拝啓…私を愛してくれた人

夕凪 灯莉

エピソード1(脚本)

拝啓…私を愛してくれた人

夕凪 灯莉

今すぐ読む

拝啓…私を愛してくれた人
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇駅のホーム
  あの日、私は確かに9月29日の8時13分の渋谷駅行きの電車に乗った。

〇電車の座席
山中優里「えっ???」
  乗った瞬間、私の目の前に数字が浮かんでいた。
山中優里「えっ?」
  自分の手足が薄くなって、透けていく
山中優里「あの・・・だれかたすけてください!」
  優里は客席を見渡すが、
  誰もが普通に過ごしている。

〇白
  目の前には数字が近づいて
  1998年9月29日で数字は止まる。

〇公園通り
山中優里「ここはどこ?」
  優里が目を開くと、通りの景色がぼやけている。
「早く私のところに来てちょうだい」
山中優里((女の人?が私に話しかけてるのかな))
山中優里「ここから出してください!」
  どんどんと叩いてみる。
  が、それは届いていないようだった。
  女の人が顔をお腹の方に視線をむけて話した時、女の人が見えた。
垣井美代子「あっ! お腹けった・・あなたも早く会いたいって思ってくれたのかしら?」
山中優里((えっ?お腹??))
山中優里((私はこの人のお腹に中にいる??))

〇渋谷駅前
  目が覚めると優里は
  何故かスクランブル交差点に立っていた。
山中優里((なんでだろう。とりあえず連絡っと))
  圏外
山中優里((まぁ、現代でないことは確かか))
  立ち尽くし、呆然とする優里。
  優里は道行く渋谷の街の人を見渡した。
山中優里((あ、この人!))
  あの不思議な時間のときに現れた人だと優里は確信した。
山中優里((この人に話しかけてということなのか))
山中優里「あの、聞きたいことがあって・・・」
垣井美代子「あっ、はい!」
山中優里「今は西暦何年ですか?」
垣井美代子「2000年9月29日ですよ?」
山中優里((やっぱり、現代じゃないんだ。))
山中優里「私、信じてもらえ無いと思いますが、2022年から来たんです」
  ポケットからスマホを出し、お姉さんに見せる。
山中優里((これで少しは、未来から来たって伝わるかな?))
山中優里「これは、もう当たり前にあるものでスマートフォンと言う携帯電話なんです!」
垣井美代子「えっ・・・えっ・・・ 2022年って言うと、いちにさんし・・」
  困惑しながら、指を折り、何年後かを確かめるお姉さん。
垣井美代子「22年後!?」
山中優里「信じてくれるんですか?」
垣井美代子「信じるわ!」
垣井美代子「あっ、タメ口に・・ごめんね?」
山中優里「大丈夫です!」
垣井美代子「これからどうするの?」
山中優里「友達と渋谷を見ようかと思ったんですが、ここに来てしまって」
垣井美代子「あら、、」
垣井美代子「あと、タメ口でいいわ」
山中優里「え、でも・・・・・・」
垣井美代子「ううん。ここで巡り会ったのも何かの運!それに私からタメ口にしたんだから気にしないで」
山中優里「えっと・・・じゃあ大丈夫?私とで」
垣井美代子「ええ!大丈夫よ!」

〇渋谷の雑踏
垣井美代子「ここ、結構穴場でお気に入りなの」
  メンズ館の屋上に来た2人。
山中優里「すごいです!あっ」
垣井美代子「敬語になってるね」
垣井美代子「景色を見てると、 この街ゆく人たちが過去には親子だったり、友達だったりしてさ」
垣井美代子「でも、今は他人として生きててもおかしくはないんじゃないかなって考えるの」
山中優里「(私はこの人の中から産まれてくる子供をみた?)」

〇渋谷の雑踏
山中優里「あの、私不思議な体験をしてここに来たんです」
山中優里「普通に電車乗っただけなのに」
山中優里「乗った瞬間、数字が現れて手が透けたと思ったら、 あなたのお腹の中にいる想像を見て」
山中優里「霧がかっててよくは見えないけど、通りを歩いて、お腹の子に話しかけてた」
山中優里「たちどまったとき、あなたの顔でした」
垣井美代子「パルコの通りの時かしら?そうね。少し辛い思い出なんだけど、聞いてくれるかしら?」

〇公園通り
垣井美代子「これからどこに行こうかな」
  私は、渋谷の町中を歩いて、子供用品を買いに出かけていたの。
垣井美代子「楽しみだわ」
垣井美代子「早く私のところに来てちょうだいね」
  その時、おなかをトンって蹴った。
  会いたいって思ってくれたのかって嬉しかった。それはきっとあなたね。
垣井美代子「あなたも会いたいって思ってくれたの?」
  でも、上手いこと行かないものね?急な痛みに襲われて。若かったし、どうしたらいいか分からなかった。
垣井美代子「だっ、だれか!」
垣井美代子「たっ、たす・・けて」
垣井美代子((お願いします・・・神様。私はどうなってもいい。お腹の子だけは無事で生まれてきて・・))
  私はそのまま倒れ、救急搬送されたわ。
「救急車を呼べ!!」
「人が倒れてるぞ!」

〇渋谷の雑踏
山中優里「助かったんですよね?」
  美代子は静かに首を振る。
山中優里「そう、、なんですね」
垣井美代子「あなたが見たのは、2年前の私のお腹の中ね」
垣井美代子「ずっとあなたを思ってた。あなたの名前は?」
山中優里「山中優里です」
垣井美代子「あら!素敵な名前ね!」
山中優里「私、あなたの子になっても幸せだっただろうなぁ」
垣井美代子「そんなこと、嬉しいわ。泣かないの」
  優里の涙を優しく手で拭う美代子。
山中優里「でも、2022年、私幸せだよ」
垣井美代子「良かった」
  優里の体が透ける。
山中優里「もうお別れみたい。楽しかったです」
垣井美代子「また会いましょう。楽しみにしてて」
  頷く優里。
垣井美代子「この子のために生きなきゃね。教えてくれて、ありがとう。優里」
  お腹を擦りながら、空を見上げる美代子。

〇葬儀場
本郷美和「2027年、9月29日、今日は母である本郷美代子の葬式に参列していただき、感謝しています」
本郷美和「娘である本郷美和です。 母は尊敬できる優しい人でした」
本郷美和「でもひとつだけお母さん、 夢みたいなこと言ったんです」
本郷美和「未来から来た女の子のおかげで私の今の幸せがあるのよって」

〇SHIBUYA SKY
  あの不思議な体験をした10年後・・・
  私は子供を持った。
  娘の誕生日は9月29日で、5歳になる。
  私の想像だが、あの日、あの人は死のうとしてたんじゃないかって思う。
山中優里「綺麗ね」
結「うん!ママ!高いね!」
垣井美代子「あそこもいいけど・・・ね?」
結「どうしたの?ママ?」
  娘にあの人の姿が見えた。
山中優里「なんでもないよ」
山中優里「そうね!高いね!」
  約束、果たしてくれてありがとう。

コメント

  • 渋谷を舞台にした不思議な感覚に包まれるタイムスリップ物語ですね。電車に乗ったら目の前に数字が現れるという斬新な導入部分からぐいぐいと引き込まれました。登場人物が全員女性であることにも、母から娘へと受け継がれる命の神秘を感じます。

  • 過去の母親に会うって、素敵な体験だと思います。
    お腹の中で守られている時って、どんな感じなのかな?とか思う時がありますから。
    そうして時代がつながっていくんですね。

  • 妊娠と出産・死産、誕生と死、重ためのテーマを生き生きと前向きに描いたこの作品に強く共感を覚えました。真っ直ぐ生きたくなる作品ですね。

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ