化け物クリエイターズ

あとりポロ

エピソード26『コブタの挑戦』(脚本)

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〇空
  【2034年、モンガル『ホビロン』。『スズキ コージ』】
  僕は『ブラック・ダド』に提示した。
  
  僕が、僕たちが勝つための布石を。
コージ「けれど、少しルールを変えさせてもらう。 ポーカーはポーカーでも、勝負するのは『ローポーカー』だ!」
ブラック・ダド「・・・『ローポーカー』 なるほどな。しかし、私に関わる生き物は優に70億を超える。それでもキミは勝負を打つのかい?」
コージ「ああ! 勝負は口頭で行おう。提示する順番は『じゃんけん』で決める」
ブラック・ダド「スートの強さ、カスの扱いはどうするんだい?」
コージ「当然逆向きさ。 『クラブが強く』『スペードが弱い』。 そして、『カスが最強』『Aが最弱』」
ブラック・ダド「面白い事を考えるな、キミは」
  ・・・・・・・・・・・・
  数分後、
  
  じゃんけんに負けた『ブラック・ダド』が自身の役を提示した。
ブラック・ダド「これが私の手だ」
ブラック・ダド「1人目は『コーザン・ナタリア』」
ブラック・ダド「スートは持たないから『クラブ』 数字も持たないから『カス』だ。 某国の国務長官を務めている。ホームの優秀な人材だよ」
ブラック・ダド「・・・2人目は」
ブラック・ダド「『マトリクス・エッデン』」
ブラック・ダド「『クラブ』『カス』。 私が贔屓にしている秘書だ。人員を配置する事に長けている。私の行動も阻まない、いい男だよ」
ブラック・ダド「・・・・・・3人目」
ブラック・ダド「『真鳥《まとり》 国和《くにかず》 』」
ブラック・ダド「『クラブ』『カス』 島国に派遣しているウチの人員だ。頭の回転が恐ろしく早い。島国の治権は彼に任せようと思っているところだ」
ブラック・ダド「・・・4人目」
ブラック・ダド「『ハインシュ・ユーゲル』。 『ダイヤ』『カス』。 電気工学におけるウチのトップだ」
ブラック・ダド「そして最後、『エンディ・マイフ』。 『ハート』『カス』」
ブラック・ダド「エンターテイナーであり私と親交の深い、いわば友人だ。彼の芸は心から楽しめる。キミも1度彼の映画を観てみるといい」
ブラック・ダド「役に使う名は、『ノーティス・ディップ』」
ブラック・ダド「彼から『ノー』の文字を。そして規定ワードの『ペア』を加え、 『ノーペア』とする。以上だ」
  『ブラック・ダド』は『ローポーカー』における最高の役、『ノーペア』を提示した。
  しかも、カードのスートも、数も『最弱』。
  
  つまりは『最強の役』だ。
コージ「じゃあ、僕の番だ」
コージ「1人目。 『ヒト腹 創』。『クラブ』で『カス』」
コージ「2人目。 『言霊 みれい』。『クラブ』で『カス』」
コージ「3人目。 『楽々』。『クラブ』で『カス』。 ちょ、『楽々さん』叩かないでくださいよ!」
コージ「4人目。 『飼葉 タタミ』。『ダイヤ』で『カス』」
コージ「5人目。 最後。僕たちの切り札! 『泉 緋色』。 『ハート』で『カス』」
コージ「そして役は! 僕、『スズキ コージ』。元の名は『コブタ』。ここから取った『ブタ』だ。 つまりは『ノーペア』さ!」
ブラック・ダド「つまりは、引き分け、かい?」
コージ「違うな。アナタの作ったルールに書いてあっただろ? 『勝敗を理性的に決する』って。 だから僕は、アナタに問う」
コージ「『ブラック・ダド』、アナタと僕の『手札』、どちらが『弱く』見えるかい?」
ブラック・ダド「・・・・・・・・・」
コージ「アナタの選んだ人たちと、僕たち『化け物クリエイターズ』。 名前すら持たない僕たちと、アナタの選んだ人たち」
コージ「どちらが、『より弱い』か? つまりは、『ローポーカー』において、どちらが『強い』か?」
ブラック・ダド「・・・・・・・・・」
ブラック・ダド「・・・・・・・・・」
ブラック・ダド「・・・・・・分かった。私の負けだ」
ブラック・ダド「だが、『スズキコージ』くん。 キミはここで勝負を降りるわけじゃあるまい? 2戦目と行こう」
  無理だ! どう考えても無理だ。
  
  僕たちが、このゲームで2戦目を行える訳が無い。
ブラック・ダド「それが無理ならチップを払いたまえ。それが『勝負』というものだ」
  『ブラック・ダド』が『タタミさん』へ手を伸ばす。僕は慌てて彼女の前で身構えた。
ブラック・ダド「『タタミくん』 いや、『草乃葉《くさのは》 由香《ゆか》くん 』」
ブラック・ダド「キミの『導きの園』のパスをもらおう。それでキミたちをゲームから降ろしてやる」
  『タタミさん』の本名? それを聞いた『楽々さん』が口元を押さえる。
  僕もその名には聞き覚えがある。『ノア』の旧指導者の奥さんの苗字が、
  
  たしか『草乃葉』だった。
  『タタミさん』が『緋色さん』を抱いたまま
  
  『導きの園』のパス、麦の穂が描かれた『銀色のコイン』を差し出す。
ブラック・ダド「それではさらばだ、『化け物クリエイターズ』の諸君。 もう会う事は無いだろう。キミたちの幸運を心から祈る」

〇荒廃したセンター街
  『ブラック・ダド』が炎の中を進んでいく。
  
  その身を翻《ひるがえ》 す事はもう、きっと2度と無い。
  『タタミさん』は、『緋色さん』の体を抱いてただただ顔を伏せていた。
タタミ「もう。これで、・・・・・・わたしは何処にも行けなくなった。空も飛べない。もう。もう2度と」
  身を屈めて『タタミさん』へ向き合う。
  胸を大きく叩いてみせた。
  
  僕、『コブタ』は愛するヒトに公言する。
コージ「大丈夫です『タタミさん』。言ったじゃないですか、出会った時に」
  懐から『タタミさん』のものと同じ『銀色のコイン』を取り出す。無理にでも笑ってみせた。
コージ「僕は、上流階級の人間だって!」
  僕は、いつも見ていた『緋色さん』の真似をして、彼と逆の右腕で『サムズアップ』を決めてみせた。
タタミ「・・・・・・・・・・・・」
  苦しそうに、でも、目を懸命に広げて。
  
  その後『タタミさん』は、いつも通り笑ってくれた。
タタミ「・・・・・・うん。そうだったね!」
  𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭

次のエピソード:エピソード27『クズの本懐』

コメント

  • 作中に度々登場するゲームだったり設定だったりすごく考えられててななちゃんの知識量の多さとか頭の回転の良さとかが見えて凄いな…❗っていつもドキドキしながら感心してる✨
    また続きが更新されて嬉しいよ🎶楽しく読ませて頂きました🙏
    続き楽しみにしてるね😊応援してるよ(o⚑'▽')o⚑*゚フレーフレー

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