第三話「ニエ」(脚本)
〇病室のベッド
私は
ナミ「あぁ、ニエ・・・」
ナミ「私のかわいい、かわいい子」
ニエ「ママ・・・」
ナミ「ねぇ、ニエ」
ナミ「あなたにお母さんから最後のお願いがあるの」
ニエ「・・・」
ニエ「なに?」
ナミ「生きてちょうだい、ニエ」
ナミ「私はもう長くないけど」
ナミ「でもあなたには最後の最後の瞬間まで ちゃんと生きてて欲しいの」
ニエ「ママ・・・」
ナミ「生きて・・・ お願いだから生きて・・・」
ニエ「・・・」
ニエ「うん・・・」
ニエ「分かったよ、ママ・・・」
ナミ「そう」
ナミ「よかった」
ナミ「いい子ね、ニエ」
ニエ「・・・」
私は
私は・・・!
〇荒れた倉庫
ニエ「・・・」
ニエ「!?」
ニエ「こ、ここは・・・」
キララ「ちょっとクロロ これほんとに食べれんの?」
クロロ「大丈夫だよ 毒のないきのこに野草で作ってるんだ」
クロロ「薬草としても使われる種類だから むしろ力が付き過ぎちゃうかもしれないね」
キララ「ふ~ん」
キララ「ちょっと味見」
クロロ「あっこら!」
キララ「・・・」
キララ「・・・・・・ぅげ」
クロロ「まったく・・・」
クロロ「味には期待しないでくれよ 調味料なんて何もないんだから」
キララ「分かってるわよ・・・」
ケイ「うぃーす!先輩方! 罠仕掛け終わりました!」
ライゾウ「これでこの廃墟の周りに誰か来たら 空き缶が鳴って分かりますよ!」
クロロ「ご苦労様」
クロロ「じゃ食事にしようか」
ケイ「うっしゃ! 俺特盛おなしゃす!」
ライゾウ「俺は頭の大盛で!」
クロロ「はいはい・・・」
クロロ「ってあれ?」
ニエ「・・・」
「・・・」
ケイ「・・・お」
ケイ「起きてるぅ!?」
キララ「バ、バカ!」
キララ「デカイ声出すんじゃないわよ! まったくもう!」
ライゾウ「そうだぞ、ケイ!」
ライゾウ「こういう時はこうすんだよ!」
ライゾウ「チチチチチッ」
キララ「いやそれ野良猫相手にする奴!」
ケイ「ちげーよ!こうすんだよ!」
ケイ「ムキィッ!!」
キララ「いやそれボディビルダーが あいさつ代わりにする奴!」
クロロ「まったくバカだな、君たちは ここは僕に任せたまえ」
「ク、クロロ先輩!?」
クロロ「いい機会だ 婦女子のあやし方というのを教えてあげよう」
ケイ「すっげー自信だクロロ先輩!」
ライゾウ「さすが!先輩は大人だぜ!」
クロロ「ふっ まぁ見てるといい」
クロロ「いざっ!」
ニエ「・・・」
クロロ「・・・」
「・・・」
クロロ「・・・」
クロロ「あれ?」
ケイ「あれじゃないっすよ、先輩!?」
ライゾウ「せめてなんか喋ってくださいよ!?」
クロロ「いや普通こうしてたら向こうから話しかけてくるもんじゃ・・・」
ライゾウ「イケメン特有の待ちムーブっすかぁ!?」
ケイ「そういう経験ない俺たち、無駄に傷ついちゃうんですけど!?」
クロロ「ち、違うって!」
クロロ「単純にこの子と何喋ればいいか分かんないだけだよ!」
ケイ「なんか親近感の湧く童貞ムーブが急に来ましたね」
クロロ「ど、童貞違うわ!」
ケイ「えっ!?」
ライゾウ「えぇっ!?」
キララ「えっ・・・・・・・・・・・・・・・」
クロロ「!?」
クロロ「・・・」
クロロ「ど・・・」
クロロ「童貞だわ!!」
クロロ「バッキバキの童貞だわ! 悪かったね!!」
ケイ「ええ?なーんだ! そうなんすか、せんぱ~い?」
クロロ「なんだい?」
ライゾウ「そうならそうと言ってくださいよ~もう~」
クロロ「急に距離感近くなったな、君たち」
ニエ「・・・」
ニエ「どこのなんてグループ?」
クロロ「芸人と違うわ!」
ニエ「??」
〇荒れた倉庫
ケイ「ズズズ~」
クロロ「ムグモグ・・・」
ライゾウ「アチチチッ!アッツイ!」
キララ「――まぁ、とにかくそういう訳で・・・」
キララ「浜辺で見つけたあんたを背負ってなんとかかんとかこの廃屋まで逃げ込んだってわけ」
キララ「あっ、服乾かして着せたげたのは私だし」
キララ「男どもは外に出してたから安心して」
ニエ「・・・」
ニエ「そう・・・」
キララ「そう、って・・・」
キララ「あんた、もうちょっとなんか言う事ないわけ?」
ニエ「別に・・・」
キララ「あ~ん?」
クロロ「落ち着け、キララ」
クロロ「ここは僕に任せてくれないか?」
キララ「・・・」
キララ「フンッ」
クロロ「やれやれ・・・」
クロロ「こっちはちゃんと君の質問に答えたんだ」
クロロ「君も僕たちの質問に答えてくれないかい?」
ニエ「・・・」
ニエ「なにを答えればいいの?」
クロロ「君の名前は?」
ニエ「・・・」
ニエ「ニエ」
クロロ「そう、ニエさん」
クロロ「君は自分がなんで浜辺に倒れていたか分かるかい?」
ニエ「・・・そうね」
ニエ「さらわれたから」
ニエ「多分そのせいね」
「さらっ!?」
クロロ「・・・」
ニエ「乗せられてた船が転覆したの」
ニエ「凄い衝撃でね」
ニエ「その時、気絶したからよく分からないけど どうやら運よく浜辺に流れ着いた、って所なんでしょう」
ニエ「いや、運悪くと言うべきかしら」
キララ「運、悪く?」
ニエ「ええ」
ニエ「そのまま」
ニエ「そのまま死んでしまえれば・・・」
キララ「!!」
キララ「・・・」
キララ「何が言いたいのよ?」
ニエ「こうして生きているよりも」
ニエ「その時死んだ方が良かったのかもって言いたいのよ」
クロロ「それは一体どういう──」
キララ「聞くだけ無駄よ、クロロ」
キララ「どうせここまでの関係だもの」
キララ「明日になったらこのクソ女放り出して さっさと町から逃げ出しましょう」
クロロ「キ、キララ?」
キララ「チッ」
キララ「ごちそうさま」
キララ「私、外の様子見てくるわ」
クロロ「・・・」
クロロ「はぁ」
クロロ「ライゾウくん、ケイくん ちょっとこの場は任せた」
ケイ「うっす」
ライゾウ「デートっすか、先輩?」
クロロ「ははっ」
クロロ「あいつとそんな甘い関係だったら 僕はもっと楽出来るんだけどね」
クロロ「とにかく任せた」
〇廃倉庫
キララ「・・・」
キララ「はぁ~」
〇草原
〇廃倉庫
キララ「クソったれ・・・」
???「月が綺麗だね、キララ」
キララ「・・・殺すわよ、あんた」
クロロ「お~怖い怖い」
クロロ「『月嫌い』は相変わらずみたいだな」
キララ「それくらい知ってるでしょ?」
キララ「何年来の付き合いなのよ、まったく・・・」
クロロ「悪かったって」
クロロ「でもさっきのはない」
クロロ「さすがに言い過ぎだ」
キララ「・・・」
キララ「じゃ、この先あの死にたがりのゴミひきずってどうするつもりなのよ?」
キララ「てかあんた浜辺でもなんか思わせぶりなこと言ってなかった?」
キララ「なんか考えがあるならいい加減聞かせなさいよ」
クロロ「そうだね・・・」
キララ「・・・」
クロロ「呪いのビデオ」
キララ「あん?」
クロロ「僕たちが見たあのビデオの内容」
クロロ「覚えてるかい?」
キララ「あ~」
キララ「なんか白い部屋に白い人がいて・・・」
キララ「それで・・・」
キララ「確か・・・」
キララ「え~っと・・・」
クロロ「そいつがこう言うんだよ」
〇白
「『世界はハッピーエンドを望んでいる』」
〇廃倉庫
クロロ「ってね」
キララ「そう、それ!」
キララ「確かそんな感じだったわね!」
クロロ「そう」
クロロ「その後、右手に呪いの紋様が浮かび上がって」
クロロ「ビデオと一緒にあった紙に書いてある解呪方法を試すために」
クロロ「僕たちはこうやってドラマを撮りに来た訳だ」
キララ「うん」
キララ「それで?」
キララ「結局何が言いたいのよ、あんた?」
クロロ「僕たちが撮るべきなのはどんなドラマなのかって話さ」
キララ「どんなドラマ?」
キララ「・・・」
キララ「まさか・・・」
クロロ「そうだ」
クロロ「僕たちのかかった『劇的な呪い』」
クロロ「それによって巻き起こる『劇的な状況』」
クロロ「解呪のために必要な物語とビデオテープ」
クロロ「全ては僕の予想に過ぎないけどこれが無関係とは思えない」
キララ「つまり私達がほんとに撮らなきゃいけないドラマっていうのは・・・」
ガランガランガランッ!
「罠に反応!?」
キララ「戻るわよ、クロロ!」
クロロ「ああっ!」
To be continued