アイアコス

おそなえひとみ

トラディメント【裏切り】(脚本)

アイアコス

おそなえひとみ

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〇黒
  人生とは選択の連続だ
  手札は、たいがい三つある
  のるか、そるか、それとも待つかだ──
  待つことは大切だ
  だが、待ちすぎてはいけない
  青春は過ぎ去り、死はそこまで迫っている

〇黒

〇シックなバー
フィアレス「23時45分だ──」
フィアレス「では、はじめようか」
アイアコス「俺の客か?」
アイギナ「そっちの客が来るって話しは聞いてないよ」
フィアレス「突然ですまないな」
フィアレス「今日はファミリーでゴタゴタがあってね。 急遽決まったのさ」
アイアコス「座ってくれ、話しを聞こう」
フィアレス「ことが終わるまでに遅ければ15分掛かる」
フィアレス「長くもないが立ち話をするほど短くもない 好意に甘えて座らせてもらうよ」
アイギナ「そっちの二人は座らないのいか?」
フィアレス「こいつらはただの監視役だ。 気にしないでくれ」
アイアコス「監視役ね・・・」
フィアレス「ここはバーだろう? 注文を聞かないのか?」
アイギナ「あぁ、悪いね── だけど注文は決まってるだろう?」
フィアレス「ヘミングウェイ・カクテルで良い。 数は5つだ」
アイアコス「ソイツの別の名を知らないのか? 命は一人一つしかないんだぜ?」
フィアレス「知っているさ。フェミングウェイ・カクテルの別名は午後の死だ」
フィアレス「ここのルールもな」
フィアレス「生と死の審判を受ける者に差し出される、運命の酒だ」
アイギナ「私とアイアコスの分も含めてかい」
フィアレス「皆が午前を迎えられない結末もある。 だから5つ必要だ」
アイギナ「分かったよ、少し待ちな」
アイアコス「5つ棺桶を用意するのは少し時間がかかる。3つで十分だな──」
フィアレス「どんなサイズでも間に合うさ だから遠慮しないでくれ」
アイアコス「本題に入るぜ。お前らはファミリーを抜けに来たのか?」
フィアレス「いや、違う。 まだ我々はファミリーに属している」
アイアコス「じゃあ、なぜこの時間にここへやって来た?」
アイアコス「この時間に来る奴は、俺の審判を受ける奴だぜ」
フィアレス「生憎だが、それは今日で終わりだ。 今日はお前達が審判を受ける日だ」
アイアコス「俺達が審判を受けるね──」
アイアコス「自由にやらせてもらってはいるが、これでもファミリーの一員だ」
アイアコス「ボスには忠誠を誓っているんだぜ」
フィアレス「そのボスだが、死んだよ。 先程の話しだ」
アイギナ「知ってそうな人物に当たってみる」
フィアレス「ボスは死んで、新たなボスに入れ替わった。ファミリーも新たな体制になる」
フィアレス「組織と言うモノは新陳代謝が必要なのさ」
フィアレス「古いモノは捨て去り、新しいものと入れ替えなければ、腐っていってしまうのでね」
アイギナ「分かった──」
アイギナ「その嬢ちゃんが言ってることは本当だ」
アイギナ「ボスは殺されたよ」
アイアコス「身内にか?」
アイギナ「そのようだね」
アイアコス「親殺しは御法度なのによくやるぜ」
アイアコス「それじゃ、納得しない奴も多いだろうに」
フィアレス「納得しなければ殺すだけだ。生きていたければ、新たなボスに忠誠を誓え」
アイアコス「だってよ、どうする?」
アイギナ「気が乗らないね」
フィアレス「さすがファミリーでも随一の腕を持つと言われることはある」
フィアレス「だから殺すには惜しいと思っているようだ また現場に戻って来いとさ」
アイギナ「せっかく用意したのに、勿体ないね」
フィアレス「死体に飲ませてやれば良い」
フィアレス「この世で最後の酒だ。少しは味わえたさ」
アイアコス「銃口を突きつけられても、顔色一つ変えないか・・・」
アイアコス「一体、何者だ?」
フィアレス「お前たちと同じ、ただの殺し屋さ」
アイギナ「その歳にしては落ちついてるね 人を殺し過ぎたかい?」
フィアレス「いや、ヘマをやらかしてね」
フィアレス「その時に頭を撃たれたのさ。 それ以来、恐怖を感じない」
アイアコス「どうりで落ち着いていられるわけだ。 納得したぜ」
アイアコス「一向に銃を抜こうとしない理由もな」
アイアコス「お前はなにを持ってきた?」
フィアレス「ボスから『君達へ』だそうだ」
アイアコス「お前は言ったな。 棺桶のサイズはどんなものでも良いと」
アイアコス「つまり、このままの姿では棺桶に入れないらしい」
フィアレス「気がついたか?鋭いな」
アイギナ「爆弾かい・・・しかも残りは7分 恐れを知らないにしても、限度があるよ」
アイアコス「俺達は信用されていなかったということだ。悲しいねぇ」
フィアレス「だから確実に殺せる手段を用意した」
アイギナ「外は・・・囲まれているんだね」
フィアレス「言っておくが会話は盗聴されている」
フィアレス「外の連中も爆弾が見つかったことに気がついたぞ」
フィアレス「お前たちが選べる選択は二つ」
フィアレス「0時まで私と過ごして共に吹き飛ぶか──」
フィアレス「それとも今すぐ逃げ出して、蜂の巣にされるかのどちらかだ」
アイアコス「結末が変わらないなら、審判の意味も価値もないぜ」
フィアレス「口では何とでも言えるからな」
フィアレス「それだけ前のボスに対しての忠誠心が買われていたということさ」
フィアレス「お前たちは牙を向くと思われていたんだ。 光栄に思えよ」
アイギナ「忠誠心を買って頂けるのは光栄だね」
アイギナ「もう相手は死んじまったようだけど」
アイアコス「その見返りが死だろ? お釣りにしちゃ重いがな──」
アイギナ「どうする、アイアコス?」
アイアコス「店をたたむのが少し早くなっただけだ」
アイギナ「残念だね」
アイアコス「こちらにも抗う余地は残してくれている そのチャンスを使わせてもらわないとな」
アイギナ「ファミリーを裏切るかい?」
アイアコス「俺が忠誠を誓ってたのは前のボスだ」
アイアコス「その意志と正当性を継承してないなら、どいつが上に立とうと俺のボスじゃない」
アイアコス「お前はどうするんだ?」
アイギナ「同意見だよ」
アイギナ「話しあいだけが、我々に残された美徳なのにさ」
フィアレス「過信はしない方が良い」
フィアレス「お前たちの腕は買われていた。 それに見合う戦力は投入されている」
アイアコス「ありがたいことだ。 それで、お前はどうするんだ?」
フィアレス「私の受けた命令は、0時までこの店にいることだ。それ以外の命令は受けていない」
アイギナ「だったら、それ以降は自由だね」
フィアレス「そう言う事だ」
アイアコス「爆弾を解除するぞ」
アイギナ「アンタにその知識があったかい?」
アイアコス「赤か青かの2択があったら任せろ。 そいつは得意だ」
アイアコス「それ以外は、お前に任せるぜ」
アイギナ「じゃあ、始めるかい」
フィアレス「爆弾を解体した経験があるのか?」
アイギナ「片手で数える程だけどね」
フィアレス「バーのマスターは、そんなことも出来るんだな」
アイギナ「店をやっていれば色々な困難があるからね なんでも一人でこなせないとやっていけないんだよ」
アイアコス「解体できそうか?」
アイギナ「凝った作りでなくて助かるね。昔ながらのいたってシンプルな構造だ」
アイギナ「これなら解除も簡単だ。青と赤の配線、どちらか正解の方を切るだけで良い」
アイアコス「じゃあ俺が選ぼう。生きるか死ぬかを選ぶのは俺の専売特許だ」

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コメント

  • 凄くかっこいいお話ですよね!✨

    ボイスがみなさん素晴らしくて、物語の世界が更に広がっているように感じます✨☺️

    音楽とボイスとセリフが全てマッチしてて惹きこまれるお話でした✨🍷

  • 今回もおもしろかったです〜!
    作品の空気感が好きなので、ゆっくりでもまた続きを見られると嬉しいです✨

  • ドキドキしながら読みました。
    人物が魅力的で惹き込まれました。

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