オズワルドの裁定

シュウ

番外編③ キースの遺志(脚本)

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シュウ

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〇草原
  もう発つよ、ゲイル
ゲイル・カーター「せっかく停戦したんだ」
ゲイル・カーター「もう少しゆっくりすればいい」
ゲイル・カーター「そうだ!」
ゲイル・カーター「今度遺跡の調査があるんだが──」
  ありがたい申し出だが
  残してきた者がいる
ゲイル・カーター「そうか」
ゲイル・カーター「それは帰らなければならない」
ゲイル・カーター「またいつでも、遊びに来てくれ」
ゲイル・カーター「今度はアーチェを案内しよう」
ゲイル・カーター「ゆっくり観光もできなかったからな」
ゲイル・カーター「ははっ、その時は頼むよ」
  達者でな、ゲイル
ゲイル・カーター「ああ、そちらもな」
ゲイル・カーター「──Mr.キース」
???「ダッド!」
  ゲイルに遺物の記憶はない
  憶えているのは私と【ヒューゴ】だけ
  そう
  これ以上、私たちは関わるべきではない
  彼らのためにも
  私のためにも

〇島
  ・・・さらばだ
  私のかけがえのない──相棒

〇漁船の上
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さん」
霧生華清(きりゅうかせい)「アイクたちとまた会えますか?」
  ああ、会えるよ
  これから平和な世の中になるのだ
  文明が発達し、海なんて一足飛び
  距離なんて概念は無くなるはずだ
  そう、【ルーカス】のように一息で
  会いに行けるようになる
霧生華清(きりゅうかせい)「そう、ですか」
霧生華清(きりゅうかせい)「お祖父さんの話は難しくてよくわかりません」
  ははっ、いずれわかる時が来るさ
  華清も、アイクも、ダリルだって
  まだまだこれからだよ

〇道場
霧生華清(きりゅうかせい)「うわっ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「ま、まだまだ!」
霧生華清(きりゅうかせい)「もう一本!」
祖母「無理は禁物ですよ、華清」
祖母「貴方も、今日はこの辺にしませんか?」
霧生華清(きりゅうかせい)「いけません!」
霧生華清(きりゅうかせい)「自分は早く一人前にならなくてはならないんです!」
霧生華清(きりゅうかせい)「お父さんの分まで自分が家を守らなくては・・・!」
祖母「華厳・・・」

〇実家の居間
祖母「貴方、華清のことですが」
祖母「あの子に家を継がせるのは酷では ありませんか?」
祖母「私のせいで門下生はおろか」
祖母「家に近づく者も居りません」
祖母「あの子は遠縁の親戚に預け」
祖母「私たちから遠ざけるべきです」
  それは華清の願いではない
  華清を想う私たちの願いだ
祖母「ですが──」
  問題は山積しているが
  ひとつずつ、着実にこなしてゆく
  家も、家族も、環境さえも
  私たちは為すべきことを為せばいい
  それが華清のためにもなる
祖母「それこそ、貴方の願望ではありませんか?」
  ああ、そうだ
  私たちにはもう、華清しか残っていない
  だが──
  華清にも、もう私たちしか残っていない
  ならば、為すべきことは決まっている
祖母「・・・そうですね」
祖母「私たちは華清の傍に寄り添いましょう」
祖母「あの子が支え合える方と出会えるまでは」
  ああ──

〇空
  すまない、ゲイル
  パラディス島を案内してもらうのは
  もうしばらく後になりそうだ

〇魔法陣のある研究室
  予定よりも遅くなってしまった
  この感覚も二年ぶりか
  ゲイル、元気にしているだろうか

〇レンガ造りの家
住人「カーターさん?」
住人「ああ、随分前に亡くなったよ」
  な・・・に・・・?
  それは、本当か?
住人「見てのとおりさ」
住人「ここはもう僕の家」
住人「一家揃って山賊に襲われるなんて」
住人「ついてないよねぇ」
住人「ああでも、一人息子は引き取られたらしいよ?」
  誰に?
住人「確か国軍の──」

〇暖炉のある小屋
アドルフ・フォスター少佐「おい坊主!」
アドルフ・フォスター少佐「俺のシャツはどこに行った!?」
アドルフ・フォスター少佐「気に入っていたやつなんだ!」
アイザック・カーター「俺はあんたの家政夫じゃない」
アイザック・カーター「自分で探すんだな」
アドルフ・フォスター少佐「キース!」
アイザック・カーター「な、何だよ?」
アドルフ・フォスター少佐「お前は俺の家政夫だ」
アドルフ・フォスター少佐「一生、誰にも譲らん!」
アイザック・カーター「・・・あっそ」
アイザック・カーター「あんたのシャツなら」
アイザック・カーター「今頃カラスの寝床じゃないかな」
アドルフ・フォスター少佐「な、ななな、何だってー!?」

〇草原の一軒家
  私の出る幕は無さそうだな、アイク
  ・・・しかし、あのアドルフという男
  何故アイクを引き取った?
  被害者の遺族なんて腐るほどいる
  ・・・匂うな

〇屋敷の書斎
  ゲイルの手記が見つからない
  遺跡の調査記録はあるのに、何故だ?
住人「欲しいならあげるよ」
住人「捨てようにも気後れして困ってたんだ」
  ああ、助かる
住人「物好きだなぁ、あんた」
住人「まるでフォスター少佐みたいだ」
  フォスター少佐、だと?
  どこか似ていたかな?
住人「ああ、あの軍人さんもこの家を尋ねてきたんだ」
  何か持って行ったのか?
住人「いや、何も?」
住人「何か大事なものを探していたんじゃないかな?」
住人「隣の奥さんによると」
住人「生前カーター氏と交流があったみたいだしね」
  生前?
  ゲイルに軍人との交流網などなかった
  まさか、あの男がゲイルを・・・?
  ありがとう
住人「もういいのかい?」
  ああ
  そうだ、最後にひとつ質問なのだが
  カーター氏を襲撃した山賊はどこに
  捕まっている?
住人「ん? ああもう地獄に落ちたよ」
  何?
住人「その場に居合わせたフォスター少佐に 射殺されたらしいよ?」

〇英国風の図書館
  アドルフ・フォスター
  弟ダニエル・フォスターは
  『パラディスの悲劇』により殉職
  ・・・決まりだ
  あいつが──カーター家襲撃の首謀者だ

〇黒
  しかし、わからない
  カーター家に恨みがあるのなら
  何故、アイクを手にかけない?
  もしや遺物を操るための駒として・・・?
  ならば、尚のこと生かしておけない
  だが──

〇暖炉のある小屋
アドルフ・フォスター少佐「おいキース! 俺の眼鏡はどこだ!?」
アイザック・カーター「・・・はぁ」
アイザック・カーター「あんたの目の前で横になっているよ」
アドルフ・フォスター少佐「おっ、本当だ!」
アドルフ・フォスター少佐「さすが俺の家政夫!」
アイザック・カーター「勘弁してくれ」
アイザック・カーター「俺は誰かと番(つがい)になるつもりはないよ」
アドルフ・フォスター少佐「心配するな」
アドルフ・フォスター少佐「誰にも貰ってもらえない時には」
アドルフ・フォスター少佐「責任をもって俺が──」
アドルフ・フォスター少佐「いてっ!」
アドルフ・フォスター少佐「小粋なジョークにマジになるんじゃねェよ」
アイザック・カーター「・・・避けられるクセに」

〇草原の一軒家
  ダメだ
  アイクから再び家族を奪うなど・・・
  ならば──

〇実家の居間
  随分と長い時を過ごした
  華清はもう、十分に大人だ
  これから先、一人でも生きてゆける
  すまない、華清
  これから私は遺物を止めにゆく
  もう二度と、悲劇が起きないように
  為すべきことを為す

〇魔法陣のある研究室
【ルーカス】「接続ヲ 確認デキマセン」
  何故だ?
  何故【オズワルド】へ行けない?
【ルーカス】「長期間 利用シテイナカッタ タメ」
【ルーカス】「自動(スタンバイ)モード ニ 移行シマシタ」
  こうなれば、航路を行くしか──
【ルーカス】「【ザッカリー】ト 接続ヲ 確認デキマシタ」
  【ザッカリー】
  アーチェへ向かう際に使っていたから、か
  ・・・感謝する、ゲイル
  君との縁が私をパラディス島へと
  導いてくれる

〇魔物の巣窟
【エルヴィス】「『アクセスコード』ヲ 発行シマシタ」
  これで遺物を停止できる
  向かおう──【オズワルド】へ

〇宮殿の門
ケイレブ・スペンサー中将「ターゲットが行方をくらませた」

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コメント

  • 穏やかな暮らしをしている二人が微笑ましいです
    お祖父さんはずっと謎に包まれていただけに、彼の心情を知ることができて良かったですね
    完全な悪人はいませんが、誰もがそれぞれの罪を持っていて、同等の正義もあるキャラクターばかりで本当に好きな物語です

    最後まで読むことができて良かったですし、最後まで連載を続けてくださったことに本当に感謝しています😌

  • 最後のスチル素敵でした!
    キースが無茶苦茶渋くてカッコイイです!
    幸せそうな二人。きっとロブも天国で喜んでますよね☺️

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