幸鎖沌に迷えるニンゲン

黒猫千鶴

スクランブル交差点の噂(脚本)

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〇ハチ公前
チャラそうな男「おねーさん、暇?一緒に遊ばない?」
亜希菜「・・・」
チャラそうな男「無視しないでよ~」
亜希菜(しつこいなぁ・・・)
チャラそうな男「ずっとここにいるよね?待ち合わせ?」
亜希菜「・・・・・・」
  男は溜め息を吐いて、亜希菜から離れて行く。
亜希菜(私は彼氏を待ってて暇じゃないの!)
チャラそうな男「俺は諦めるけど、君は諦めないでね」
亜希菜「・・・どういうこと?」
チャラそうな男「・・・」
亜希菜「ちょっと!?」
  咄嗟に声をかけるが、男は走り去って行った。
亜希菜「変なナンパ・・・諦める?何を?」
ナリ君「・・・」
亜希菜「あ、ナリ君!遅いよ、連絡もないから心配・・・」
ナリ君「ヴぅ・・・」
  男は呻き声を上げて、身体を震わせる。
亜希菜「ナリ君?」
ナリ君「ア・・・希、な・・・」
  亜希菜が駆け寄った、その時──
亜希菜「え・・・?」
「きゃあぁぁ!!」
  通行人の悲鳴が、ハチ公前に響き渡る。
亜希菜「なん、で・・・」
  亜希菜は腹部に刺さったナイフを見つめて、その場に両膝を着いた。
  服がゆっくりと赤く染まっていく。
亜希菜「どう、して・・・」
  倒れる瞬間、亜希菜が見た男の顔は──歪な笑みを浮かべいた。
  男はナイフを引き抜き、何度も振り下ろす。鮮血が迸り、地面を汚していく。
ナリ君「ァあハはは──っ!!」
  亜希菜の意識は、高笑いと痛みの中に吸い込まれていく・・・──

〇ハチ公前
「・・・ねー・・・ん・・・・・・」
チャラそうな男「おねーさん、暇?一緒に遊ばない?」
亜希菜「!?」
チャラそうな男「ねえってば──」
亜希菜「しつこい!!」
チャラそうな男「やっと返事してくれた。何度も声をかけた甲斐があったよ」
亜希菜「何言ってるの?」
亜希菜「貴方に声をかけらたのは、これが・・・ 初めて・・・じゃない・・・?」
  次の瞬間、男に声をかけられたシーンが何度も頭の中で蘇る。
亜希菜(この人が去った後、私は──)
亜希菜「ナリ君に・・・刺されて・・・」

〇渋谷のスクランブル交差点
亜希菜「ここ、は・・・?ハチ公前にいたはず・・・」
亜希菜(いつの間にか夜になってる・・・?)
  嫌な空気で満ちている。悪寒が止まらない。
亜希菜「ここは一体・・・?」
ナリ君「あ・・・希、ナ・・・」
亜希菜「ナリ君!」
  亜希菜が駆け寄ろうとした、その時──
魔物「グアアァッ!」
「危ない!」
亜希菜「きゃあっ!」
  亜希菜は誰かに押し倒された。
「おねーさん、大丈夫?」
亜希菜「ありがとう・・・」
亜希菜「貴方・・・!!」
チャラそうな男「立てる?」
魔物「グルゥアァアッ!!」
  何も引き裂けなかったことに気付いたのか、魔物は叫喚している。
亜希菜「け、警察・・・」
チャラそうな男「警察は・・・意味がないよ」
亜希菜「じゃあ、どうするの!?」
チャラそうな男「だから僕がいる」
  男は肩や首を軽く回して、ウォーミングアップを始める。
亜希菜(まさか戦うつもり!?)
チャラそうな男「おねーさん、ここがどこか分かる?」
亜希菜「え?渋谷の・・・スクランブル交差点でしょ?」
チャラそうな男「・・・ちょっと違う」
チャラそうな男「ここは『スクランブル幸鎖沌(こうさてん)』なんだ」
チャラそうな男「君の、手首と首を見てごらん?」
  男に言われるがまま、亜希菜は視線を落とす──
亜希菜「何よこれ!?」
  重々しい鎖が、ジャラリと垂れている。手錠と首輪が付けられていた。
チャラそうな男「ここスクランブル幸鎖沌は、人間の願いを叶えて幸せにする」
チャラそうな男「その代わり、願いが叶った者は罪人・・・『羊』となって囚われ、魔物の餌になる」
チャラそうな男「幸鎖沌は、人間の欲望が集まるところなんだ」
亜希菜「早く外して!私は何も願ってない!!」
チャラそうな男「いいや、君は願ったんだ」
チャラそうな男「だから狼魔(ろうま)に捕まった」
狼魔「私を捨てるの?なんであの子と結婚!?」
亜希菜「私の・・・声?」
狼魔「私はナリ君にとってなんだったの!?私を捨てないで!」
亜希菜「やめて!!」
チャラそうな男「おねーさん、落ち着いて」
  亜希菜は男の声で我に返ると、ガタガタと震え始めた。
チャラそうな男「自分を見失わないで。アレは過去のおねーさん」
チャラそうな男「こんな鎖に囚われちゃダメだ」
チャラそうな男「『今』を生きて」
亜希菜「私・・・ナリ君を諦めきれなくて・・・もう一度やり直したいって願った・・・」

〇レトロ喫茶
友人「ねえ、この噂知ってる?」

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コメント

  • ハチ公前、スクランブル交差点といった日常的な光景から、こんな非日常を生み出されるとは。その発想力を楽しませてもらいました。

  • ただのナンパ野郎じゃなかったんですね笑
    それにしても良い発想やストーリーでした!読んでいてとてもワクワクしました!
    続編もお待ちしてます!

  • チャラいお兄さんがハチ公だったとはどんでん返しが面白かったです。突然話しかけられたらナンパかと思っちゃいますよね。諦めないでの意味が2つあるところが深いなの思いました。

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