〇黒
　　あなたなら
　　デートに母親を連れて来るほどのマザコン男
　　または
　　アプリで出会った顔出しNG訳あり男
　　──どちらを選びますか？

〇女性の部屋
　　私の名前は乙護　運奈。
　　絶望的に、男運が無い。
乙護　運奈（今までの男も、ろくな男がいなかったからなぁ）
乙護　運奈（そんな私ももう29。そろそろ結婚したい・・・）

〇黒
　　そんなある日のことだった

〇女性の部屋
　　ム〝ーっ　ム〝ーっ
乙護　運奈「あら？誰かしら」
乙護　運奈「って、えっ!?」
乙護　運奈「紺・・・???」
乙護　運奈（紺と別れてもう１年位経つはずだけど、今更何？）
乙護　運奈（あいつとは、本当に忘れられないことばっかだからな）
乙護　運奈「悪い意味で」

〇モールの休憩所
　　──１年前
真座　紺「今日は付き合ってくれてありがとう」
乙護　運奈「ううん、気にしないで 私も参考になるように頑張るわ」
乙護　運奈（お母さんの誕生日プレゼントを買いたいから買い物に付き合って欲しいなんて）
乙護　運奈（お母さん思いで優しいなぁ）
　　これが、大きな間違いだった

〇ショッピングモールの一階
真座　紺「これとかどうかな？可愛くない？」
乙護　運奈（親に指輪!?）
乙護　運奈（絶対ダメって訳じゃないけどちょっと重いし方向性違くない？）
乙護　運奈「指のサイズとか分からないし、もう少し他のも見てみない？」
真座　紺「それもそうだね」
真座　紺「じゃあこれは？ピンクで可愛くない？」
乙護　運奈（これは10代向けのブランドなんだよなぁ・・・）
乙護　運奈（とはいえ、買っちゃいけない訳じゃ無いし、そこら辺は個人の自由だもんね）
乙護　運奈（でもなぁ）
真座　紺「運奈だったら、これ貰ったら嬉しい？」
乙護　運奈「えっ!?」
乙護　運奈（しまった、顔に出たか）
乙護　運奈「可愛いとは思うんだけど色が結構派手だから、人を選ぶ所はあるかなぁって」
乙護　運奈「人によっては、色を合わせるのにちょっと使い道は迷っちゃうかも」
真座　紺「なるほどね じゃあ・・・」

〇ショッピングモールのフードコート
真座　紺「なかなか難しいねー」
乙護　運奈（あれから３時間、結局どれもチョイスがどこか斜め上過ぎて決まらなかったな）
乙護　運奈「もうさ、本人に聞いたら？」
真座　紺「えっ？」
乙護　運奈「サプライズ感はなくなるし、 相手も遠慮しちゃうかも知れないけど」
乙護　運奈「「一緒にご飯食べたい」とか 「見たい映画がある」とかかも知れないし」
乙護　運奈「案外そういうのが１番喜ばれるかも知れないじゃん」
真座　紺「わかった！ありがとう！」

〇大きいショッピングモール
　　──数日後のデートにて
乙護　運奈（えっ）
乙護　運奈（隣の人、誰？）
真座　紺「お待たせー」
乙護　運奈「えっと・・・」
真座　紺「あっ、この人は俺のお母さん」
乙護　運奈（お母さん!!???）
真座　黒世「母の黒世です。紺ちゃんがお世話になってるようで」
乙護　運奈（紺ちゃん!!!!!!??????）
乙護　運奈「──えっと、乙護　運奈です。いつもお世話になっております」
真座　紺「今日はお母さんも一緒だから」
乙護　運奈（はぁっ!!!!!!??????）
乙護　運奈「聞いてないんだけど!?どういうこと!?」
真座　紺「運奈が言ったんだろ？本人に聞いたらいいって」
真座　紺「今日このモールで欲しいもの買って、一緒にご飯食べて」
真座　紺「運奈とも仲良くなれたら一石二鳥じゃん」
乙護　運奈（そういうことを言いたかったんじゃないし、普通何の相談もなく連れて来る？）
真座　黒世「運奈さんが紺ちゃんに見合う女か、 見定めさせて貰いますから」
乙護　運奈（は？）
真座　紺「今日の服も良い感じだろ？ 母さんが決めてくれたんだ」
乙護　運奈（今日『も』・・・？って事は、いつも母親が選んでるの？）
真座　黒世「紺ちゃんは元がいいから何でも似合うのよ」
真座　紺「ありがとうママ！」
乙護　運奈（だめだ、頭が痛い）

〇女性の部屋
乙護　運奈（結局、それからも母親にべったりで自立してないことがどんどん分かって別れたけど）
乙護　運奈「それを知る前まではすごく良い彼氏だったんだけどな」
乙護　運奈「おっと、肝心な内容は・・・」

〇黒
真座　紺「久しぶり。元気にしてた？」
真座　紺「突然だけど、俺たちやり直せたりしないかな？やっぱり俺には運奈が必要なんだ」
真座　紺「良かったら、直接会って話したい。返事待ってます」

〇女性の部屋
乙護　運奈「はぁっ!?何これ？」
乙護　運奈「知ったこっちゃないんだけど・・・」
乙護　運奈「とはいえ、結婚前提に話してた時期もあるし、会わない間にマザコン治ってたり？」
乙護　運奈「行くだけ・・・話を聞くだけならしても良いのかな？」
　　ム〝ーっム〝ーっ
乙護　運奈「返信してないのにまた来た!?」
乙護　運奈「・・・と思ったら、この人は」
乙護　運奈（紺と別れてすぐに始めたマッチングアプリで、最近すごく良い感じの人からだ）
乙護　運奈（他愛無い話も楽しいし、この人からの連絡はいつも嬉しいんだよなぁ）
乙護　運奈（昨日のメッセージの返信かな？）

〇黒
和気　阿利「運奈さんとはお話も弾むし、とても楽しいです」
和気　阿利「宜しければですが、お時間が合いましたら近々実際にお会いしませんか？」
和気　阿利「本当に嫌じゃなかったらなのですが」

〇女性の部屋
乙護　運奈「このタイミングで!?」
乙護　運奈（元彼からのタイミングと同じってどんな奇跡よ!!）
乙護　運奈（確かに阿利さんとは１番お話も合うし、 やり取りしていて楽しいけれど・・・）

〇サイバー空間
乙護　運奈「本当に私たちお話が合いますね」
和気　阿利「そうですね」
乙護　運奈「込み入ったお話をしてしまうのですが、 阿利さんはお顔の写真や」
乙護　運奈「お仕事などは全て伏せられているんですね？」
和気　阿利「そうなんです」
和気　阿利「ちょっと人に見られたく無い見た目と 言いたく無い職業なので・・・」
乙護　運奈（見た目にコンプレックスがあるとか、 仕事も言いにくい感じのなのかな？）
乙護　運奈（正直趣味以外、身長も休みも何もかも載ってないんだよね・・・）

〇女性の部屋
乙護　運奈（あまりにも謎に包まれてるから、ちょっと怖い所もあるんだよね）
乙護　運奈（でも、ここまでお話が合う人もなかなかいないし、逃したらもうチャンスないかも!?）
乙護　運奈（2人とも会っちゃえば良いのかな・・・？）
乙護　運奈（いや、それじゃあまりにも不誠実だ）
乙護　運奈「どっちかに決めないと」

〇黒
　　度が過ぎる位のマザコン男
　　だけど、それ以外はいい人だった元彼

〇サイバー空間
　　職業も顔も不明だけど、
　　今まで出会った誰よりも話が合う
　　ネットで知り合った人

〇女性の部屋
乙護　運奈「あなたならどちらを選びますか？」