カナリアボックス〜心の旅〜

本田すみれ

エピソード1(脚本)

カナリアボックス〜心の旅〜

本田すみれ

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〇田舎の学校
「風夏ちゃん、走るの上手いね」
風夏「ありがとうございます、先生!」
顧問竹田「がははは! それでだ、風夏 あとで話があるんだが体育倉庫に来てくれないか?」
風夏「はい喜んで」
  私服登校可な共学の高校に通って2年。
  まさかこんなところに闇が待ってるとは

〇女の子の一人部屋
風夏「う、うううっ·····」
  体育倉庫に顧問竹田と一緒に入ったら、いきなり押し倒してきてその後は言葉にするのもおぞましい目に遭わされた
風夏「死にたい 最悪すぎる·····」
風夏「先生があんな人だとは思わなかった 私なら誰にも言わないと判断して、 襲ったのかな」
風夏「俊汰、ごめんね 私汚されちゃった」
  YouTubeでなんとなく音楽をいつものようにかけていたら心の旅が流れた
風夏「僕は汽車の中〜のメロディ好きだな」
  チューリップの心の旅を聞いたあとに自動再生でサボテンの花が流れる
風夏「顧問とは違う、優しい歌声だな。 音楽系の部活だったら こんな目に遭わないで済んだんだろうか」
風夏「サボテンの花、失恋の歌なのかな 財津和夫さん、心の旅よりも メロディの美しさに磨きかかりすぎだよ」
  サボテンの花に、癒されつつ
  カナリアと検索して
  鳥好きな私が聞こうとしてると
  誤タップでカナリアボックスという
  歌の動画をタップしてしまった
  なんとなしに聴いてみたら
  歌詞の命全部で
  歌いながらというフレーズが
  頭に残った
風夏「ランクヘッドか····· ライブ見に行ってみたい」
  でも1人で行く気にはなれない·····
  「もう3週間学校休んでるけどどうしたんだ? オレ、風夏のこと心配で明日頃家に行ってもいいか?」
風夏「俊汰には説明しないとならないか 血の気の多い彼が 顧問に武器で襲いかからないといいけど」
  私はそっと目を閉じた

〇綺麗なリビング
俊汰「なんからしくないな 風夏 いつも笑ってる君はどこだい?」
風夏「ねえ、落ち着いて聞いて欲しいことが あるんだ」
俊汰「何だ、どした?」
  私の深刻そうな声に表情を変える俊汰
風夏「実はね·····」
  私は高校で起きた悲劇を包み隠さず
  全て俊汰に話した
  言いたくない行為の全てを全部
俊汰「マジでぶっ殺す! 許せねえ!!」
風夏「そんなことしても俊汰が 犯罪者になっちゃうよ」
俊汰「竹田のチ⚫ポ切り落として ノドに突っ込んで 窒息死させてやりてえよ!」
風夏「俊汰の気持ちは痛いほど わかったからいいよ」
俊汰「あの野郎! 風夏以外にも絶対 強くは出れない女の子 襲いまくってるに違いねえ」
風夏「教師とか不祥事起こしても しれっと復活できるの怖いよね」
俊汰「オレ、もうどうしたらいいかわかんねえよ 風夏のこと何も力になれなくてさ」
風夏「それじゃお願いあるんだけどさ」
俊汰「何か聞くよ」
風夏「ランクヘッドのライブ行きたいんだ」
俊汰「ランクヘッドって何?」
風夏「00年代に勢いのあったバンドで、今も 活動してる」
俊汰「風夏のボディガードになるよ」
俊汰「ケンカなら強いから夜道で4、5人の 男たちに襲われかけても ぶっとばしまくってやる」
風夏「ありがとう 心強いよ」

〇アーケード商店街
俊汰「ライブ最高だったね」
風夏「生小高カッコよかった」
俊汰「でも何で風夏はある程度昔のバンドなのに 知ってたの?」
風夏「鳥のカナリア検索しようとして 検索候補誤タップしたんだ」
俊汰「なるほど」
風夏「あなたに会えてよかった」
俊汰「ふえ? うれしいよ」
風夏「今のはカナリアボックスの歌詞」
俊汰「そう 歌詞言っただけか」
風夏「もう、俊汰のわからずや」
俊汰「不機嫌になったけどどうした?」
風夏「もう知らない」

〇公園の砂場
風夏「寒い」
俊汰「探したんだぞ 風夏」
風夏「もう俊汰なんて知らない」
俊汰「何でそんなこと言うんだよ」
風夏「もっと早く私の家に 来て欲しかったよ」
俊汰「何度も行ったけど 親御さんが今は男性に 会わせる訳にはいかないって·····」
風夏「そっか そうだったんだ うっかり親に話さなきゃよかった」
俊汰「それはそれでどうかと思うけどな」
風夏「でも娘が性被害に遭ったことなんて 普通は知りたくないでしょ」
俊汰「うむむ····· 複雑すぎてオレのポンコツ頭じゃ キャパオーバーする」
風夏「ねえ、手握ってよ」
俊汰「わかった」
俊汰「風夏、死ぬなよ」
風夏「死ぬわけないじゃない」
俊汰「いつか2人であのクソ顧問 追い詰めよう」
風夏「そうだね」
俊汰「風夏、 あなたに会えてよかった」
  俊汰がカナリアボックスを
  歌い始める
俊汰「風夏、 君をこのまま絶望の視界のままで いさせない」
俊汰「オレが同じ男の分類として 男は最悪なものとか そうじゃないって 本気で君を支えていくよ」
  どんどん俊汰の手を握る力が強くなってく
風夏「ちょっと手痛い」
俊汰「こうでもしてないと 風夏君が消えてしまいそうで」
風夏「大丈夫だよ 私はいなくならないよ」
俊汰「本当に?」
風夏「本当だよ」
俊汰「約束だぞ!」
風夏「あなたに会えてよかった」
俊汰「あなたに会えてよかった」

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