カナリア ボックス〜あなたに会えてよかった〜

本田すみれ

読切(脚本)

カナリア ボックス〜あなたに会えてよかった〜

本田すみれ

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〇商店街
笑可「はぁー、ジュース飲みたい」
  目の前を不気味な男が私の前に立ちふさがる。何をする気だろう
男1「ちょっとそこまで、ついてきてもらおうか」
男1「イヤだと言えばこうだぞ?」
笑可「え、な、 何ですか?」
  そこから十何分かに行われた
  悲劇を私は一生忘れない
笑可「どうしてこうなったんだろう・・・」
  どうやって家に帰ったのか
  私は全く思い出せない

〇男の子の一人部屋
豹馬「どうしたんだろう、笑可のやつ」
  彼女と連絡が取れなくなって
  2週間が経った。
  もちろん高校にも来ていない
豹馬「あれ、笑可からLINEだ」
  今、橋の手すりに手をかけているけど
  ここから飛び降りれば楽になれるかなと
  短いメッセージ
豹馬「こうしちゃいられねえ!」
  オレは慌てて家を飛び出した。

〇川に架かる橋
笑可「なんだろな・・・ もう、生きるのバカらしくなっちゃった」
  心の奥底で豹馬(ひょうま)がすぐ
  来てくれることを祈ってた
「どうしたんだ、笑可!」
豹馬「何があったんだ、笑可」
笑可「私、穢されちゃった・・・・・・ 今は詳しく言えないけど もう生きてられない」
豹馬「さだまさしやミスチル、 B’zやTMネットワークの ライブいつか見に行く約束 どうするんだ」
笑可「そうなんだけど、ごめん。 その約束守れそうにない」
豹馬「頼む。 オレにとって笑可は いなきゃならない存在なんだ!」
笑可「豹馬からそんな言葉聞けて 嬉しいよ。 でももう疲れたんだ」
笑可「ずっとPTSDで、 苦しんでるの」
  豹馬には笑可の異変が
  わからなかったが
  彼女の力になりたい
  そんな想いを爆発させ
  東京事変の閃光少女を
  歌い出した豹馬
笑可「・・・・・・なんで事変?」
豹馬「切り取っていくなら これからの笑可が笑う所だけ 切り取る 君に何があったか聞かないが 過去1番悲しんでる笑可に」
豹馬「オレは力になりたい 幼なじみとして」
  その後、半年間かけて
  笑可の心のケアをした
  豹馬
  エレキギターを弾き始め、
  1ヶ月で基礎を覚え
  カナリアボックスという
  ランクヘッドの歌をマスターした

〇大きな公園のステージ
笑可「私、1年前に性被害に遭いました。 元々活動初期にそれはXに載せてたので ご存知の方もいると思いますが」
玖蘭(くらん)「そうだね、笑可ちゃん」
  相づちを打つのは
  同じく性被害の過去を持つ
  スゴ腕シンガーソングライターの
  玖蘭さんだ
  彼女は笑可の音楽事務所の
  先輩でもある
笑可「デビューシングルのアシアトは 尊敬するバンド ランクヘッドとレコーディングしました」
玖蘭(くらん)「カナリアボックス、両A面として カバーするの 見てたよ」
笑可「それで音楽に生かされてるというか、 イヤなことがあったまま 人生終わらせたくないんですよね」
笑可「ちょっとさ、ステージ脇で見てないで 出てきてよ 豹馬」
豹馬「いきなり呼ぶなよ」
笑可「あなたにはお世話になったよね 私が吐いちゃう時とかも 黙って頭をなでてくれたっけ」
笑可「ううっ。 今日は好きな曲を3曲カバーして アンコール終わらせていいですか?」
  いいよー!と
  オーディエンスから声が上がる
  演奏されていく曲。
  1曲目はカナリアボックス
  2曲目は茜色の夕日
  3曲目はクノシンジさんの
  ポータブルポップミュージック。
  00年代に活躍した
  男性ソロシンガーソングライターだ。
笑可「あなたに会えてよかった 泣いて笑えてよかった この目と手と声と耳と 命全部で歌いながら」
玖蘭(くらん)「あなたに会えてよかった」
豹馬「あなたに会えてよかった」
  オーディエンスも
  あなたに会えてよかったを
  大合唱
笑可「聴いたことないような メロディは書けない」
玖蘭(くらん)「でもいいんだ いいんだ つながるさミュージック」
  カナリアボックスから
  ポータブルポップミュージックへ
  カバーを進めていく
笑可「みんな、ありがとう またステージで会おうね 私と同じような女性が 立ち上がる何かになれたら」
笑可「私は幸せです」

〇女の子の部屋
豹馬「なあ、笑可」
笑可「何?」
豹馬「1年ずっと笑可を見守ってきた。 君の悪口を廊下で言ってた先輩 ぶん殴って1ヶ月停学くらってたのも なつかしい」
笑可「あの時ドブ川にいた金魚拾おうとして ケガしたとかいう 苦しすぎる言い訳 信じてなかったよ私」
笑可「私のことを考えすぎて 暴走したのなんて お見通しなんだから」
豹馬「見破られてたか」
笑可「それより話って?」
豹馬「笑可、オレと付き合って欲しい 体の関係とかまだ抵抗あるだろうし いくらでも待つよ」
笑可「私としてはもう 豹馬に抱かれても かまわないって考えてはいるけど」
豹馬「高三になったらそうする? まだこれから高二になるから まだまだ先だけど」
笑可「私としては豹馬くんに抱かれて それを歌にしてみたい 早くイヤなセッ⚫スの 記憶など消してしまいたい」
豹馬「焦るな」
豹馬「オレは笑可が、大事なんだ 君が新曲作ってくれてればいい」
笑可「ありがとう ずっと一緒にいてくれて 助かったよ」
笑可「消えたい夜はまだあるけど 前よりはひどくなくなってきた」
笑可「最近は外出しても 過呼吸に襲われないし 豹馬には感謝してる」
豹馬「目ぇつぶれ」
豹馬「行くぞ」
  オレは笑可の唇に優しくキスをした

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