エピソード3 舞台本番(脚本)
〇舞台袖
む、無理だ
あんなに客がいる・・・
ロイ(帰りたい・・・!)
ロイ(絶対バレるに決まってる!!)
父親「セイ」
ロイ(うわっ)
父親「緊張しているかい?」
ロイ「え、えぇ少し・・・」
父親「そうか」
父親「大丈夫だ 誰でも最初はそうだから」
父親「自分のやってきたことを信じなさい」
ロイ「は、はい!!」
ロイ(意外とバレないな)
ロイ(いや舞台に立ったらさすがにバレるか)
ロイ(しかしあの人)
ロイ(あんな風に笑うんだな)
ロイ(これが俺だとわかればどうなることやら)
ロイ「開演だ・・・」
〇小劇場の舞台
俳優「雨が降りそうだ」
俳優「君もこっちに来たらいい」
俳優「私はそうは思わないわ」
俳優「空はじきに晴れるもの」
ロイ「あ、た、太陽は」
ロイ「は、恥ずかしがり屋だからね・・・」
ロイ「うん」
〇舞台袖
父親「どうしたんだセイ・・・」
父親「そんなに緊張しているのか」
父親「らしくないじゃないか」
〇小劇場の舞台
ロイ(あぁ、どうしよう)
ロイ(やっぱり駄目だぁ)
〇劇場の舞台
セイ(ロイ・・・)
〇小劇場の舞台
俳優「歌ってくださいな」
俳優「貴方の声で・・・」
ロイ「う・・・」
〇小劇場の舞台
ロイ「・・・いつもそう」
ロイ「感情はそこにいて」
ロイ「時にくるしく」
ロイ「時に誰かをかなしませ」
ロイ「だけどいつの日か」
ロイ「それはきっと」
ロイ「虹になるよ」
〇劇場の舞台
セイ「ありがとう」
セイ(ロイ・・・)
〇舞台袖
俳優「良かったよセイくん!」
俳優「特に歌のところ!」
俳優「最初は緊張していたようですけど」
俳優「大成功ですね!」
ロイ「あ、ありがとうございます!」
ロイ「父さん・・・」
父親「とても素晴らしかったよ セイ」
父親「あんなに伸びやかに歌えるとは」
父親「正直驚いたよ」
父親「本当に素晴らしかった」
ロイ「・・・」
母親「とても誇らしいわ」
母親「セイ」
ロイ「母さん・・・」
ロイ(こんなに褒められたことなんて)
ロイ(今までなかったな・・・)
今日はいい日だな──
〇レトロ喫茶
ガシャーン!
何やってんだぁ!
ロイ「す、すみませんっ」
それからも俺は相変わらずで
店長「お兄さんはあんなに活躍しているのに」
店長「少しは見習いなよ?」
ロイ「・・・」
〇西洋の市街地
ロイ「はぁ・・・」
ロイ「でも・・・」
ロイ「あの日は良かったな」
ロイ「あれだけのお客さんが 俺の歌を聴いてくれて」
ロイ「演技はちょっとアレだったけど」
ロイ「歌は喜んで貰えたな」
ロイ「俺だってことは兄さんしか知らないけど」
ロイ「いい夜だった」
ロイ「ラ〜ララ〜」
謎の男「この歌は・・・」
謎の男「やっと見つけた」
ガシッ
ロイ「え」
ロイ「な、何だよ!?」
謎の男「君だね」
謎の男「あの日の舞台にいたのは」
ロイ「な、なんでそれを!?」
ロイ「い、いや違う!! 俺じゃないっ」
謎の男「君の兄さんは次の日以降舞台に立って」
謎の男「素晴らしい活躍をしているね」
謎の男「確かに演技は君より遥かに素晴らしいが」
謎の男「どうしても歌が違う」
謎の男「あの日聴いたものとは別ものなんだ」
ロイ「し、知りませんよ」
謎の男「そうか君だったんだ」
謎の男「弟のロイ君」
ロイ「あ、貴方は誰なんですか」
謎の男「私は芸能の事務所を経営している者だ」
ロイ「え!?」
謎の男「あの日の人物を探していた」
謎の男「やっと会えたようだね」
ロイ「お、俺は芸能なんて興味はないですよ」
謎の男「何故だね」
ロイ「何故って・・・」
謎の男「あの日君は」
謎の男「とても充実して見えたが」
ロイ「いや、別に・・・」
ロイ「俺は兄さんとは全然違うから」
謎の男「そんな事はない」
ロイ「え」
謎の男「君が卑屈になっているのは」
謎の男「君の才能に気がつかなかった周りのせいさ」
ロイ「・・・」
謎の男「私なら君をもっと伸ばしてあげられる」
ロイ「・・・そんな」
謎の男「考えてみてくれないか」
ロイ「・・・」
ロイ「俺に才能がある・・・?」
ロイ「まさか」
ロイ「・・・」
ロイ「忘れよう・・・」