第7話 ビヨンド・ザ・スキャンダル(脚本)
〇オフィスビル
リポーター「堂前さん、ちゃんと説明してくださいよ!」
リポーター「5万人以上が視聴していたんですよ!」
リポーター「林慎吾の暴行、加藤マイラの未成年への飲酒強要、千葉監督のわいせつ物陳列・・・」
堂前俊一「ですから! 私はただイベントを 企画しただけですので」
堂前俊一「キャスト陣の素行については 感知するところではなく──」
リポーター「無責任でしょう!」
〇ホテルのスイートルーム
林慎吾「は? 高山さん、それって俺のダチを 馬鹿にしてるってこと?」
高山浩二「え、いや、僕はただ林君の地元の友達に ついて知りたかっただけで・・・」
林慎吾「それがバカにしてるって言ってんだよ!」
林慎吾「やんのかコラァっ!」
加藤マイラ「ジュリちゃん、もう一杯!」
ジュリ「えー、そんな飲めないっすよー」
加藤マイラ「あんたまだ16でしょ? 若いうちに飲みまくった方が キャパ広がって、後で楽になんのよ」
加藤マイラ「はい、かんぱーい!」
さくら「こんばんは~、 ハッピーデリのさくらで~す」
千葉武史「おー、待ってたよ。いらっしゃーい」
さくら「え~、なんでもう脱いでるんですか~」
千葉武史「少しでも長く、さくらちゃんに 俺の×××を見て欲しいんだよ」
千葉武史「さあ、向こうで楽しいことしようね~」
〇オフィスのフロア
矢野「堂前ちゃぁ~~ん。やっちゃったねぇ~~」
矢野「放送事故どころの騒ぎじゃないよ、これ」
堂前俊一「私はあくまで場を提供しただけですから」
堂前俊一「そこで何があっても、 それは本人たちの責任です」
矢野「あっははは。そんな言い分が通用するって 本気で思ってんの?」
堂前俊一「・・・明日、会見を開きます」
矢野「ふぅん?」
堂前俊一「そこで、全ての問題を解決してみせますよ」
〇会見場
記者「なるほど・・・」
記者「では、先日のライブ配信は・・・」
堂前俊一「はい、全て演出です」
堂前俊一「マイラさんが未成年モデルに飲ませた物はお酒では無いし」
堂前俊一「林君も殴ったフリをしていただけです」
堂前俊一「千葉監督の陰部が映っていたと 言われていますが」
堂前俊一「あれは本物の性器ではありません。 精巧に作られた模型です」
記者「しかし、演出というにはあまりに リアルなやり取りでしたが・・・」
堂前俊一「その通り。 皆、素晴らしい演技をみせてくれました」
堂前俊一「それ故にこのような誤解が 広がってしまった」
堂前俊一「話題作りのためにとやったことでしたが、軽率だったと反省しております」
堂前俊一「誤解を招いてしまい、 本当に申し訳ございませんでした」
記者「全部仕込みだったってことか・・・?」
記者「しかし、だったら初めからそう言えば 良かったのでは・・・?」
堂前俊一(・・・大丈夫、やり通せる)
堂前俊一(どの局も出版社も、林やマイラの 芸能事務所を敵には回したくないはず)
堂前俊一(何せ業界最大手の事務所だからな)
堂前俊一(この業界は持ちつ持たれつ)
堂前俊一(みんなで仲良く、闇には触れない。 それが賢いやり方だろ?)
記者「・・・では、林さんにお聞きします」
記者「いま堂前氏がおっしゃったことは、 本当ですか?」
林慎吾「・・・・・・」
堂前俊一(無駄だ。キャストもスタッフも 口裏は合わせてある)
林慎吾「いま、堂前さんが言ったことは・・・」
林慎吾「全てデタラメです」
堂前俊一「・・・は?」
林慎吾「いきなり堂前さんに呼び出され」
林慎吾「訳も分からないまま、 高山さんを殴るように言われました」
堂前俊一「な、なに言ってるんですか!」
加藤マイラ「私も後輩の子にお酒を飲ませるように 言われました。本物のお酒です」
堂前俊一「言ってないでしょう!」
千葉武史「俺も女の子との絡みを強要されました」
堂前俊一「はぁ!?」
林慎吾「もちろん僕たちはやりたくないと 言いましたが」
林慎吾「俺に逆らったら芸能界でやっていけないぞと脅されて・・・」
加藤マイラ「実は『アンラッキー・ホテル』 撮影の時からそうだったんです」
加藤マイラ「全てを権力で押さえつけて、 私たちに何も自由はなかった・・・」
千葉武史「監督の俺ですら、堂前さんの言うがままに動いてただけでした」
堂前俊一「バ、バカバカしい! お前らは何を言ってるんだ!」
堂前俊一「やめろ、撮るな! 会見は中止だ!」
林慎吾「そうやってまた口封じですか」
加藤マイラ「もう耐えられない」
千葉武史「俺たちは何も悪くないのに・・・」
堂前俊一「ふざけるなぁぁ!」
ガードマン「コラ、大人しくしろ!」
堂前俊一「くっ、放せ、くっそぉぉっ!」
記者「では最後にお聞きします」
記者「今回の騒動は全て、 堂前氏一人が引き起こしたものだと?」
「はい、そうです!」
堂前俊一(や、やられた・・・)
〇オフィスのフロア
矢野「堂前ちゃ~ん、寂しくなるよ」
堂前俊一「・・・・・・」
矢野「まあ、でもしょうがないよね。暴行強要、 飲酒強要、強制わいせつ・・・」
矢野「大犯罪者を会社に置いとくわけには いかないからね」
堂前俊一「起訴はされませんでした」
矢野「ふーん、良かったね」
堂前俊一「・・・計算通りですか?」
矢野「・・・何が?」
堂前俊一「全ての罪を私に被せて、会社から追い出す」
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