〈空気をよくする〉空気清浄機(脚本)
〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた 呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品専門の 鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は 一体おいくらになるのでしょうか・・・」
〇時計台の中
橘 透子「予約の橘です」
鑑定士「ようこそお越しくださいました」
橘 透子「こちらの鑑定をお願いします」
鑑定士「空気清浄機、ですか・・・」
橘 透子「家電は買い取っていただけないのかしら」
鑑定士「いいえ」
鑑定士「相応の価値──〈いわく〉があれば」
鑑定士「それに見合った価格で 買い取らせていただきます」
鑑定士「それではお聞かせください」
鑑定士「この品にまつわる 〈いわく〉について────」
〇黒
〈空気をよくする〉空気清浄機
〇大衆居酒屋
臭い
部長「みんなグラス持ったかー!?」
煩い
カンパーイ!!
汚い
〇大衆居酒屋
橘 透子(・・・頭痛くなりそう)
同僚「橘さん」
同僚「もしかして具合悪い?」
橘 透子「いつものだから気にしないで」
橘 透子「あなたの送別会なのに 気を遣わせちゃってごめんなさい」
部長「お~い!」
部長「君たちちゃんと飲んでるか~?」
橘 透子「いただいてますよ」
部長「よしよし。はい、カンパーイ!」
橘 透子(唾飛んだ・・・ これもう飲めないじゃん)
部長「お? どうした橘。顔色悪いな」
橘 透子「いえ、別に──」
同僚「橘さん、こういう場所が苦手なんですよ」
橘 透子「あ、ちょっと・・・」
部長「ほー。そりゃまたどうして?」
橘 透子「あー・・・っと」
橘 透子「・・・人より少し音や匂いなんかの 刺激に敏感なので、疲れやすいんです」
部長「あ~、あれか! 今よく言われてる・・・何だっけ?」
同僚「繊細さん、ですか?」
部長「そうそれ!」
橘 透子「なので、こういった場所だと 体調に影響してしまって」
橘 透子「すみませんが、 今日は一次会で失礼させていただきます」
部長「ええ~、神経質なだけじゃないのぉ?」
同僚「部長!」
部長「わ〜、ごめんごめん!」
橘 透子「・・・ハァ」
〇中規模マンション
〇シックな玄関
橘 透子「ただい──」
橘 透子「臭っ!!」
〇豪華なリビングダイニング
橘 透子「ちょっと明彦! これ何の匂い!?」
橘 明彦「透子・・・ 帰ってくるなり何だよ」
橘 透子「魚焼いたの? うわ、グリル使いっぱなし!!」
橘 透子「換気扇も付いてない!!」
橘 透子「片付けくらいちゃんとやってよ!!」
橘 明彦「うるさいな」
橘 明彦「後でやろうと思ってたんだよ」
橘 透子「そう言っていつもやらないくせに」
橘 透子「あっ!!」
橘 透子「空気清浄機の電源! 切らないでって言ってるのに!!」
橘 明彦「あー、スマホの充電するから 一時的にコード外したんだった」
橘 明彦「別に、ちょっと切ったくらい影響ないだろ」
橘 透子「あるよ!」
橘 透子「何度も言ってるでしょ! あんまり匂いがキツイと頭痛くなるって!」
橘 明彦「また始まった・・・」
橘 明彦「焦がした訳じゃないんだし、そこまで 気にするほどのことじゃないだろ!」
橘 透子「どこ行くの! まだ話は──」
橘 明彦「換気扇付ければいいんだろ!?」
橘 透子「──ったく、誰かさんのせいで 余計に空気が悪くなったみたい」
橘 透子「お仕事よろしく」
橘 透子「風量最大っと・・・」
橘 透子「・・・光った?」
橘 透子「そんな訳ないか」
橘 透子「あ、そうだ」
橘 透子「グリルも洗っといてよ!?」
橘 明彦「いちいち言われなくても分かってる!!」
橘 透子「分かってない! この前だって──」
橘 透子「・・・・・・ッ」
橘 明彦「何だよ、言いたいことがあるなら 言えばいいだろ」
橘 透子「・・・ううん、大丈夫」
橘 透子「久々の飲み会で疲れちゃったみたい」
橘 透子「八つ当たりしてごめんね」
橘 明彦「え・・・」
橘 透子「お風呂入ってサッパリしてくる」
橘 明彦「何だあいつ・・・」
〇豪華なリビングダイニング
橘 明彦「あれ? 今朝はゆっくりだね」
橘 透子「おはよ。今日はこの前の代休なの」
橘 明彦「ならちょうどいいや!」
橘 明彦「今夜、会社の同僚連れてくるから 宅飲みの準備頼むよ」
橘 透子「急に言われても困るんだけど!」
橘 透子「だいたい、他人を家にあげるの 好きじゃないって何度も──」
橘 明彦「今日だけ我慢して!」
橘 明彦「前から飲みの約束してたんだけど、 どうしても店が見付からなくてさ」
橘 透子「・・・何人来るの?」
橘 明彦「5人くらい!」
橘 透子「えっ、そんなに!?」
橘 明彦「じゃあよろしく! いってきまーす!」
橘 透子「ちょっ──」
橘 透子「何なのもうっ!! 勝手すぎない!?」
橘 透子「どうして休みの日にまで 他人の面倒見なきゃなんないの!?」
橘 透子「・・・・・・」
橘 透子「・・・あれ」
橘 透子「何で怒ってたんだっけ」
橘 透子「まぁいっか」
橘 透子「準備、しなきゃ・・・」
〇豪華なリビングダイニング
橘 透子「・・・・・・ハァ」
同僚「急に大人数で押し掛けちゃってすみません」
同僚「お料理とってもおいしいです」
橘 透子「はあ、どうも・・・」
同僚「えーっと・・・」
同僚「お、お部屋もすごく片付いていて・・・」
橘 明彦「気遣わなくていいぞ」
橘 明彦「こいつ、変なとこ細かいっていうか──」
橘 透子「余計なこと言わないで!」
同僚「橘さーん! タバコ吸っていいスか?」
橘 透子「絶対ダメだからね!?」
橘 明彦「空気清浄機あるんだから大丈夫だろ」
橘 明彦「おー、好きにしろー!」
橘 透子(信じらんない!)
橘 透子「とりあえず脱臭モードにして・・・」
同僚「ごめんなさい。 タバコ、気になりますよね」
橘 透子「・・・いいえ、大丈夫ですよ」
同僚「でも・・・」
橘 透子「そうだ、デザートはいかが?」
「・・・・・・」
〇豪華なリビングダイニング
橘 明彦「今日は助かったよ。 タバコ、よく我慢してくれたな」
橘 透子「ええ。そう、ね・・・」
橘 明彦「透子?」
橘 透子「頭痛くなってきた・・・ 脱臭モードの効果が切れたのかも」
橘 明彦「空気清浄機は関係ないだろ」
橘 透子「片付けしてるから、 先にお風呂入っちゃって」
橘 明彦「おう」
橘 透子「ハァ、しんど・・・」
橘 透子「明彦のスマホ?」
『今日は楽しかったよ』
『奥さんあんな感じなんだね。
思ったより普通じゃん笑』
橘 透子「は・・・?」
『今度は2人で飲みに行こうね』
橘 透子「何これ!?」
橘 透子「脱臭モードじゃ足りない・・・」
橘 透子「除湿・・・違う・・・ 加湿も違う・・・」
橘 明彦「悪い、着替え持ってきて──」
橘 透子「花粉除去・・・」
橘 明彦「おい、何やってるんだ?」
橘 透子「イオンモード! これなら・・・」
橘 透子「・・・・・・・・・」
橘 透子「ごめんなさい。なぁに?」
橘 明彦「その、着替えを・・・」
橘 透子「分かった」
〇黒
〇シックな玄関
橘 透子「ただいま」
橘 透子「この靴────」
橘 透子「・・・・・・」
〇部屋の前
???「ねー、本当に奥さん帰ってこない?」
橘 明彦「大丈夫だって。 今日は友達の家に泊まるって言ってたし」
???「ならいーけど。 それにしても、ホントに片付いてるよねぇ」
橘 明彦「あいつマジで細かいんだよ」
橘 明彦「匂いがー、汚れがーとか言って、 使い終わった途端に片付け始めるんだぜ」
〇豪華なリビングダイニング
橘 透子「戻ったよ」
橘 明彦「透子!」
橘 透子「あなた、この間の・・・」
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わらうせえるすまんを思い出しました空気清浄機の中の汚れが外に出たらどうなるのだろうとわくわくしながら読んでいました!
繊細さんの辛さと、一連の流れがぐぐぐーっときますね!!!!(´;ω;`)
それにしても旦那さんに理解がなさ過ぎますよね!!!ぷんぷん!!!あんなに伝えてるのにぃ!!!とぐぬぬーっとしました!!!
空気清浄機…でも悪い感情とかを吸ってくれるものあったらすごいですよね✨ちょっと欲しいですね✨