなたと仲良くする気なんてないから」
ロツ「ちょっとエリカ、言い過ぎだよ」
エリカ「それと、『マザー』の部屋のすぐ側でうるさくしないで!本当に品のない・・・」
プリムラ「そんなに怒ることないじゃない! それにうるさくしてるのはお互い様でしょ!」
エリカ「ふん、じゃあ私は自分の部屋に行くから もう顔を見ることもないといいわね」
プリムラ「なんなのあの子!失礼しちゃう!」
ロツ「あれでもエリカは僕やリリーと同じでこの孤児院の最年長、12歳なんだ・・・」
プリムラ「えっ私も12歳だよ!すごい偶然!」
ロツ「そうか、プリムラも12歳なんだ 『マザー』は何歳でも可愛がってくれるから年齢とか気にしたりしないけど」
プリムラ「ここが『マザー』の部屋?」
ロツ「そう、じゃあ入るよ」
プリムラ(一体どんな人なんだろう・・・ でも皆んなの話だと本当に良い人そう)

〇屋敷の書斎
  コンコン
「どうぞ」
ロツ「失礼します、『マザー』 プリムラを連れてきました」
プリムラ「はじめまし・・・・・・えっ?」
マザー「はじめまして、プリムラ どうですか?素敵な場所でしょう?ここは」
プリムラ「な、なに・・・?天使・・・? でも・・・頭が・・・ない・・・?」
ロツ「この方が『マザー』だよ、プリムラ 『マザー』はずっと昔神様にひどい目に遭わされて、顔を失くしてしまった天使なんだ」
プリムラ「どうゆうこと・・・?」
マザー「驚かせてしまってごめんなさい こんな姿でもこの孤児院の院長をしています どうか『マザー』と呼んでください」
プリムラ「あ・・・は・・・はい・・・・・・」
マザー「・・・ロツ、少し外してもらえませんか? プリムラと2人でお話がしたいのです」
ロツ「わかりました、『マザー』」
プリムラ「えっ・・・ロツ・・・私・・・」
ロツ「大丈夫、話せばわかるから プリムラもきっと『マザー』を好きになる」
プリムラ「・・・・・・・・・・・・・・・」
マザー「プリムラ、あなたは本当にプリムラの花のように可愛らしくて素敵な子ですね」
プリムラ「ありがとう・・・ございます・・・」
マザー「プリムラは読書が好きだと聞きました 普段どんな本を読んでいるのですか?」
プリムラ「えっと・・・物語の本が好きで・・・ 一番好きなのは・・・『蛙の王子様』・・・」
マザー「『蛙の王子様』は私も大好きです 特に最後の、プリンセスが蛙に口づけをして王子様の姿になるシーン素敵ですよね」
プリムラ「そうなんです・・・!こんな魔法の世界に自分も入れたらなぁっていつも思ってて」
マザー「魔法・・・といえば、ここまでロツの火の玉を辿って来たらしいですね」
プリムラ「はい・・・!とても驚きました まさか夢に見ていたようなことが現実で起こるなんて・・・」
マザー「・・・実は、私も魔法が使えるんですが ・・・見せてあげましょうか?」
プリムラ「本当ですか!?見てみたいです!」
マザー「では、よーく見ていてくださいね」
プリムラ「わぁ〜・・・!!すごいすごい!! 花火がこんなにたくさん・・・!!」
マザー「・・・気に入って頂けましたか?」
プリムラ「ありがとうございます・・・! ・・・ごめんなさい、私最初・・・ あからさまに戸惑っちゃって・・・」
マザー「プリムラは謝らなくて良いのですよ 最初は誰だって戸惑いましたから」
プリムラ「『マザー』ってとても優しいんですね 私のパパやママとは大違い・・・」
マザー「・・・・・・やっと呼んでくれましたね 『マザー』と・・・とても嬉しいです」
プリムラ「『マザー』、私ここに来たときからこの場所をとっても好きになりそうです!」
マザー「それは良かった・・・本当に・・・ ですが、聞いて欲しいことがあります」
プリムラ「なんですか?」
マザー「この孤児院にいたいと思うなら、守って欲しいルールがいくつかあるのです」
プリムラ「ルールって・・・?」
マザー「まず一つ目、”9時になる前に自分の部屋に戻ってドアの鍵を閉めて眠ること”」
マザー「二つ目、”私や他の子供の部屋に入る時は絶対にノックをしてから入ること”」
マザー「三つ目、”食卓に出された食事は全て残さず綺麗に食べ終わること”」
マザー「四つ目、”庭にある花に触らないこと”」
マザー「そして最後、”信じること” ・・・わかりましたか?プリムラ」
プリムラ「わかり・・・ました・・・『マザー』」
プリムラ(変なルール・・・それに最後のなんだろ ”信じること”って・・・『マザー』のこと?)
マザー「それでは今夜はもう遅いですから 自分の部屋でゆっくり眠りなさい」
プリムラ「はい!おやすみなさい、『マザー』」
マザー「おやすみなさい、プリムラ」

〇洋館の廊下
ロツ「プリムラ!『マザー』と話した? どう?僕の言った通りの人だったでしょ」
プリムラ「うん!最初は驚いたけど、話してみたらとっても優しい人だってわかった!」
ロツ「やっぱり?良かったー・・・! じゃあ君の部屋に案内するよ」
プリムラ「うん!・・・あ、ロツちょっと良い? 聞きたいことがあるんだけど・・・」
ロツ「うん、僕で良ければなんでも聞いて」
プリムラ「『マザー』からルールのこも聞いたんだけど最後の”信じること”ってどうゆう意味?」
ロツ「・・・・・・・・・・・・・・・」
プリムラ「・・・・・・・・・・・・ロツ?」
ロツ「・・・プリムラはどうゆう意味だと思う?」
プリムラ「え?なんか・・・『マザー』の存在とか、言ったこととかを信じてってことかなって」
ロツ「プリムラがそう思うならきっとそうだよ ・・・そんなことより早く部屋行こう!」
プリムラ「え?あっ待ってロツ!」
プリムラ(なんかはぐらかされたような気がする ロツにとってはどうゆう意味なんだろう ”信じること”・・・・・・)

〇英国風の部屋
プリムラ「ふあ〜ぁ・・・今日は疲れたなぁ・・・ いろいろあったからかな・・・」
プリムラ「でも良かった!良いところが見つかって 家出して森に入った時、本当はどうしようって不安だったもん・・・」
プリムラ「それにしてもベットふかふか! 飛び込んじゃえ!え〜いっ・・・!」
プリムラ「・・・あれ?布団の下になんかある なんだろう・・・柔らかいような・・・」
「にゃお」
???「にゃ〜ご」
プリムラ「わぁ・・・!黒猫だ・・・! あなた、名前はなんて言うの?」
???「にゃお〜ん」
プリムラ「・・・って、魔法がある場所だからって猫が言葉を話せる訳じゃないか・・・」
???「にゃお?」
プリムラ「う〜んそうだな・・・瞳がオリーブみたいだから、あなたの名前はオリーブね!」
オリーブ「にゃ〜あ、にゃお〜ん」
プリムラ「ふふ、気に入った?オリーブ って・・・誰の猫かもわからないのに、勝手に名前つけちゃって大丈夫かな」
オリーブ「にゃ〜ご」
プリムラ「まぁいっか!オリーブ 今夜は私のベットで眠ると良いよ」
オリーブ「にゃお!」
プリムラ「もう9時になるし、寝よっか・・・ ふあ〜ぁ・・・おやすみなさい・・・」
オリーブ「にゃう・・・」

〇村に続くトンネル
プリムラ「・・・・・・う〜ん・・・・・・・・・」
プリムラ「あれ・・・?オリーブ・・・? 私・・・寝てたはずじゃ・・・」
「プリムラ」
プリムラ「・・・誰・・・?」
ママ「こんなところにいたの?心配したのよ」
プリムラ「・・・・・・ママ・・・!? なんでここにいるの・・・!?」
「プリムラ」
プリムラ「この声・・・もしかして・・・」
パパ「探したぞ、全くこんなところに来て・・・ さぁ早くパパとママと家に帰ろう」
プリムラ「なんで・・・?2人とも、どうしてこの孤児院の場所がわかったの・・・?」
ママ「何言ってるの?孤児院なんてないわよ だってここはただの森の中じゃない」
パパ「本当に何を言っているんだ? もしかして、また妄想していたのか?」
プリムラ「妄想なんかじゃないもん! ・・・そうだ、このトンネル・・・」
ママ「ちょっとプリムラ!どこに行くの!」
パパ「戻ってこい!危ないから行くんじゃない!」

〇暗い洞窟
プリムラ「はぁ・・・はぁ・・・あれ・・・ 暗くて何にも見えないよ・・・」
ママ「何度ママを困らせれば気が済むの!? 本当に手のかかる娘ね!あなたは・・・」
パパ「パパはもう探し疲れてクタクタだよ・・・ 何もないとわかっただろう?早く帰ろう」
プリムラ「本当にあったんだってば・・・ なんで私のこと信じてくれないの・・・?」
ママ「こんな子に育ったのはあなたのせいよ! あなたが甘やかしすぎるせいで・・・」
パパ「はぁ?俺はただ娘を大切にしてるだけだ! そっちこそ、育児に手を抜いてるんだろ?」
プリムラ「パパ・・・ママ・・・こんなところに来てまで喧嘩しないで・・・仲良くしてよ・・・」
ママ「あなたが言うことを聞かないからでしょ!? 元はと言えば全てプリムラが悪いのよ!?」
パパ「お前はいっつも周りの人を自分の妄想に巻き込んで、迷惑かけてるのがわからないか!!」
プリムラ「・・・・・・パパ、ママ・・・もう・・・」
ママ「プリムラ!!ママの言うことが聞けないの!?」
パパ「プリムラ!!もうパパを困らせないでくれ!!」
プリムラ「・・・・・・もう・・・やめて・・・ ・・・家に・・・帰りたく・・・ない・・・」
ママ「プリムラ!!」
パパ「プリムラ!!」
プリムラ「・・・・・・・・・『マザー』・・・」

〇英国風の部屋
「にゃーお」
プリムラ「うぅ・・・うぅ〜・・・・・・ん?」
オリーブ「にゃお〜ん・・・」
プリムラ「・・・・・・・・・夢・・・? ・・・おはよう、オリーブ ・・・もしかして心配してくれたの?」
オリーブ「にゃーご」
プリムラ「・・・もう大丈夫だよ、ありがとう」
プリムラ(まさかあんな夢見るなんて・・・ この先、寝るのがちょっと怖いな・・・)
プリムラ「・・・・・・でも、孤児院や皆んなやオリーブのことが夢じゃなくて良かった!」
  こんな悪夢忘れてしまいたい、この時の私はそう思っていた・・・でもパパとママのいないことへの寂しさには気付かなかった

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