リプ様って知ってる?

おさかな

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〇渋谷駅前
「・・・ねぇ、リプ様って知ってる?」
理央「なにそれ? 上げた画像の反応が神!みたいな?」
由佳「違うってば! 理央ってばホントにシブスタ中毒なんだから」
  由佳は理央の手元のスマホを見ながら苦笑した。
  世間で、特に学生の間で人気の「シブスタ」の編集画面では、先程理央の撮ったパフェの写真がキラキラに加工されている。
理央「・・・で?リプ様って何よ?」
由佳「なんか都市伝説なんだって。 渋谷のスクランブルを怖い話しながら歩いてると、いきなり異世界に飛ばされちゃうんだって」
理央「えー、なにそれ? アニメの見過ぎじゃない?」
由佳「それだけじゃなくって、異世界の悪魔的なのに体を乗っ取られて帰ってこれないとか!」
理央「無いって。 大体・・・」

〇渋谷駅前
理央「あはは! なんて顔してんの!」
由佳「うー! だってちょっと面白そうじゃん!」
理央「なるほどねー? だから今日渋谷行こってうるさかったんだ?」
由佳「うるさくないしー。 理央だって限定パフェ食べてご機嫌だったじゃん」
理央「わかったってば。 ・・・で?交差点のどの辺なの?」
  理央はスマホを鞄にしまって、ぐるりと辺りを見回す。

〇渋谷駅前
由佳「・・・それがわかんないんだよねー。 交差点のどこか、としか」
理央「えー、じゃあどうすんの?」
由佳「ひたすら怖い話しながら交差点をうろうろする!」
理央「えええー」
由佳「さあ行くよ!理央!」
理央「えええー」

〇渋谷駅前
  超王道の怪談を三つほど話した時、由佳が交差点に面した電光掲示板に目を止めた。
  今日もどこかで行方不明者が出たんだとか。
理央「・・・由佳?」
由佳「悪魔と取り替えっこだと、行方不明にもならないんだよね・・・ ちょっと怖いかも」
理央「無いってば。 それに、もし由佳が取り替えっこされたら絶対私気付くし、助けに行ってあげる」
由佳「ほんとー?」
理央「ホントホント。 お礼はパフェの食べ放題ね」
由佳「うわぁ、助けてもらうか悩むなー」
  そう由佳が言いながら、理央の背中を強く押した。
  スクランブル交差点の真ん中より端の方、
  理央の足はアスファルトの感触を捉えることなく、そのままただ落下していった。

〇荒野
理央「・・・う、」
  理央は身体中の痛みにうめきながら目を開く。
  まるで見覚えのない景色に目を白黒させ、
  しばらくして渋谷の交差点からここに落ちて来たらしいことに思い当たった。
理央「・・・なにここ?」
???「おはよう。 おめでとう、あなたは15638824人目の取り替え子よ」
理央「・・・は?」
  聞こえてきた声に理央が振り向くと、分かりやすく仮面をつけた、いかにも悪い女っぽい女がしゃがんでこちらを眺めていた。
理央「・・・だれ? どこよ、ここ?」
???「どこ、と言われても。 リプ様の取り替え子の話、してたでしょ?」
理央「そういえば、そんな話をしてたような・・・」
理央「あ!由佳!由佳はどこ?」
???「一緒にいた子なら渋谷にいるわよ。 ・・・まああちらのあなたはこちらの悪魔と入れ替わっているけど」
理央「本当に意味わかんない。 なんなのよ、もう!」
  苛立って足元の小石を蹴飛ばす理央を横目に、そうそう、と女は付け足した。

〇荒野
???「一応言っておくと、入れ替わってから1週間以内にあちらの人間に気づかれると、悪魔は強制的にこちらに戻されるの」
???「正体がバレれば悪魔はあちらには居られないから、あなたは元の渋谷に戻れるわ」
理央「へぇ、なら簡単ね。 由佳なら絶対気づいてくれるから、私は普通に帰れそうだわ」
???「いいえ、無理よ」
理央「悪いけど、私と由佳は親友だもん。 絶対気づいてくれるから」
???「だから無理だって言ってるんだけど」
理央「は? 何言って──」
???「だって、」
  女はにこりと笑った。
???「だって、理央は気づいてくれなかったじゃない」
理央「・・・は?」
  女は一層笑みを深めて仮面を取った。

コメント

  • すごくゾッとしました😭💦
    表現がすごくお上手です……!

  • シンプルなのに圧倒する。その世界に引きずりこまれる。強いっす。

  • おさかなさんの書く百合(違)は軽妙なやりとりと力強さが素敵だなーと楽しんでいたら
    まさかのラストに背筋に氷塊が滑り落ちました。あの間の取り方むっちゃ好きです。
    「彼女」は今までどんな気持ちでいたんでしょうね…

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