クリスマスのプレゼント

みちみち

エピソード2 兄の舞台(脚本)

クリスマスのプレゼント

みちみち

今すぐ読む

クリスマスのプレゼント
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇公園のベンチ
  それから毎晩
  公園に行くとその子どもは現れた
  あまり話さない子だが
  他愛もない話をして
  ココアを飲んだ

〇西洋の市街地
  そんなある日
ロイ「あ」

〇綺麗なコンサートホール
街の人「おめでとう セイくん!」
街の人「やっと主演デビューだね」
街の人「この時をずっと待っていたわ」
セイ「ありがとうございます!」
街の人「ご両親も誇らしいでしょうね」
街の人「なにせ代々続くエリート芸能一家だ」
街の人「この街の大スターよ」
セイ「いえそんな もったいなきお言葉で」
街の人「明日君がやる主演の役は」
街の人「君のお父上も若い頃に演じた 難しい役だからね」
街の人「まさに君の初主演にピッタリだよ!」
セイ「ありがとうございます」
セイ「恐れ多いですが 精一杯演じきりたいと思います!」
街の人「立派ねぇ〜!」
セイ「あ」
セイ「ロイじゃないか!」
ロイ「あ・・・ に、兄さん」
ロイ「おめでとう!」
セイ「ありがとう!」
街の人「あれは・・・」
街の人「弟のロイ君ね・・・」
街の人「確か彼は役者になれなかったとか・・・」
街の人「可哀想にね」
街の人「お兄さんのような才能に恵まれなくて・・・」
ロイ「・・・」
セイ「ロイ」
セイ「せっかく久しぶりに会ったんだ」
セイ「二人きりで話さないか?」
ロイ「ん、ああ、そうだね」
セイ「じゃあ俺の部屋に行こう」
ロイ「うん」

〇豪華な部屋
セイ「ロイ 最近どうだ?」
ロイ「うん ぼちぼちやってるよ」
セイ「街の人が言うことはあまり気にするなよ」
ロイ「うん、ありがとう兄さん 平気だよ」
ロイ「俺よりも兄さんの方は大丈夫?」
ロイ「明日本番なんでしょう?」
セイ「ああ・・・」
ロイ「?」
セイ「なぁ、ロイ」
セイ「頼みがあるんだ・・・」
ロイ「え?」
ロイ「ええええっ」
ロイ「俺に代わりに舞台に立って欲しい・・・」
ロイ「って 何言ってるんだよ!?」
セイ「すまない」
セイ「何日か前から」
セイ「練習で舞台に立つと」
セイ「声が出せなくなるんだ」
ロイ「え!?」
ロイ「大丈夫なのか?」
セイ「普段の生活では何の問題もないんだ」
セイ「たぶん心理的なものだと思う」
セイ「だから頼むロイ 俺の代わりに舞台に出てくれ」
ロイ「む、無理だよそんなのっ」
セイ「幸い今回の役は 常にフードを被っていて」
セイ「顔が見えない役だ」
セイ「俺とロイは声質も似ている」
セイ「だからバレない!」
ロイ「いやそういう問題じゃなくて・・・」
セイ「お願いだロイ」
セイ「こんなことは父さんと母さんにも 知られるわけにはいかない・・・」
ロイ「・・・」

〇豪華な部屋
  そうか
  兄さんもずっと
  期待に応えるのに必死だったんだ・・・

〇豪華な部屋
ロイ「兄さん・・・」
セイ「今回の役は」
セイ「歌のシーンもあるんだ」
ロイ「歌?」
セイ「ロイは歌が得意だったよな」
セイ「よくひとりで隠れて歌ってた」
ロイ「な、なんでそれを!?」
セイ「ロイはシャイだから 自分を出すのが下手だし」
セイ「正直だから 演技もあまり得意じゃないけど」
セイ「俺とは違ういいものを持ってる」
セイ「だからロイにだけ頼めるんだ」
ロイ「兄さん・・・」
セイ「本当にすまない」
セイ「今回だけ 助けてくれないか・・・」
ロイ「・・・」

〇銀杏並木道
ロイ(兄さんの苦しみが少しだけわかった)
ロイ(思ったより 俺のことをよく見ていてくれたことも)
ロイ(俺は兄さんを わかっていなかった)
ロイ(兄さんの力になりたい)
ロイ(だけど自信がない・・・)
ネコ「・・・」
ロイ「なんだよその顔・・・」
ロイ「相変わらず変な顔してるな」
ロイ「はぁ・・・」

次のエピソード:エピソード3 舞台本番

ページTOPへ