エピソード27『クズの本懐』(脚本)
〇荒廃した街
【2034年、モンガル。『歯車フォーチュン』】
────どろどろの身で私は逃げた。
────生きていれば復讐できる。
────またチカラを蓄えれば、奴らを葬る事が出来る。
泡《あぶく》 の身で、同胞の住まう『アフリカ』を目指した。
〇荒地
再生の度に食欲が溢れる。
地を食《は》 んで、草を喰らい、あの地を目指した。
〇荒野
ユーラシアの地は広かった。
広く、汚く、ただただ長かった。
〇荒地
長かった。
ユーラシアの民1「なんだコイツ?」
ユーラシアの民2「構わねぇ、燃やしちまえ!」
ユーラシアの民1「こいつ、おもしろ!!」
〇荒野
それほど進む事無く、万能再生機構『ノルン』に障害が起きた。
歯車フォーチュン「あいつら、『化け物クリエイターズ』のせいだ」
残ったチカラ、
万能細胞『マイティ』の再生力だけで、私は懸命に地を這った。
〇荒地
道は長く、長く未知で、お腹が空いた。
ユーラシアの民3「お!」
モンガルのガキ共が、液状の私へ油を撒く。
死にたくなかった。私は這い、逃げ続けた。
〇荒野
お腹が空いた。
────アフリカの地はとても遠い。
〇荒地
幾つの日が昇っただろう。
〇荒廃した街
幾つの星が巡っただろう。
〇荒地
幾つの月が、満ち、引いていったのだろう。
────やがて、万能細胞『マイティ』にも不具合が起こるようになった。
・・・・・・お腹が、
〇荒地
再生も儘ならない。草でイイ、何か飲みタイ。
歯車フォーチュン「喉が・・・」
歯車フォーチュン「喉が・・・」
歯車フォーチュン「・・・・・・飲みタイ」
――虚ろだった意識を取り戻した時、
そこに、1人の少女が居た。
喰おうとしたが、そこまで顎が広がらない。
喰いたかった!
――その水分が欲しかった。
名も知らぬ少女「喉が渇くんでしゅか? これ、食べましゅか?」
彼女は私に瑞々しい『トマト』をくれた。
私は恐る恐る、でも無我夢中でソレに食らいついた。
歯車フォーチュン「うまい。美味いお! 美味いお! 美味いお。ありがとう! ありがとお!!」
名も知らぬ少女「そうでしゅか、良かった♪」
全て、全てを彼女に感謝した。
私は私に『トマント』をくれた彼女に
『ノア』で生まれた皆が持つ『パス』を渡した。
唯一、どんな時も肌身離さず持っていた『麦の穂のコイン』を顎で渡す。
これが無ければ私たちは故郷へ戻れない。だから彼女に、私の1番大事なこれをあげた。
道中、話す相手の居なかった私は、自身の夢を彼女に語った。
科学の事、医療の事、全てを救い、全てを等しく治める事。
思うように言葉にならない夢を、彼女は笑顔で聞き、頷き、応えてくれた。
────充分過ぎる幸せを、私は得た。
いつから居たのか?
そんな私を見下すように少年が立っていた。
彼が笑い、私へ『ソレ』を撃ち込む。
撃ち込まれた弾丸が体中を跳ね回る。
弾が血? に反応し、爆散? それが新たな血を生み私の中で、新たに爆散?
私の再生と共に爆散は続いた。少年は笑いながら銃を撃ち続ける。
柊 モカ「な、なんでそんなヒドイ事が出来るんでしゅか?」
柊 モカ「この子もう、もう長くないのに! なんでそんなヒドイ事を!」
レッド・ボーイ「そうか? けど、コイツはとっても悪い奴なんだぜ?」
柊 モカ「それでもヒトは、皆、みんな、幸せになる権利があるはずでしゅ!」
レッド・ボーイ「ガキンチョ。世の中にはな、 死ななきゃいけない奴も居るんだよ。コイツのようにな♪」
レッド・ボーイ「死ぬことでしか救われない奴も居るんだ。 お前も少しは、世界を知るといい。でなきゃ、きっと大事な人を守れない」
私は、爆散し、再生し、爆散し、爆散し、ばくさんし、
〇空
────トマントの味を思い出して、とても幸せな気持ちになった。
舌に残るトマントは、──とても甘く、美味く、────オイシい。
歯車フォーチュン「────────ありがたう」
私の一生は、この少女への圧倒的感謝で幕を下ろした。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭
すごく切ない最後(´;ω;`)
でもモカちゃんの優しさのおかげで少しは救われたと思う
モカちゃん可愛いまじ天使🫶🏻️💞