エピソード4 期待(脚本)
〇西洋の市街地
寒い
ロイ「もうすぐクリスマスだな」
ロイ「あ」
〇店の入口
ロイ(そうだあの公園の子どもに)
ロイ(何かプレゼントでも買ってやろう)
ロイ(この間の舞台の金も貰ったしな)
〇玩具売り場
ロイ(何が欲しいんだろうか)
ロイ(んー)
ロイ「よし、これにしよう」
ありがとうございましたー
〇西洋の市街地
ロイ(喜ぶだろうか・・・)
〇綺麗なコンサートホール
父親「連日満員だな」
母親「今日も素晴らしかったわよ」
セイ「ありがとうございます」
母親「寒いでしょう 体調は大丈夫?」
父親「そういえばもうすぐクリスマスだな」
母親「何か欲しい物はない?」
父親「食事にでも行こう」
セイ「ええ」
セイ「それならロイの予定も聞きましょう」
父親「ロイ?」
セイ「日にちを合わせて皆んなで」
父親「ああ そうだな」
〇西洋の市街地
ロイ「・・・」
ロイ「・・・行きたくないな」
ロイ「どんな顔をすれば良いんだよ」
ロイ「笑っていたって」
ロイ「惨めだ」
〇立派な洋館
でかい屋敷だな
ロイ(なんとなく此処へ来てしまった)
謎の男「いらっしゃい」
謎の男「来てくれたんだね」
謎の男「寒いだろう」
謎の男「中へ入りたまえ」
ロイ「はい」
〇城の会議室
ロイ(すごい豪華な料理だ)
謎の男「召し上がれ」
ロイ「いただきます」
ロイ「美味しい」
謎の男「さっそく明日から」
謎の男「デビューに向けてのボイストレーニングを開始するよ」
ロイ「え」
ロイ「そうなんですか?」
謎の男「食事を終えたら今日はもう休みなさい」
ロイ「はい・・・」
〇西洋風のバスルーム
ボイストレーニングか・・・
すぐ仕事が貰えるわけじゃないんだな
そりゃそうか
・・・大変そうだな
〇音楽スタジオ
ロイ「ラーラーラー」
謎の男「違う!」
謎の男「音がずれてる!」
ロイ「ラァーララー」
謎の男「もっと腹から声を出すんだ!」
ロイ「ラァラ〜」
謎の男「全然なってない!!」
謎の男「あの日と全然違うじゃないか!?」
謎の男「あの日の君は幻か!?」
ロイ「すみません・・・」
謎の男「もう今日はいい・・・ 休みなさい」
〇武骨な扉
謎の男「どこへ行く気だ」
ロイ「ちょっと気分転換に」
ロイ「コンビニとか・・・」
謎の男「駄目だ」
謎の男「君の食事はこちらが管理する」
謎の男「喉にいいものを用意しているから」
謎の男「それだけを食べなさい」
ロイ「・・・」
ロイ「そこまで・・・」
謎の男「なんだ」
謎の男「文句があるのかね」
謎の男「そのような低い意識だから」
謎の男「お兄さんに勝てないのだよ」
ロイ「・・・」
〇ダブルベッドの部屋
ロイ「勝てない・・・」
ロイ「別に俺は兄さんに勝ちたい訳じゃ・・・」
ロイ「ただ家族との食事会に」
ロイ「胸を張って行きたかっただけだ」
ロイ「あ」
ロイ「ねこ」
ロイ「なんだよお前・・・」
ロイ「泣いてるのか?」
ネコ「・・・」
ロイ「なんでお前が泣くんだよ」
ロイ「まるで俺の代わりみたいに」
ロイ「・・・」
〇立派な洋館
謎の男「こんな日にどこへ行く!」
ロイ「ちょっと公園に・・・」
謎の男「何を考えているんだ」
謎の男「こんな日に外に出て」
謎の男「風邪でもひいたらどうする!?」
ロイ「今日はクリスマスイブなんで」
ロイ「逢いたい人がいるんだ」
謎の男「ならん!」
謎の男「演者は喉のことだけを考えろ!!」
謎の男「今日は一歩も外へ出てはならない」
ロイ「う、すみません」
ロイ「なら俺は」
ロイ「演者には向いてません・・・」
謎の男「なに?」
ロイ「俺のことを見つけてくれたのは 嬉しかったです」
ロイ「才能を伸ばそうとしてくれた事も」
ロイ「でも俺は」
ロイ「会いたい人にも会えないんじゃ俺は」
ロイ「貴方の期待に応えられる自信はありません」
謎の男「待ちたまえ」
謎の男「成功を棒に振るのか」
謎の男「兄や両親を見返したくはないのか」
ロイ「俺は俺です」
ロイ「それ以上にはなれません」
〇西洋の市街地
ああ
失礼な事をしてしまった
せっかく俺なんかに
期待してくれたのに
やっぱり俺は俺だな・・・