悪役令嬢は泥棒ネコですか?(脚本)
〇暖炉のある小屋
フロンテラ「今日もいい天気ですわねぇ・・・」
フロンテラ「ロゼウス様はスィンリンにフィールドワークに出かけてしまったし・・・」
フロンテラ「私も工房に行ってマージの研究をしようかしら?」
ショウとニィンの協力もあり、ツインホーンでの生活も安定してきた。
フロンテラはせっせとマージに励み、少しずつだが借金返済を始めていた。
その道のりは果てしなく、険しいものだったが──・・・
「フロンテラ・ガメツク!!出てきなさいこの・・・泥棒ネコ!!!!!」
フロンテラ「・・・はい?」
──・・・暴言から始まる出会いが、彼女に進展をもたらす事をフロンテラはまだ知らない・・・
〇草原の一軒家
アルティミラ「あっ!!アンタがフロンテラね!?」
フロンテラ「・・・確かにそうですけれど・・・」
アルティミラ「私はアルティミラ・・・」
アルティミラ「ライオガッタはアンタなんかに渡さないんだからっ!!」
フロンテラ「はい?」
アルティミラ「私と勝負しなさいこの・・・泥棒ネコ!!!!!」
フロンテラ「・・・泥棒ネコになったつもりは欠片も無いのですが・・・」
フロンテラ「叩きつけられた白手袋を無視するのは淑女ではありませんわね・・・」
フロンテラ「よろしいですわ、不躾な訪問者ですが、お相手して差し上げましょう」
フロンテラ「で、何で勝負いたしますの?」
アルティミラ「え?そ、そうね・・・」
アルティミラ「女子力・・・料理で勝負よ!!」
フロンテラ「却下ですわ」
アルティミラ「え!?」
フロンテラ「料理勝負に使えるほどの食材が・・・無いんですのよ・・・」
アルティミラ「そ、そうなの・・・?それじゃあ、仕方ないわよね・・・」
アルティミラ「じゃあ、運動で勝負よ!!あの山の山頂に先に辿り着いた方が──・・・」
フロンテラ「却下ですわ・・・」
アルティミラ「なんでよっっっ!?」
フロンテラ「貴女、魔素に満ちた山を登るなんて・・・自殺行為ですわよ・・・?」
アルティミラ「え?魔素?」
フロンテラ「森の入口なら大丈夫ですけれど・・・少し入ったら魔素の霧で・・・」
アルティミラ「それは却下ね・・・」
アルティミラ「えーっと、えーっと、だったら・・・」
フロンテラ「お勉強は?」
アルティミラ「それは私が嫌」
フロンテラ「清々しいくらい自分に有利な勝負しかしない気ですのね・・・」
アルティミラ「こうなったら・・・」
アルティミラ「錬金術で勝負よっっっっっ!!」
フロンテラ「貴女、錬金術師ですの!?」
アルティミラ「そうよ!優秀、エリートなんだからっ!!」
フロンテラ(とてもそうは見えませんけど・・・)
フロンテラ「残念ながら、私は錬金術師じゃないのでその勝負は受けようがありませんわ・・・」
フロンテラ「・・・そうですわ、合成でしたら出来ますから・・・」
フロンテラ「この草原にあるものを使って、より高価なものを合成したほうが勝ち・・・というのはどうかしら?」
アルティミラ「面白いわね!それでいいわ!!」
フロンテラ「では、時間は今日の日没まで。時間になったらまた、ここに来ていただいてもよろしいかしら?」
アルティミラ「わかったわ、負けないんだからっっっ!!」
アルティミラ「ライオガッタは私のものなんだからねー!!!!!」
フロンテラ「・・・・・・・・・」
フロンテラ「ライオガッタって、ロゼウス様の護衛騎士のライオガッタ・・・ですわよね?」
フロンテラ「アルティミラは・・・婚約者なのかしら?」
フロンテラ「私、ライオガッタとはそんな関係じゃありませんのに・・・」
フロンテラ「王都でまた変な噂が流れているのかしら・・・?」
フロンテラ「まぁよろしいですわ。とりあえず、あの子との勝負を始めましょうか・・・」
フロンテラ「マージ研究もしつつ、ね?」
〇原っぱ
フロンテラ「マージ!」
フロンテラ「・・・出来ましたわ。ライラッカの丸薬!」
フロンテラ「この草原で採れる素材をマージして作れるものの中では一番高い魔力回復薬・・・」
フロンテラ「一瓶で20万イェーン!勝負が終わったら即売りですわ!!」
フロンテラ「それにしてもあのアルティミラって子、凄い行動力ですわね・・・」
フロンテラ「恋する乙女は、時にとてつもないパワーを発揮しますのね・・・」
フロンテラ「まぁ、1000%的外れなのですけれど・・・」
フロンテラ「私がロゼウス様以外に懸想するなどありえませんのに・・・」
フロンテラ「え?」
フロンテラ「あれは、イビルシード!?」
フロンテラ「なんで深林に生息する魔物がこんな所に・・・?」
フロンテラ「いけないっ・・・!!」
フロンテラ「イビルシードはイビルウィザードの幼体・・・」
フロンテラ「でも、こんな何もないところで成長するなんてあり得ないですわ・・・!」
フロンテラ「きゃあッ!!」
フロンテラ「くっ・・・武器も何も無い状態でイビルウィザードと戦うのは無理ですわ・・・!」
フロンテラ「彷徨える亡者を照らせ──・・・」
フロンテラ「ディ・ライト!」
イビルウィザード「ギィ!?」
フロンテラ「今のうちですわ!」
〇草原の道
フロンテラ「私の魔法では目眩ましが精一杯・・・」
フロンテラ「どうにかしてロゼウス様と合流できればいいのですけれど・・・」
フロンテラ「せめて、私の武器があれば・・・あぁ、何かショウとニィンから買っておくべきでしたわね・・・」
フロンテラ「くっ、もう・・・!?」
フロンテラ「くっ、困りましたわ・・・!」
フロンテラ「ロゼウス様・・・!!」
イビルウィザード「ぎゃあああ!!?」
フロンテラ「えっ・・・!?」
「ご無事ですか、フロンテラ様!!」
フロンテラ「貴方は・・・!!」
フロンテラ「ライオガッタ!!!!!」
ライオガッタ「ここはお任せ下さい!ハァッ!!」
イビルウィザード「アァアぁぁ・・・」
ライオガッタ「・・・フロンテラ様、お怪我はございませんか?」
フロンテラ「大丈夫よ。ありがとうライオガッタ・・・お久しぶりですわね」
フロンテラ「ピンチでしたので本当に助かりましたわ・・・!」
ライオガッタ「貴方様に何かあってはロゼウス様に顔向けできません・・・」
ライオガッタ「ご無事で何よりです」
ライオガッタ「しかし、何でこんな所にイビルウィザードが?あれは魔素の濃い深林に生息する魔物ですよね?」
フロンテラ「私も、そうアカデミーで習いましたわ・・・」
ライオガッタ「何はともあれ、兵舎へ戻りましょうか。ロゼウス様に到着の報告に参りましたので・・・」
フロンテラ「えぇ」
〇草原の一軒家
アルティミラ「ちょっとアンタ!!騙したわね!!?」
フロンテラ「はい?」
フロンテラ(そう言えば日没が勝負の制限時間でしたわね、すっかり忘れていましたわ・・・)
フロンテラ「何も騙した記憶はないのですが・・・」
アルティミラ「嘘よ!!錬金釜が無いじゃない!!」
フロンテラ「・・・はい?」
フロンテラ「・・・あの、普通ただの兵舎小屋に錬金釜は常備されてないと思いますわよ・・・?」
アルティミラ「錬金術師に釜を使わず高価なものを合成しろってこと!?」
アルティミラ「やっぱり騙したのね!!?」
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