読切(脚本)
〇可愛い部屋
陽向えり(ノーエックス)「神様、私はもう本当にこの世に存在する価値のない女なんです。 早くどうか心停止でも罰をください」
私が憔悴しきっているのには理由があった。
〇オタクの部屋
レポーター「あの・・・・・・近所で女子児童や少女の行方がわからなくなっている事件について聞きたいんですが」
貝村ほくと「ふへぇ? そうですね、とても人間として愚かな生き様だと思います」
レポーター「何か心当たりはないでしょうか」
貝村ほくと「ボクがオタクだから思うんですけど、宮崎勤みたいな人間だと予想はしないでほしいんですよね」
レポーター「あの後のオタクバッシングはひどかったと 聞きます」
貝村ほくと「今でこそ、オタクは市民権得てるけど ボクが学生の頃はオタクであることを 隠しまくらないといけなかったよ」
やれやれといった顔でため息をつく
ほくと。
数日後、彼は連続婦女暴行と女子児童誘拐の犯人として逮捕された
〇可愛い部屋
問題はその後だった。
ほくとの部屋には私の描いた
エロ漫画が床にあるのを
カメラは映していた
ネット上ではオタクバッシングと
私への中傷ツイートで溢れた
早く筆を折れ!
性犯罪者もとい殺人鬼の
事件の元になった作品を生み出した鬼畜!
そんなコメントが1番心にきた
私としては現実では襲えない女性を
フィクションの中で襲い、
屈辱に満ちた表情を描いてる時
男性たちが生きがいを見いだしてくれてる
ものと思い込んでたから
陽向えり(ノーエックス)「私が描いてきた作品は本当に ほくとに悪影響を与えたのかしら・・・ だったら確かに 筆を折るべきなのかもしれない」
ノーエックス消えろ
エロ漫画業界にとってガンだ!
お前の描いたエロ漫画で
少女4人、女子児童3人が
犯され殺されたんだ!
陽向えり(ノーエックス)「もうどうすればいいんですか?」
陽向えり(ノーエックス)「ああ・・・ 今までの中傷が頭をよぎって 生きるのがしんどい」
陽向えり(ノーエックス)「こんなことならデビューできない 少女漫画家志望の頃の方が しあわせだったかも」
陽向えり(ノーエックス)「みんなが私を攻撃してくる・・・・・・ 私はこの世にいていい人間なんですか?」
陽向えり(ノーエックス)「人が怖い人がこわい 人が恐いひとがこわい」
ホワちゃん「ニャー(どうしたのご主人様)」
陽向えり(ノーエックス)「ホワか。 私もいっそ猫になりたいよ」
ホワちゃん「ニャー(なんで?)」
陽向えり(ノーエックス)「たまたま犯人の床や本棚に 私の描いたエロ漫画が映ってただけで こんなことになるなら」
陽向えり(ノーエックス)「いっそ漫画家なんか 目指さなきゃよかった」
ホワちゃん「ニャー(ご主人様元気だして)」
陽向えり(ノーエックス)「ふふふ あはは 消えたいな」
〇可愛い部屋
陽向えり(ノーエックス)「誰かしら? 私の住所特定して 私を襲うか殺そうとしてる人だったら 怖い・・・・・・」
愛原幹人「どーしたんだよー 部屋で1人でたたずんで いつも机に向かってるえりらしくないな」
陽向えり(ノーエックス)「幹人か 何も知らない訳じゃないよね」
愛原幹人「もうネットを見るのはやめるんだ 半日だけでもオレと旅行行くか?」
陽向えり(ノーエックス)「そんな気分じゃない」
愛原幹人「かといって家にいても 自分を中傷した 言葉とかよぎったりするだろ」
陽向えり(ノーエックス)「う・・・・・・ それは」
愛原幹人「エロ漫画家とはいえ、 せっかく活躍できてるんだ」
愛原幹人「今ここで筆を折ろうとしてるんだろ? でもそれじゃ一部の世間や人間に 負けたことにならないか」
陽向えり(ノーエックス)「こんなにイヤな思いするなら 筆を折ったほうがマシよ!」
私の体を幹人が独特なポーズで抱きしめる
愛原幹人「君とやった BLポーズ、まだ再現できるよ」
陽向えり(ノーエックス)「ねえ」
愛原幹人「なんだ?」
陽向えり(ノーエックス)「私って生きててもいいと思う?」
愛原幹人「追い詰められすぎだろ まあ確かにそこまで 行っても仕方ないか」
愛原幹人「オレ年収で下回るけどさ」
愛原幹人「オレと付き合ってくれないか? 君が死なないようにずっと見張るよ」
陽向えり(ノーエックス)「え?」
愛原幹人「君がどんどん売れっ子なエロ漫画家に なっていくから 告白する勇気なくなっていってたけども」
愛原幹人「初めて会った時から 好きだった あの時はエロ漫画好きな 彼氏いたからあきらめていたけど」
陽向えり(ノーエックス)「私でいいの?」
愛原幹人「ああ」
陽向えり(ノーエックス)「しばらくあなたの アシスタントでもやろうかな」
愛原幹人「メシスタントも頼んだ」
愛原幹人「あとこれから オレの持論を述べさせてくれ」
愛原幹人「あの鬼畜犯人が君の描いた えっちい漫画に刺激されたのかは 知らない」
愛原幹人「でも君の作風には 女の子を誘拐して殺すような 描写はないし」
愛原幹人「たまたま彼の部屋の床に君の本が 置いてあって そこからここまで バッシングに至ってるのが よくわからない」
愛原幹人「こんなとこであきらめるな! オレは陽向えり、 君の一番のファンだ」
愛原幹人「と、売れない青年誌漫画家が 言ってみる」
陽向えり(ノーエックス)「ありがとう その気持ちだけで うれしいよ」
陽向えり(ノーエックス)「幹人、あなたのおかげで 少し前を向けそう」
陽向えり(ノーエックス)「ありがとう」
愛原幹人「えり、もうボクは 君のことがとにかく大好きなんだ!」
私を強く抱きしめる幹人
彼のスマホからは
ルナシーの
I for Youがかかっていた
初めまして。
読んだことないような濃密な内容ですね!!感激しました。
確かにプロの方は、今の時代は予想もしないところから攻撃が来るかもしれませんね💦
創作の世界に現実が侵食するというか・・・恐ろしいものだと思うし、そうした視点も鋭くて素晴らしいと思いました!!