第6話 二人と王国のその先のこと(脚本)
〇謁見の間
エリカ(私がプリンセスで、バンが私の王子様・・・)
へなへなと床に座り込んでしまった私の前に、すっと見慣れた手が差し出された。
バン「エリカ様、大丈夫ですか?」
エリカ「大丈夫なわけ・・・」
エリカ「っていうか、バンは大丈夫なの!?」
バン「大丈夫なわけないでしょう?」
エリカ「だって、いつもと変わら・・・!」
気づけば手を引かれ、バンの胸にすっぽりと包まれていた。
大好きな匂いに包まれて、そっと彼の胸に頭を寄せる。
バン「・・・これが大丈夫な音に聞こえますか?」
聞こえてくる心臓の音は、私のものと変わらないほど早い。
エリカ「バン・・・好き」
エリカ「大好きよ」
バン「私もです、エリカ様・・・いや、プリンセス」
私たちはひかれあうように顔を近づけ──
???「はいはい、ストーップ!」
ジャック「俺たちの存在、忘れてない?」
ロイド「全く、見ていられないな」
ジャック「そんなこと言ってガッツリ見てたくせに」
ロイド「なっ!」
エリカ「あ、貴方たちはなぜ私に・・・」
ロイド「国王様の勅令だ」
ジャック「プリンセスがバンを好いているのは目に見えていましたが・・・バンの想いは分からなかったので」
ジャック「彼の心のうちを探るよう命を受けたのです」
エリカ「じゃあ、昨夜ジャック様が優しくしてくださったのは・・・」
ジャック「バンがプリンセスを心配して、飛んでくるんじゃないかと思ったのです」
エリカ「えっ!」
エリカ「じゃあ、ロイド様も・・・」
ロイド「ち、違う!」
ロイド「俺はただ、エリカに全てを伝えようと・・・」
ジャック「兄貴はカタブツだからな」
ロイド「だが、結果的にはバンは駆けつけた。 ・・・俺の勝ちだな」
ジャック「ちぇっ」
エリカ「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 昨日のパーティーは何だったのよ!」
ロイド「あれも大がかりな茶番だ」
ジャック「宮殿の使用人総出で、貴族になりきってもらったり裏方に回ってもらったり・・・」
ジャック「でも、結構楽しかったよな? 兄貴!」
ロイド「ああ、そうだな」
エリカ「お城の皆に騙されていたのね!」
〇大広間
その日、王子が決まったと本物のパーティーが開かれた。
バン「エリカ様、私とダンスを踊っていただけますか?」
エリカ「ええ、もちろん!」
エリカ(夢だったバンとのダンス・・・ ついに叶うのね!)
しあわせな気持ちに包まれて、ワルツが終わるまで、ただバンの顔だけを見つめていた。
〇華やかな裏庭
踊り火照った身体を休めに、中庭に出た。
爽やかな風が気持ちよい。
エリカ(昨日と同じ場所なのに・・・全然違う)
???「冷えてしまいますよ、お嬢様」
バン「『お嬢様』ではありませんでしたね、プリンセス」
エリカ「私、まだ信じられないわ」
エリカ「私がプリンセスで・・・あなたが、王子だなんて」
バン「ええ、実は私もまだ信じられません。 ですが──」
バン「国王がこしらえてくださったこの服が、何よりの証拠です」
エリカ「ふふっ」
バン「エリカ様・・・なにかおかしなことでも?」
エリカ「ごめんなさい、だって──」
エリカ「格好は王子そのものなのに、態度はバンのままなんですもの」
エリカ「もっと堂々としていれば良いのに」
バン「では、そうさせていただきます」
バンは不意に私の腰を抱き寄せる。
エリカ「ねえバン、ひとつ聞いてもいい?」
エリカ「昨夜のパーティーの時、どこへ行っていたの?」
バン「ああ・・・ 厨房で料理の手伝いをしておりました」
エリカ「何で!? 私、バンを探したのよ!」
バン「申し訳ありません。ですが──」
バン「着飾ったエリカ様を見て、正気でいられる自信がなかったものですから・・・」
バン「昨晩の貴女を見られなかったのは残念ですが──」
バン「今こうして隣に居られるのだから、私は果報者です」
エリカ「バン・・・・・・」
バンは私の唇を指でなぞると、慈しむような口づけをくれた。
〇西洋の城
1年後──
〇洋館の玄関ホール
城の外から、ガヤガヤとたくさんの人の声が聞こえる。
エリカ「バン、緊張しているの?」
バン「はい・・・大勢の人前に出るのは、初めてなので」
ロイド「堂々としていろ、王子様!」
ジャック「プリンセス、今からでも僕に・・・・・・」
ジャック様は私に手を差し出し、ひざまずく。
バン「参りましょう、プリンセス」
バンは私の手をとってさっさと歩き出した。
〇西洋の城
城の扉を開けると──
国民「エリカ様ー! ばんざーい!」
国民「バン様ー! ばんざーい!」
チュッ──
〇空
それから、
プリンセスと王子様は、
そして二人の国の国民は、
いつまでもいつまでも、
幸せに暮らしました。
おしまい
令嬢や王子ものが大好きなので楽しく読ませて頂きました❗
エリカ嬢の一途で真っ直ぐな姿勢が好きです✨
バンも素敵。執事さん最高です✨
2人の王子様は今後、どんな恋をするんでしょうか。そういうシーンも読みたいです。
ハッピーエンドでほんわかさせて頂きました😆
ここはきっと幸せな国ですよね~😆この国でのんびりと暮らしたいです😂読み終わったらほのぼのとした気持ちになりました😄
微笑ましい作品でした。
結婚後エリカの尻に引かれるバンの姿を想像してしまいました。