読切(脚本)
〇渋谷駅前
未知(最悪な気分。美月の結婚式に拓哉も招待されてたなんて。拓哉、幸せそうだったな。私たち、なんで別れたんだろう・・・)
未知(そういえば渋谷で喧嘩したんだ。それで・・・)
〇渋谷駅前
未知「ハッ、あの子、もしかして・・・あなた、未知じゃない?」
未知「そうですけど・・・えっ、まさか私? 未来の私⁇」
未知「未来って・・・今は2022年よ」
未知「違う、今は2012年!」
未知「そんな・・・でも目の前にいるのは間違いなく10年前の私だわ」
未知「10年後の私・・・」
〇渋谷駅前
未知「もしかして拓哉と喧嘩して帰るところじゃない?」
未知「なんで知ってるの? あ、未来の私なら知ってるか」
未知「いい? ちゃんと謝って仲直りしなさい!」
未知「なんで私が謝るのよ!」
〇渋谷駅前
未知(落ち着いて・・・たしかこのあと拓哉からLINEがきたはず。それを私が無視したから別れたのよね)
未知(どこかで時間を稼いで過去を変えなきゃ!)
〇渋谷駅前
未知「過去の私に会うなんて信じられないけど、せっかくだから飲みにいかない? 飲みたい気分でしょ?」
未知「・・・うん、まあね」
〇シックなバー
未知「懐かしい。ここ、安くて雰囲気が良くて好きだったな」
未知「もう行かないの?」
未知「数年前に閉店しちゃってね」
未知「そうなんだ・・・」
〇シックなバー
未知「今日は奢るわ。何がいい?」
未知「何でもいい!!」
未知「じゃあ、ソルティードックで」
未知「さすが私の好みをわかってる!」
未知「だって私自身だもの。乾杯!」
未知「カンパーイ!! はぁ〜、美味しい♪」
〇シックなバー
未知「さっきの話だけど、やっぱり拓哉に謝りなさい」
未知「またその話? なんで私が謝らなきゃいけないのよ!」
未知「喧嘩の原因は、拓哉があなたを置いて友達とスノボにばかり行くからでしょ? 一緒に行けばいいじゃない」
未知「だって私、滑れないんだよ? たまにはデートしてよって言ったら、どこがいい?って聞くから・・・」
未知「どこでもいいって言ったら、じゃあスノボだなって!」
未知「拓哉、雪国出身でスノボ好きだもんね。教えてもらえばいいじゃない」
未知「嫌だよ、みんな滑れるのに私だけ滑れないなんて恥ずかしい!」
未知「でもね、拓哉、そこで出会った人と将来、結婚しちゃうんだよ!」
未知「・・・」
未知「あなたも一緒に行って、2人が出会わないようにしなきゃ!」
〇シックなバー
未知「ねぇ、拓哉は10年後、何してるの?」
未知「地元に戻って市役所で公務員。来月、2人目が産まれるらしいよ」
未知「詳しい・・・」
未知「今日、美月の結婚式で拓哉に会ったから。同じゼミの美月、わかるでしょ?」
未知「うん。で、10年後の私は何してるの?」
未知「何って・・・社会人」
未知「仕事は?」
未知「事務だけど・・・」
未知「出版業界?」
未知「ううん、違うわ」
未知「・・・」
未知(ずっと憧れていたものね。 でも現実は厳しかった・・・)
〇シックなバー
未知「結婚は?」
未知「してない」
未知「彼氏は?」
未知「一応いる」
未知「結婚しないの?」
未知「・・・」
未知「彼氏がいるのに、なんで拓哉のことが気になるの?」
〇シックなバー
未知「だって雅人、仕事を辞めて地方に移住するって言い出すんだもん! 東京はもう嫌だって。私はどうなるのよ?」
未知「彼氏、雅人って言うんだ。一緒に移住すればいいじゃん」
未知「よく知らない田舎に住むなんて。仕事だってあるかわからないのに」
未知「雅人はなんて言ってるの?」
未知「俺とお前の人生は違うから、お互い好きに生きればいいだろって」
未知「・・・あなたはどうしたいの?」
未知「私は・・そろそろ結婚の話が出るかなって思ってたのに。でも移住を渋ったら、俺はひとりでも構わないって・・・」
未知「なんで私のことを考えてくれないのよ!」
〇シックなバー
未知「でも拓哉の地元も田舎だよ?」
未知「だって公務員じゃない。安定してるでしょ」
未知「・・・」
未知「あ、拓哉からLINEだ」
〇シックなバー
未知「良かったじゃない。ごめん、言い過ぎたって書いてあるでしょ?」
未知「うん」
未知「早く返信しなさいよ。拓哉、まだ渋谷にいるから今なら仲直りできるわ。末永く仲良くしてね」
未知「ねぇ、喧嘩したとき、拓哉からなんて言われたか憶えている?」
〇シックなバー
未知「なんて言われたっけ?」
未知「お前は自分では何もできないのに、人が決めたことには文句つけるんだなって言われたんだよ」
〇シックなバー
未知「それで喧嘩になったんだ。でも私は10年経っても変わらないみたいだね」
未知「・・・」
未知「拓哉に返信したよ。私も悪かったって。 謝ってくるよ。スノボにも行く」
未知「でもあなたに言われたからじゃない。自分で決めたことだから」
〇渋谷駅前
過去の私からダメ出しされた気分だった。私たちは店を出てスクランブル交差点で別れた。
・・・そして翌朝。
〇シンプルなワンルーム
未知(何も変わっていないみたいだけど・・・昨日の出来事は夢だったのかしら)
未知(あ、拓哉と雅人からLINEがきてる)
〇農村
拓哉「昨日は久しぶりに会えて嬉しかった。移住は俺の職場でもサポートしてるから、良かったら本気で考えてみて!」
拓哉「仕事も紹介できると思う。お相手の方にもよろしく。ふたりでよく相談してね。俺はいつでも相談に乗るから!」
雅人からのLINEには、こう書かれていた。
雅人「移住のこと、一緒に考えてくれてありがとう。知り合いにも聞いてくれたんだね。嬉しかったよ」
雅人「未知となら、どこに住んでも幸せになれるだろうな」
〇シンプルなワンルーム
未知(どういうこと? 過去の私が変えたのかしら・・・)
未知(ハッ・・・違う、私は変わったんだ。自分で決めて行動できる私に・・・)
未知(現実は変わってないけど、私自身は変わったんだわ・・・)
〇シンプルなワンルーム
未知(そうだ、雅人にLINEして相談しなきゃ。 移住のこととか、将来のこととか! ワクワクしてきた〜♪)
〇渋谷駅前
いつかまた会えるかな。
過去や未来の私に・・・
未来の自分って、会ってみたいようでちょっと怖いです。笑
彼女は行動して変えたんですよね。
過去の自分に教えて現在が変わるって、過去の自分はちゃんと動いたみたいですね。
未来の自分が夢を見ていた職にもつけておらず、ずっと自分では決められない大人になっていたというシーンがとてもリアリティがありました🥲自分の考え方一つで、世界は違って見えるのだと本当に思います😌
現在の自分は未来がわからないから未来の自分に聞きたいでしょう。現在の自分は過去の自分に直してもらいたい事があるでしょう。だから、現在を悔いのないように生きなさい。という事ですか。