読切(脚本)
〇洞窟の入口(看板無し)
エリー「始めてのダンジョン探索・・・ 緊張するね・・・」
アリア「わたしたちなら大丈夫よ!」
アリア(エリーとは知り合って間もないけど、 剣術は見た感じ相当なものだと思うんだけどなぁ・・・)
アリア(なんでこの娘がダンジョン探索も始めてっていうのが不思議だわ・・・)
エリー「えぇーっ・・・ アリアだってダンジョンは数回入っただけって言ってたじゃん・・・」
エリー「初心者2人で大丈夫かなぁ・・・」
アリア「だから大丈夫!! 逆にそんな緊張してたら上手くいくものもいかなくなっちゃうよ!」
アリア(本当に大丈夫かしら・・・)
〇洞窟の深部
エリー「思ってたより暗いんだね・・・ 昔は全然気にならなかったのに・・・」
アリア「あれ? ダンジョンは始めてじゃなかったの?」
エリー「あー・・・ いや・・・入ったことはあるんだけど探索が始めてっていうかなんていうか・・・」
アリア「?」
エリー「あっ! あそこ見て!」
アリア「・・・ 宝箱?」
エリー「なんか幸先良さそう♪」
アリア「いやこれは・・・」
エリー「中身は何かな~」
アリア「離れてエリー!!!」
エリー「わわっ!! 何よ?大きな声出してー」
アリア「明らかに怪しいでしょう? これはミミックよ」
エリー「えぇっ!? これが? 確かに宝箱とかに化けてるって聞くけど・・・」
アリア「火の精霊よ・・・ 我らに力を・・・」
エリー「えぇっ!? いきなり!?」
アリア「ファイアボルト!!!」
エリー「宝箱は・・・」
ミミック「ぎぃやあああ!!!」
エリー「うわぁっ!! ほんとにニセモノだった!!」
アリア「そりゃそうよ そう簡単に宝箱なんか見つからないって」
エリー「うーん・・・ それもそうかぁ・・・」
アリア「さぁ気を取り直して! 先に進むわよ!!」
エリー「わわっ・・・ 待ってよー」
〇滝つぼ
アリア「驚いたわね・・・ こんなところに水源があるなんて・・・」
エリー「うーん・・・ 足元びしょびしょ・・・」
アリア「足元に注意しながら進まないと・・・」
エリー「ああぁっ!! 待ってよー」
〇滝つぼ
エリー「アリアー!! どこー!!」
エリー「どうしよう・・・ はぐれちゃった・・・」
「エリー? どこー?」
エリー「よかったぁ~ おーい!」
アリア「エリーこんなところにいたの? 探したのよ?」
エリー「それはこっちのセリフだよー」
エリー(あれ? アリアの声、反対側から聴こえたと思ったんだけど・・・)
アリア「ほらこっちよ 新しい道を見つけたの」
エリー「う・・・うん」
〇岩の洞窟
エリー「あれ? なんか行き止まりだよ?」
アリア「そうね・・・」
エリー「もうっ道間違えてるじゃん~」
アリア「いいえ・・・ ここであってるわ・・・」
エリー「え・・・ ど・・・どうしたの?」
アリア「ふふふっ・・・」
「エリー騙されないで!!」
アリア「そいつはわたしに化けた偽者よ!!」
エリー「えぇっ!? アリアが2人!!?」
アリア「・・・」
アリア「何言ってるのよ!! いきなり出てきたそっちが偽者でしよ!?」
エリー「もしかしてまたミミック?」
アリア「いいえ・・・ おそらくさっきの水辺を住処にしていたコピースライムでしょうね・・・」
アリア「・・・・・・」
アリア「エリー!! あなたなら分かるわよね? わたしが本物のアリアよ!?」
アリア「エリー・・・」
エリー「・・・・・・」
エリー「本物は・・・」
エリー「あなたよ・・・ あとから追いついて来た方のアリア・・・」
アリア「なんですって!?」
エリー「さっきの水辺ではぐれたときにアリアの声が聴こえた・・・ でもあなたは反対側から現れた・・・」
エリー「しかも行き止まりの道まで誘導して・・・」
アリア「チッ・・・ よく気づいたな・・・」
エリー「よくも騙してくれたわね!! たあぁっ!!!」
アリア「うっ・・・やられた~・・・」
アリア「なんてね? 本物が言ってたろう? 俺はスライムだ・・・ 剣で液状の身体を斬れると思ったか!?」
エリー「そんな・・・」
アリア「ならわたしの炎で蒸発させてやる!!」
アリア「ファイアボルト!!!」
アリア「ぐっ・・・ああぁっ・・・」
コピースライム「うぅっ・・・」
アリア「・・・・・・」
エリー「こんなのがアリアに化けてたなんて・・・」
アリア「えぇ・・・そうね・・・」
アリア「・・・・・・」
アリア「おいお前!!」
コピースライム「ひぃっ・・・」
アリア「もう人間に危害を加えないと誓えるなら見逃してやる・・・」
エリー「えぇっ!?」
コピースライム「ほ・・・本当か!?」
アリア「ええ・・・」
コピースライム「誓う!もう人間に危害を加えない!」
アリア「・・・ いいわ・・・ さっさと行きなさい」
エリー「本当によかったの? わたしじゃどうしようも出来なかったけどさ」
アリア「・・・ いいのよ・・・別に」
〇殺風景な部屋
アリア「なんだかえらく人工的になってきたわね・・・」
エリー「これももしかして罠・・・ なのかな・・・」
アリア「転移の魔法陣!? マズい!!」
〇モヤモヤ
エリー「うーん・・・ここは・・・」
「ここから出たくば我を倒していくのだ・・・」
エリー「誰!?」
ドッペルゲンガー「我はドッペルゲンガー。 汝を写す鏡・・・」
エリー「鏡・・・?」
ドッペルゲンガー「さぁ剣を取れ!」
エリー「どんな攻撃をしてくるかわからないけど・・・ 先手必勝!! たあぁぁっ!!!」
エリー「やった・・・!?」
エリー「きゃあああっ!!!」
ドッペルゲンガー「言ったはずだ・・・ 汝を写す鏡だと・・・」
エリー「・・・・・・」
エリー「わたしの偽者・・・? いや・・・鏡?」
エリー「さぁ・・・かかってこい・・・」
エリー「はああああっ!!!」
エリー(剣は互角・・・ 一体どうすれば・・・)
エリー「どうした? こんなものか?」
エリー「一か八か!!!」
エリー「アリアの魔法が宿った杖・・・ これでわたしの剣にアリアの炎を上乗せさせる!!!」
エリー「はああああっ!!!」
エリー「なんと!!」
エリー「見事だ・・・」
エリー「やったぁ・・・ これでここから出られる・・・」
エリー「いいやまだだ・・・ お前には決着をつけなければならない者が・・・ 過去がある・・・」
ドッペルゲンガー「ここは自分自身を見つめ直す空間だ・・・ もう気づいているだろう?」
エリー「わかってる・・・ でもわたしを写した鏡は倒した!」
エリー「・・・・・・」
エリー「まさか・・・ そんなまさか・・・」
ドッペルゲンガー「お前の最後の相手はわたしだ・・・」
???「ギギャアア!!!」
エリー「いやあああっ!!!」
〇モヤモヤ
エリー「そうだ・・・ わたしはかつては・・・」
エリー「その辺にいる汚らしいゴブリンだった・・・」
エリー「わたしはあるダンジョンのゴブリンの群れの一匹だった・・・ ある日仲間たちが殺した冒険者が持っていた魔法の杖を手に入れて」
エリー「その杖は鏡写しの杖だった・・・ 殺した女冒険者の姿をそのままわたしに写して・・・ わたしは今のわたしになった・・・」
エリー「人間の雌の身体になったわたしに仲間たちは襲いかかってきた・・・ 杖も壊されて元にも戻れなくなって・・・」
エリー「命からがらダンジョンから脱出したわたしは人として生きていくしかなかった・・・」
エリー「辛かった・・・ 冒険者にはなったけどかつての仲間に襲われた恐怖が頭から離れなかった・・・」
エリー「そんな中、アリアとパーティーを組むことになった・・・ 彼女はわたしが辛いときに寄り添ってくれたたった一人の存在・・・」
エリー「アリアにまた会いたい!! かつてのわたしを倒して!!!」
エリー「ハァァァッ!!!」
???「ぎゃあああっ!!!」
ドッペルゲンガー「見事だ・・・ これでお前は・・・」
〇岩穴の出口
エリー「うっ・・・ここは・・・」
アリア「眩しい!!! 出口・・・なの?」
エリー「ていうかアリア!!! 大丈夫だった!?」
アリア「エリーこそ! 魔物たちに変なことされなかった!?」
エリー「あ・・・」
エリー「うん・・・ そのことで話があるの・・・」
エリー(言いたくない・・・ 本当のことを言ったら嫌われるかもしれないけど・・・ アリアに嘘をついたままでいたくない・・・)
アリア「その・・・ わたしもあるの・・・」
エリー「そうなの?」
アリア「あ・・・ エリーからどうぞ・・・」
エリー「じゃあ・・・えっとね・・・ すっごく変なこと言うようだけど・・・」
エリー「わたし・・・ ゴブリンだったの・・・」
アリア「えーっと・・・」
アリア「それってどういうこと?」
エリー「かつてのわたしはゴブリンで・・・ その・・・冒険者が持っていた魔法の杖を使ってこの姿になって・・・」
エリー「でも仲間のゴブリンたちに杖を壊されて元に戻れなくなって・・・」
エリー「人間の女の子の身体になったわたしを仲間たちは・・・」
アリア「もういいわ・・・ 察しがつく・・・」
アリア「辛かったでしょ? 今まで・・・」
エリー「・・・わたしのこと・・・ 気持ち悪いって・・・思わない・・・の?」
アリア「ええ・・・ 勇気を出して話してくれてありがとうね?」
エリー「うん・・・うん・・・」
アリア「だからつぎはわたしの番・・・」
エリー「え・・・?」
アリア「わたしは実は・・・コピースライムだったの」
エリー「えっ・・・」
エリー「ええええええっ!!!!」