人生の休み時間なんてあっという間(脚本)
〇教室
休み時間。至福のひととき。
ただし友人がいる場合に限る──
村木(あぁ・・・・・・きょうもわたしは・・・・・・ひとりぼっち!)
村木(皆さん!そうなんです。わたしは高校入学して、最初の肝心な人間関係構築に)
村木(ミスりました!友達いません!!!!)
一人で過ごす短い休み時間はこの世の「「「「地獄」」」」だ。
昼休みなどの長めの時間なら、教室を出てひとけのない場所に行くとか、
部活動しているなら部室に避難するとか、先生と仲良くなるとか、まあ様々なライフハックがある。
しかし、10分間。ああ、10分間。
〇女子トイレ
村木(毎休み時間トイレに行くと、どうしても他人の目が気になるわたし・・・)
村木(学校のトイレなんて、いつでも誰かいる)
クラスメイト(こいつ、いつもトイレにいるな)
村木(って思われてそう)
〇教室
15歳の心は氷細工のように繊細!
村木(いまは5月中旬。もうクラスの人間関係は出来上がっている)
村木(クラス替えまで10ヶ月もある)
村木(本を読むとか、ノートに向かうとか)
村木(いかにも一人で充実してますムーブを出す生き方もある)
村木(でも、ざわざわしてる教室で・・・みんながおしゃべりしてる中で、作業に集中できるわけない)
村木(友達とまでは言えなくても、「話し相手」を作るのがやっぱり安パイだろう)
村木は昨日観た、好きなVtuberの生配信を思い出していた──
〇幻想
Vtuber 真綿つつむ「つづいてのメッセージはぁ~・・・」
Vtuber 真綿つつむ「『クラスに友達がいません。つらいです。新学期スタートダッシュに失敗しました。』」
Vtuber 真綿つつむ「『斬罪のエルガレオン』さん、デジタルチップありがと~」
Vtuber 真綿つつむ「んー、これ誰かの受け売りなんですけど~、そういうときって自分と同じ立場の人を探すといいんですよ」
Vtuber 真綿つつむ「自分だけぼっちだと思いがちですけど、実は、クラス内にも他にひとりの人っているんですよね」
Vtuber 真綿つつむ「だ・か・ら・・・」
Vtuber 真綿つつむ「相手も同じ気持ちだと思うんで、話しかけてみてね」
〇教室
村木(つつむたん マジ天使!!!)
村木(・・・クラスにひとりで居るやつ・・・ね・・)
村木「そんなのわたししかおらん! いや・・・」
村木(じつはいる。それも、わたしの左となりの席に)
岩尾「・・・・・・」
机から生えたように動かない男子が。
村木(めっっちゃ本読んでる!!! 話しかけづらいわ!!)
村木(すぐとなりの席に、話しかけたそうにしている美少女がいるのだから、ちょっとは手心を加えて!)
岩尾「・・・・・・」
村木(楽しそう!!うらやましい!!こいつ、ぼっちであることをまったく意に介していない・・・!?強い)
村木(うう、四の五の言ってる場合じゃない)
村木(とにかく話しかけるしかない 話しかけろ はやく)
村木「あ、・・・・・あの・・・・」
休み時間が終わった。
〇教室
本日最後の10分間休憩──
村木(さっき出した勇気はどこへやら・・・)
村木(こいつはまたしても読書。さっきわたしが話しかけようとしたの気づいてるはず)
村木(ちょっとはそっちから声かけろ! さっきなにか言った?とかあるじゃろ!!)
村木(ほんとうにこいつは話し相手いらないの・・・!?そんな人いる?)
村木(心がウルツァイト窒化ホウ素(現在地球上で最も硬い物質)で出来ているのか!?)
村木(他人に期待しても仕方ないわ・・・)
村木(つつむたんにメッセージを読んでもらえたんだもん 勇気出さなきゃ)
岩尾「・・・・・・」
村木(このままじゃ休み時間がまた終わっちゃう。今度こそ!)
村木(行け、行くのよ、ひなこ!!!(※村木の名前))
村木(勇気・・・。ゆうきィィ~~!!!)
岩尾「・・・・・・」
村木(うっ、なんて話しかけたらいいか全然わかんないよ~~!!!別に相手になんの興味もないし~~!!!)
村木(そもそも名前なんだっけ・・・倉田だっけ?(※岩尾))
村木(あああ~~~もう、にんげんかんけい つら!!!!)
休み時間が終わった。
〇図書館
放課後
村木「疲れた一日だった・・・・・・」
図書室の先生「村木さん。授業についていくの大変なの?」
村木「授業以外のことが大変なんですよお、高校生ってやつは」
村木「先生しか話し相手いないですし」
図書室の先生「そっかぁ。まあ図書室にいつでも来てよ。たまには本も借りてね」
村木「はい! ありがとうございます!」
〇まっすぐの廊下
村木(教室に宿題のノート忘れちゃった~ めんどくさ)
村木(早く帰ろう・・・)
〇教室
岩尾「・・・・・・」
村木(あ!? 倉田・・・じゃなかった、岩尾!?まだいたの!)
村木(勝手に期待して勝手に怒って申し訳なかったわ。ごめんよ・・・岩尾)
村木(そもそも、「ぼっち」を回避するために利用しようとしたんだもんな)
村木(なんか、反省)
村木(よし。これで帰・・・)
岩尾「村木。ちょっといいか」
村木「え?」
岩尾「話がある」
村木「え?」
村木「な・・・・・・・なに?」
村木「あんたしゃべれたの?」
岩尾「おい・・・」
村木「は、は、はなしって?」
岩尾「休み時間、視線を感じた」
村木「見てないよ!!!」
村木「ご、ごめ・・・きもちわるかったよね」
岩尾「いやそうではない。ひとつ提案があってな・・・」
岩尾「俺は読書が好きなほうだし、休み時間も特に苦ではないが」
岩尾「入学してから誰とも交流を持てていないのも事実」
岩尾「その、なんていうか・・・偶然にも席が近い縁だ・・・」
岩尾「・・・特におまえに興味があるわけではないので申し訳ないとも思うのだが」
岩尾「このままクラス替えまで誰とも話さないのも味気ない」
岩尾「どうだろう、明日から、趣味の話でも・・・」
村木「・・・・・・」
岩尾「・・・・・・」
岩尾「い、いや、迷惑だったら」
村木「あっははははははは」
岩尾「なっ」
村木「やっぱり、岩尾、心がウルツァイト窒化ホウ素じゃん」
Vtuberが岩尾だったというオチかと思ってガクガクしていたら普通の男の子でホッ。恋愛感情も友情もない休み時間だけの「休友」関係を築くことができたらそれはまたそれでシュールですね。
ああああぁあ〜〜…語彙力が…
休み時間の10分をいかに無事に過ごすかという共感性羞恥にやられまくりました...何をやっても裏目に出ちゃうって思い込んじゃいますよね...😭
ぼっちであることを全く意に介していない?!強い!のとこ腹筋割れるかと思いました。村木ちゃんはキョロ充というか周囲の目を気にして興味もない人に話しかけるところは最初好きになれませんでしたが終盤ちゃんと反省していて、岩尾も律儀な誘い方?をしていて二人とも可愛らしかったです!